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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(下)
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第33.5幕 旧知

 「お前ら、2人だけか?そうだってんなら俺らも安く見られたもんだな」


 車は走っていないとは言え道路のど真ん中陣取るとかこいつら正気か?それに周りを見るに黒い外套に身を包んだこの2人以外に人影は見えない


 「えぇ、2人だけですよ。教官、それにヴァン。」

 「アンタ達・・・」

 「知り合いか?」


 師匠が険しい顔をしながらローズの言葉に反応する


 「いえ、全く記憶に・・・」

 「おいローズ!アイツら口ぶりからして俺らの部隊に居た奴だ!えーっと・・・ごめん、俺も思い出せん」


 男の方は白に赤のメッシュが所々入った髪に青の双眸、女の方はピンクに白のメッシュのツインテールに緑の双眸。俺が退役する前まで部隊に居たのは憶えているが随分と遠い過去だ、名前が思い出せない


 「ヴァンも覚えてないじゃない!」

 「仕方ねぇだろ!アイツら影薄かったんだぞ!でも、俺が退役するまでは部隊には居たな」

 「・・・正直そこまで薄情な方々だとは思っていませんでした」


 男は後ろに斜め上に飛び退くと共にどこから出して来たのか手にはバレットM82、対物ライフルが握られ引き金が引かれた


 「っ・・・!危ねぇ!」


 轟音と共に着弾した地面が粉々になる。こんなのを人間が喰らえば当たった所は間違いなく消し飛ぶ威力だ


 「ちょっと!アンチマテリアルとか人に向けるのは条約違反じゃなかったかしら!?」

 「勝った方がルール、それにこの国に条約とか関係ないでしょう?」


 そう口にしながらツインテールの女がサバイバルナイフを手に襲いかかってくる。見覚えのある黒い刀身、そしてその刀身に刻印された鷹のマーク・・・


 「そのナイフはカインの・・・!?」


 それは傭兵時代に仲良くしていた戦友の物だった


 「カインの事は憶えているのに何故私達を憶えてくれてないんですか・・・」


 ナイフは鋭く突き出される。避けて腕を掴もうかと思ったがハルバードで振り払うという選択肢を取る


 「ここに来る時に大抵のもんは置いてきちまってな。カインとはよく酒飲みながら戦場に出た仲だからな!」

 「はぁ!?アンタ部隊内は禁酒だったでしょうが!何規則破ってんのよ!ぶっ殺すわよ!?」


 ローズが弾を乱射しながらこちらに銃口を向ける。ハルバードで振り払うのはやめて後ろに飛び退く事で弾とナイフを避ける


 「わわっ!こっちに銃口向けんな!てか撃ちながら照準合わせに来んじゃねぇよ」

 「ヴァンなら避けるでしょ?信頼してんのよ」

 「はぁ・・・!お前なぁ!」

 「イチャついてんじゃねぇよ!その頭ぶっ飛ばし・・・」


 男の声を遮って師匠が言葉を繋ぐ


 「引き金を引けばそのままお前の首が300度回転するがそれでも良いのか?」

 「じじぃ!いつの間に後ろに」

 「まだおじさんレベルだと思いたいのだがな」


 師匠は笑いながら男の首をギリギリと横へと向けていく


 「あだだだだだ!痛い痛い!折れるっての!」

 「アベリア!」

 「俺に気にせずお前は教官とヴァンを殺せ!」


 その名を聞いて思い出した。いつも塹壕の隅で泣いていた泣き虫な男、アベリア・アルベルだ。そしてその近くにずっと居た少年、ウツギ・グレー。だがもしこの目の前のツインテールがウツギとなるとあの頃女だと言うことを隠してあの隊にいた事になる


 「アベリア・・・あぁ、思い出した。泣き虫アベルか!ってことはこっちはウツギ・・・だよな?」

 「やっと思い出してくれたんです・・・ね!」


 どうやらウツギで正解だったようだ。それにしても間合いの詰め方が異様だ。まるで師匠の古武術みたいに一瞬で目の前へと詰めてくる。メインの戦法はナイフでの刺殺を狙いに来る感じか。ハルバードの持ち手部分でナイフを捌き横にそらす


 「っと!危ねぇ。俺の記憶じゃウツギ、お前は身体は小さかったがそんな女らしい感じじゃなかったんだがな!」

 「私にも色々とありましたから」

 「そうかよ!ローズ!どうす・・・」


 さっきから口数が少ないと思ったら気絶してやがる・・・しかも最悪な人の腕の中でだ


 「あらぁ?気付いちゃった?ざーんねん。あぁ、安心してちょうだい。妹にはちょっとだけ眠ってもらっただけだから」

 「なんのつもりだ姉御・・・」


 レベッカ・フォルテハイド。ローズの姉で俺らよりよっぽど強い軍人だ・・・協力すると言っていたのを信用したのが良くなかった。元々の身内だからといって生かしておくべきではなかった、殺しておくべきだった


 「私にも色々と事情があるのよ。そこのおじ様悪いけどアベリアを離してくれるかしら?でないと心苦しいけど妹に死んで貰うことになるわ」

 「わかった・・・」


 師匠はアベリアの頭から手を離し飛び退く。それを確認してからローズは地面にゆっくりと置かれた


 「アベリア、ウツギ。撤退よ」

 「しかし隊長!」

 「上官命令よ。それに今戦っても死ぬだけだし無駄よ」

 「っ・・・了解しました」

 「それじゃあおふたりともアデュー。後で会いましょう」


 後で会いましょう・・・ねぇ・・・面倒事が増えたな。ここに居ても仕方ない。どこかの持ち場を手伝いに行かないとな


 「禍築、敵を取り逃した。禍築?禍築ぃ?」


 どうやら無線が機能していないようだ・・・ほんとめんどくせぇ

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