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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(下)
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第35.5幕 Hacking now……

 意味もない文字の羅列が目まぐるしく流れていく。

 必要なコードはここには無い。どこかにキーとなるポイントがあるはずだ。こんなよく分からない文字列であの機械人形を動かしているなんて気が知れないな。

 もしこの意味の無い部分が意味を持ってしまったら、もしここの部分がなにかの手違いで読み込まれたら、そんな事を考えない主義なのだろうか。

 それともこうやってハッキングしようとしている奴の迎撃の為か。

 最初は独自のコードかと思ったけどただの偽装に過ぎない、木を隠すなら森の中とは良く言った物だな。こうして思いっきり捜索している訳だから。今はプログラムが勝手に解析してくれているがどうにも遅いし変な所で止まろうとする。何故なのか・・・


 「まさかこっちがハッキングを受けている・・・?」


 地面に置いているノートパソコンの画面を解析画面からホームへと切り替えると有るはずの解析ツールのメインファイルが置き換えられている。なるほど、俺がやろうとしてることはお見通しって訳ね。じゃあ全部クラッキングしなかった事を後悔させてやる。仕返しに使うツールは残っている。というかコレを潰さないなんてどうかしてるんじゃないか?

 あとは指令プログラムを自力で見つければアイツらの機能を全停止までは行かなくても動きを鈍らせることくらいはできる。あと必要なものは・・・


 「先輩!一機完全な状態でこっちに寄越してください!」


 変に分解された物じゃダメだ。危険を犯してでも完璧な物に繋げてゼロから自分で調べなければ


 「わかった!今すぐ捕まえる!」


 風咲先輩の袖から白い鎖が飛び出し手近な一機を捕縛するとこちらへと引き摺って来る。

 恐ろしいことに2、3mはあろう機械を片手で引いてきて目の前に立ち塞がる邪魔な物をリボルバーで撃ち抜いて機能停止させながらこちらに向かって来る。どこにそんな筋力があるんだこの人は・・・

 学生時代に制服の襟掴んで校舎を引きずり回された時からの疑問だったんだけど。そんなに筋肉ムキムキって訳じゃないのになぁ。雪城先輩なら雪城家の遺伝みたいなもので片付けられるけど風咲家にそんな特殊能力みたいなのは無かったと思うんだけど


 「禍築様、危ない!」


 三人の巫女さんの内一人の声が響く。考え事をしていて注意力が無くなっていた所に機械人形が襲ってきて巫女さんが空間を歪め鉈の軌道を逸らしてくれたみたいだ。巫女さんの顔と胸を見て誰かを見破る。この胸の大きさは桃さんだな


 「ありがとうございます桃さん」

 「これが私達の役目ですので」


 涼しい顔で空間を捻じ曲げて見せ人形の鉈を二つ折りにしてしまう。空間魔術なんてモノ自体がレアなのにそれを使いこなしているとは感服してしまう。けど、それはここが土地神の神社の敷地付近だからというのも有るだろう。

 ふっと火薬の匂いが銃声の後に漂ってくる。そしてカランと空の鉄製品の落ちる音が6つ。そしてすぐさま銃声と鉄を切り裂く音が響き目の前に風咲先輩とその後ろで迫り来る人形を身の丈程の大剣で叩き潰す雪城先輩が姿を現す


 「持ってきたぞ」


 銃声を響かせながら風咲先輩は眉ひとつ動かさずいつもの色とは違う蒼色の眼をゆらゆらと光らせながら白い鎖で身動きが取れない人形をこちらに寄越す。

 人形はガタガタと音を立てているが鎖が動くことを許さない


 「助かります」

 「じゃあ任せたぞ」


 ゆらりと蒼の残光を残しながら後ろを向く先輩に違和感を覚えた。なにかが余計に有る・・・


 「先輩、なんで袖が両方有るんですか」


 風咲先輩の羽織は片方しか袖がない。だが今の先輩の羽織は黒い袖と蒼い袖が存在している。確か半人前なのを忘れない様にだったか、そんな理由だったと思う


 「えっ?袖?」


 先輩は自らの袖を確認して驚く


 「なんで袖あるんだよ!?影朧か・・・!?違う?えぇ・・・じゃあなんだよこれ・・・」


 一瞬蒼い炎が周りに見え消えた。あれが風咲先輩に刻まれている魔術式、影朧の一端か。意志を持つ魔術式なんて前例がない意味不明な物だ


 「まぁいいか!今は気にしてる余裕ないし!」


 袖を気にする素振りを見せたあとすぐに真っ白な刀を手に人形へと向かっていく。雪城先輩が人形の体勢を崩しそれに合わせ風咲先輩が首辺りに有る隙間に刀を刺し入れとどめを刺す。息の合った2人だからこそ効率的に、スピーディに狩れるのだろう


 「っと関心している暇はないんだった」


 分解した時に頭付近にUSBポートが有るというのは分かっている。どこにあるのか、生暖かい機体頭部を触りながら探す。こういうのは頭の後ろに有るのが相場だとは思うのだが何故か見当たらない。まさか口の中?しかし開くのだろうか?とりあえず口元をまさぐっているとガパッと口が開きCDなどを入れるトレーが出てきた。予想はハズレだな・・・トレーか・・・じゃあ頭頂部とか耳付近にあるんじゃないか?そう思いツルッとした頭を探ると蓋があった。ここだ!そう思い開けるとビンゴ!USBポートが3つついている


 「あとはコードを探すだけ・・・」


 PCに流れる文字列に目を回しながら凝視していると目当てのものがあった。機体の行動指針を示すコード、そこにはall killと記されている。皆殺しとは物騒だ。そこを消してstate sharingと打ち込みその次にfor friendsと付け足す。

 あとはここに繋いであるPCから嫌がらせ用のツールを起動させ人形へと送り込む。するとガタガタと鎖を解こうとする音が小さくなっていく。それに呼応する様に他の人形達も目に見えて動きが鈍くなり始めた。嫌がらせツールの中身は動作の強制とその動作の規制を無限に繰り返すツールだ。嫌がらせで送り付けて開いたら最後端末が死ぬ嫌がらせ最強のファイルだ。遠くに見えるこちらに向かうデカブツロボもこれで止まるはず・・・


 「風咲先輩、人形達の鈍化に成功しました!このまま機能停止すると思います!」


 風咲先輩のインカムが声を拾う


 「禍築、残念なお知らせだ。1番デカい奴は一切鈍化されてない」

 「マジですか・・・」


 アイツだけ規格が違うやつか・・・めんどくさいなぁ・・・


 「ここは私達に任せて風咲君と虎織ちゃんは城ヶ崎とケリをつけて来てください。辻井君、聴こえているなら雪ちゃんに連絡してサポートをお願いしてください」


 日々喜さんの言葉を聞いて東雲先輩の携帯に電話を掛けるとワンコール以内に出てすぐに東雲先輩の声が響く


 「サポートが要るみたいだね。返答は必要ないからそっちのサポートしてあげて」


 本当にこの人は・・・先読みされてるみたいで不気味だ・・・


 「禍築様、どうかもうひと頑張りお願いします」


 桃さんの言葉でやる気が出てきた。可愛い女の子の頼みだしもうひと仕事しようかな

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