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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(下)
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第32幕 ピンチ?

 「先輩!後方からさらに機械人形の増援です!」


 インカムから禍築の声。焦っている声を聞くにやばい数来るようだ


 「あぁもうどんだけ来るんだよ!数は!?」

 「50です!」


 倒しても倒しても減らないってのに追い討ちをかけるように当初の倍以上の数を送り込んでくる・・・

 大元を叩きに行きたいところだがそれが叶う状態では無い


 「チッ・・・禍築、ハッキングして指揮系統乗っ取りとか出来ないか?」


 藁にもすがる思いで問うてみる。無理なのは承知だ、だがそういうのもやれそうなのが禍築だ


 「出来なくも無いとは思いますけど先ずは機体をなるべく壊さずに持ってきて貰う必要があります」


 やれるのかよ!禍築との会話の最中でも人形達は止まってくれない。人形の鉈を避けながら伸びた関節部に一太刀入れていく。そろそろ対策されてもおかしくは無い、本格的に動力源を壊す方へシフトしなければならないか


 「持って行けるほどの気力も無いからお前がこっち来てくれ」

 「無理ですよ!いくらノートパソコンだけでやれたとしても先輩達が俺を守り切れる保証もないですし!」


 普通ならこの禍築の言葉に怒るだろう。だが今我輩達は禍築という全体を見通せる目を失う訳にはいかない。あいつもそれを分かっているからの発言だ


 「ならどうしようもないな・・・全部ぶっ壊す!いいな!?」


 データが取れない程に壊すことになるだろう。一応了承は得ようとしてみたがNOと言われてもぶっ壊す事に変わりは無い


 「・・・背に腹はかえられません・・・やっちゃってください」


 非常に残念そうに、目の前の玩具を取り上げられた子供の様な物悲しい声色で禍築は言う。すると


 「少々お待ちを。禍築さんは私達が護衛します。なので禍築さんは戦場で作業をする覚悟をしてください」


 禍築の声ではなく女性の声が聞こえてくる


 「その声!三巫女の・・・」

 「桃です。私達3人なら禍築さん1人守るくらいは簡単にできますので」

 「それじゃあお願いしようかな。禍築君、きっちり覚悟して来てよ」


 更に桃さんとは別の女性の声、虎織の声がインカムから聞こえてくる。それと共に鉄を打ち付け、吹き飛ばす轟音が鼓膜を揺さぶる


 「ひぃ・・・!雪城先輩なんでそんな不機嫌な声なんですか!?」

 「黙って覚悟決めて」


 凍るように冷たい突き刺さる刃のような声色に禍築は心底ビビっていた。正直我輩もここまで冷たい虎織の声を聴いたのは久しぶりな気がする。なんか超怖い。

 そんな身震いをしていると人形が目の前の人形を吹き飛ばす。正確には虎織がフルスイングで吹っ飛ばして来たベコベコに凹んだ人形が目の前のピンピンしてる奴をスクラップにしただけなのだが。

 そしてゆっくりと二つの鉄板を持った虎織が冷たい視線を向けながらこちらへと向かってくる


 「虎織、笑顔笑顔ー」


 あまりにも表情が冷ややかだったので自分の口角を人差し指で上げながら言ってみたが


 「流石に今は無理かな」


 当然の返しである


 「だよなぁ・・・っ・・・やばっ・・・」


 いつの間にか背後を取られていた・・・高速で動くその人形に一瞬だが目を奪われた。それが仇になった。虎織が急いでこっちに向かって来てくれているが間に合う距離じゃない、我輩も咄嗟の事で反応が遅れた為やられる。そんな死を覚悟した瞬間、地面へ何かがぶつかる音と鉄と鉄がぶつかる音が響く


 「風咲の旦那ぁ!助けに来たぜー!」

 「機械人形みたいなのがいっぱい来てんだろ」

 「お力になれればと馳せ参じました」

 「やっさん、若大将、それに日々喜さん!?」


 それは意外な助っ人だった。鉄パイプの様な物を持った八百屋のやっさんと魚屋の若大将が人形の攻撃を受け止めてくれていた。どうやら日々喜さんが凄まじい速度で上から2人を投げ飛ばしたようだ


