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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第1章 先代鬼姫編
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第17幕 物足りない日常

携帯を開き時刻を確認する。

17時ちょうど。アリサがそろそろ事務所を出る頃か。

今日事務所に居るのは蓮、禍築、桜花さんだけだったかな。正確には黒影対策課のメンバーはだな。


「一応事務所にも顔出しておくか」


特に誰かに話しかけるわけでもなく独り呟く。

事務所に行く理由は特にない。強いて言うなら少しはこの虚無感が薄れるかもしれないからという理由だ。


いつもは虎織も一緒にいるのだが今日は完全に独りだ。

たまには1人も悪くはないかなと思っていたがどうも物足りない。商店街の賑やかしで流れている流行りの曲も喧騒も物足りない。

まるで白黒の音の無い世界に居るような感覚だ。



独りとぼとぼと事務所の目の前まで歩いてきた。

正面玄関からは定時退社をする人々がお疲れ様ですと通り過ぎていく。


「おっ、将鷹。非番の日にまで顔出しに来るとは珍しいな。しかも1人でときたか。こりゃ明日は槍か刃物が降りそうだな」


廊下で出くわした蓮が我輩を茶化す。


「たまには、な。ロッカーの中の使えそうなの持っていこうかと思ってな。」


特に持っていく物もないが虚無感を紛らわせる為とか言い難いし適当な理由付けをしてみる。

まぁ蓮にはバレそうだけど


「そうか。桜花さん達は今予算会議してるからしばらく待てばでてくるから。」

「ありがとな。てか蓮は会議出なくていいのか?」

「俺は居ても仕方ないからな。どうせ後で会議で出た資料に目を通して修正するんだし。それに予算会議の仕切り役の人苦手なんだよなぁ」

「違いない。あの人は読めないというか腹の底で何考えてるかわかんないからな」


「さてと、将鷹がいる間にパンの注文しておくか」

「覚えてたのかよ・・・」

「昨日の今日だぞ?忘れるわけないだろ。」

「我輩名義で1本注文しておいてくれ。引き取り日は明日で。」

「ではでは遠慮なく」

「そういえば前あげたアーモンドバターは使い切ったのか?」

「速攻無くなった」

「まじか」


蓮と話すことで少しは虚無感が和らいだ。

そもそも家に帰れば虎織が居るからここに来る必要なかったのでは?と思ったがまぁ気にしない方向でいく。


「風咲先輩何してるんすか。今日非番じゃないんですか?」


禍築が珍しい物を見るような目で見てくる。実際珍しいのだが


「ちょっとな。あっ、そうだ。禍築のアレ、役にたったぞ」

「使うの早くないですか?役に立ったならいいんですけど。」

「非常時だったんだよ。それにしてもよくあんなもの思いついたな。煙吸ったら絶対ヤバいやつだろ」

「あー、あれは女の子にかけられた催涙スプレーを参考に・・・」

「やめろ禍築。それ以上は言うな。我輩の中で上がりかけてたお前の評価が地に落ちかけている」


禍築のこの転んでもただでは起きない精神は本当に凄いがその転んだ経緯は知りたくはない。


「お前らって仲良いのか悪いのか解らんな。お互い罵りあってる時ある割にはこうやって仲良く話してるし」


蓮がよく分からんって感じでそんな事を言う。

我輩的には仲はいいとは思っている。なんだかんだで駄べる事も多いし。


「友達でも罵詈雑言ぐらいは浴びせるでしょう?それが頻繁に有るだけですよ」

「そういう物なのか」


まだ何となく納得行ってない蓮であった。




我輩は桜花さんが出てくるのを待つついでに宣言していたロッカーの使えるもの探しをする事にした。

幾らか前の資料や謎の軍手が何故か入っている。


「あっ、これここにあったのか。危ねぇ・・・」


銃弾24発と手製の竹筒爆弾、火がついたらロッカーが吹っ飛ぶとかそういう問題じゃない。マジで危なかった


「なんじゃ。身辺整理か?」

「使えるもの探してるだけですよ」


ロッカーをゴソゴソしていると桜花さんが我輩の肩を叩き声をかけてくれた


「そうか。昨日の件聞いておるぞ。また無茶をしおって。あっ、儂は怒らんぞ。もう嫌という程皆に絞られたじゃろう?」

「えぇ。本当にみんなに心配かけて怒られまくりですよ」

「昨日は不運というかなんというかな。仕方あるまい。そういう星の巡りもある」

「これ以上死にかけたりぶっ倒れたりは御免なんで今回はきっちりかっちり五体満足で帰ってきますよ」

「そうだな。全て終われば飲みにでも連れて行ってやろう。もちろん儂の奢りでな」

「ではその時はたっぷり飯食わせて貰いますよ」


ロッカーも漁り終え、桜花さんとも話し終えた我輩は帰路に着く。

路面電車に乗り込み外を見ながら黄昏れる。

果たして今回は上手く行くのだろうか?先代以外の敵は本当に居ないのだろうか?もしかしたら謀反を企てた旧拾弍本刀の2人が立ちはだかるのかもしれない。

考えれば考えるほどマイナス面の可能性が頭に浮かぶ。


しかし、そんなマイナスな事ばかり考えていても仕方がない。

必ず生きて帰って約束を果たしたり色々としたい所だ。

これを機に虎織に告白するのもいいかもしれない。

でもいざとなったらなんでもないって言っちゃいそうだな・・・。なんせヘタレだからな



家の最寄り駅に着き路面電車を降り自動販売機でおしるこを買ってからその場で飲み干す。

春先なのにホットのおしるこがまだあるのは少々驚きである。

おしるこは懐かしく、甘くホッとする味だった。

あんまりおしるこ飲まないんだがな。



「ただいまー」

「お兄ちゃんおかえり!」


出迎えてくれたのはアリサだった。


「虎織は?」

「虎姉は書斎で魔術式組んでるよ。」

「そっか。ありがとう。」


虎織はどうやら苦戦しているようだ。我輩がどれだけ力になれるか分からないが手伝いに行くとしよう。

その前に心中と風切を袖に仕舞わねば。


「虎織、入るよ」

「どうぞー」


書斎で机に向かい大量の魔術式を広げていた


「なにか手伝えることはあるか?」


何も無いと言われそうだがまぁその時はその時だな


「ならお茶持ってそこに居てくれる?ちょうど話し相手が欲しかったんだ」


そう言いながら虎織は振り返る。


「おやすい御用だ。」


我輩は緑茶を持って虎織の傍に座り2人で話をした。

昔話に好きなテレビの話、小説の話。

何度目かの内容でも彼女との会話は飽きることはない。


魔術式が完成したのは話を始めておおよそ1時間後くらいだった。


これで今晩、白鷺城に攻め入ることが決まった

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