 「日々喜さんはともかくやっさんと若大将は隠れてた方がいいだろ!」

 「なーに言ってんだ!俺らだって魔術師の端くれ、助け合おうぜ」

 「・・・分かりました。でもヤバいと思ったらすぐに退却、いいですね?」

 「あぁ!」

 「日々喜さん、2人をお願いします」

 「えぇ、任せてください。風咲君には返しても返しきれない借りが有りますから」


 身に覚えがない。この人がこういう事言うのは正直めっちゃ怖い。咄嗟に出たのは否定の言葉だった


 「そんなもんはないですよ!」

 「そういう事にしておいてあげます」

 「なぁ旦那ぁ!コイツら魔術効かないのか!?火炎球とか全部消えんだけど!」


 やっさんが叫ぶ。そういえば言い忘れていた。コイツらは魔術式がほぼ効かない。物理で壊すしかないと


 「どうもそうらしいです!あと動力源は頭じゃなくて右胸です!」

 「なら物理的にぶっ壊すしか無いわけか!全く厄介なもんだな!」

 「それぐらいの方が俺たちでもやれるからいいだろ」

 「だな!腕力には自信があるから・・・なっ!」


 やっさんと若大将は息の合った連携で人形の体勢を崩していく。これなら心配要らないか・・・



 「皆さん、おまたせ致しました。生贄を連れてまいりました」

 「桃さん!?俺の事生贄とか言うのやめてくださいよ!」


 車の急ブレーキ音とともに三巫女、どうやら桃さんの声と禍築の声が響く


 「そこら辺にぶっ倒れてるやつから使えそうなやつ持って行ってくれ!」

 「分かりました!ってこれネジ規格もボルトの種類もバラバラじゃないですか!ばらすの時間かかりますよこれ!」

 「3分でバラしてくれ!」

 「無理言わないでくださいよ!まぁやりますけども!」

 「将鷹!20秒護って!」


 虎織の声が聞こえすぐにそちらに向き走る。何かするのだろうか


 「了解した!」

 「一刀両刃、長柄大剣!」


 掛け声と共に一対の鉄板を打ち合わせると両刃の大剣の様な鉄板へと姿を変え持ち手は蒸気と共に飛び出すように伸びる


 「合体した!?」


 これは驚かざるをえない・・・噛み合わせもないのに合体するとは・・・たぶんだが蒸気圧着みたいな物なのだろう


 「息合わせていこう。いけるよね?」

 「無茶振りだなぁ・・・でも、虎織となら大丈夫だ!」

 「「椿我流」」


 2人の声が重なる。我輩は白虎を鞘へと納め振り抜く準備をする。そして一息おいて研ぎ澄ましたその牙を振り抜く


 「居合、獅子式!」


 普通の刃じゃ到底斬れないであろう鉈を斬り飛ばし虎織の一撃を叩き込む隙を作る


 「流転、演舞!」


 大剣の重さなど感じさせない流れる様な動きで逆袈裟、と回転斬りを食らわせていく。2人なら一機潰すのにそんなに時間はかからないな


 「続けて行くよ!パス!」


 虎織が回転斬りの勢いそのままで大剣をこちらへ投げる。それを鎖で掴み引き寄せる。一瞬身体ごと持っていかれかけたが何とか体勢を立て直し踏み込む


 「あぁ!」

 「居合、獅子式!」


 さっき我輩がやった様に虎織が鉈を斬り落とす。我輩は虎織の様に思いっきり振ると吹っ飛ぶだろう。だから鎖を使い大剣を振るう


 「流転、鎖演舞!」


 鎖で操ったとは言えやはり重さがすごい。遠心力も相まって縦に振っただけでも人形がひしゃげながら地面へとめり込む


 「先輩!心臓部だけ切り抜いてこっちに投げてください!」


 2体の人形を屠ったところに禍築の声が響く


 「無茶言うぜ!でも、ちょうどいいか!」


 試したい技もあるし。今なら虎織のサポートもある。まだ隙が大きい技だしな


 「椿我流、八極!」


 足を上げ地面を強く踏み締める。アスファルトに自らの足跡を残し拳に鎖を巻き付け人形の腹付近に打ち込むと外装を貫き拳より少し大きな穴が空く


 「虎織、ちょっと借りるぞ!」


 鎖に繋がれたままの大剣を引き寄せ勢いを殺さず穴へと斜めに突き立て横薙ぎに無理やり引き裂く。我ながら上手く外装を剥げたと思いたい。そして目当ての核となる真四角のユニット部分を無理やり大剣で切り抜き禍築へと投げる


 「受け取れ禍築!」

 「精密機械なんだから投げちゃダメじゃないか」


 投げたユニットは禍築の手に収まることなく別の誰かの手中に収まっているのに我輩は驚愕し絶句した。

 その人はここに居るはずの無い人間だったのだから・・・

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