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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(下)
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第25幕 一時の日常

 「なぁ!なんでこんな七味とかいっぱいの坦々麺食ってるわけ!?口の中めっちゃ辛いし胃がキリキリするんだけど!」


 表に戻ってきていきなりこれは中々の仕打ちでは無いだろうか。七味かけすぎだろアイツ・・・!味覚無いのか!?


 「あっ、将鷹おかえりー。影朧が辛党だったってだけだよー。美味しいって言いながら食べてたし」

 「ただいま。ってアイツ辛党なだけかよ」

 「ンだよそんくらいでヒーヒー言うなよ」


 隣から声が聞こえる。声の主は剣薙だな。横を向くと目を疑う様な丼がそこに置いてあった。七味1瓶使ったのかと疑う程の赤黒いスープが入っているではないか


 「お前はお前でなんでそんな赤黒いスープなんだよ!?」

 「こんくらいは序の口だろうが」


 その言葉の後にスープを一気に飲み干す。えぇっ・・・舌とか口の中強靱過ぎないか?


 「普段どんだけ辛いもん食ってんだよ!というかよく考えれば昨日もヤバそうな天丼食ってたな!」

 「そうそう、近衛は辛さ耐性の数値がカンストしてるんだよね。というかさっきーがロウでロウがさっきーだったんだ・・・」

 「知らない間に我輩も影朧も変な渾名付いてる!?」


 青髪の少女、彌守ちゃんに気付けば変な渾名を付けられていた。いやまぁ気にしないけどさ


 「影朧は満更でもない感じだったよー」

 「アイツが!?もうなんかツッコミ入れすぎてる気がしなくもないんだけど!」

 「えぇ、そうね。見てて楽しいぐらいにはツッコミ入れてるわ」


 琴葉ちゃんが口元を紙で拭いながら言う。ちょっと楽しそうな表情を見るに今日を楽しめている様だ


 「だよなぁ・・・」

 「まぁ水でも飲んで落ち着いたら?」

 「そうだな・・・あぁ・・・口の中の辛さが増した・・・まぁ別にこれくらいどうってことないけどさ。それはそうとどこら辺回ったんだ?」

 「今から商店街の方に行こうかなって所だよ」

 「なるほどな。影朧が表で商店街に行くと厄介事になりそうだしな」

 「その件なんだけど影朧は将鷹のお兄さんってことにしてるから把握よろしく」

 「なるほど。了解した。にしても影朧が我輩の兄貴ねぇ・・・」

 「うん。なんか影朧ってお兄ちゃんっぽい感じするからね!」

 「納得出来ないけど不思議としっくり来るんだよなぁ」

 「確かにテメェに比べりゃ随分と物分りのいい奴だったな。テメェももう少しアイツを見習ったらどうだ?」

 「影朧は影朧、我輩は我輩だ。天地がひっくり返ってもそれは変わり無い」

 「そういう一貫してるとこは評価してやる。境界は見失うなよ」

 「あぁ、大丈夫だ」


 店を後にし我輩達は酒屋や雑貨屋、和菓子店などが在る地下街を通り階段を上り商店街付近へと出る


 「ここが商店街だよ。喧嘩とかしないでね?」

 「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。今日は喧嘩しない」

 「だな。俺は時と場所は弁えるタイプだ。それに明日ヤツらが攻めてくるんだろ?ここで体力温存しておかない程馬鹿じゃねェよ」

 「おっ、風咲の旦那!なんだよお兄さんが居るなら教えてくれてもいいじゃねぇかよ!」


 商店街に足を踏み入れると八百屋のやっさんが大きく手を振って声をかけてくれる。笑いながら我輩の背中を叩き影朧の話を振ってくる


 「あぁ、申し訳ない。基本秘密主義でね」

 「それで今日はお兄さんは?」

 「あー、えっと」


 困った。事の真相を話すとややこしくなるしどうしたものか・・・琴葉ちゃんに適当にやり過ごしてくれと視線を送ると静かに頷き口をひらく


 「私が別件の仕事頼んで正午に華姫を離れたわ」


 超無難!いやまぁそれでいいんだけどさ


 「なるほど。せめてここの商店街に顔出してから行って欲しかったんだがなぁ」

 「何か用事でも?」

 「いやなに風咲の旦那から聞けない様な事も聞けるだろうしなぁ」

 「えぇ・・・」

 「冗談ですって。それでそちらの御二方、初めて見る顔ですが?」

 「このふたりは今回の件の協力者よ。こちらの大男が剣薙近衛、こっちの可愛い子が彌守、以後よろしくね」

 「このお2人は味方という訳ですね」

 「えぇ、もし何か困ってそうなら力を貸してあげて」

 「委細承知。これから良い関係が築けることを期待しております、剣薙殿、それと彌守ちゃん」

 「俺は今回の件が終わり次第ここを発つつもりだ」

 「そうであっても華姫に戻ってくる事があれば是非ご贔屓に、神楽坂様の御子息」


 やっさんの口から神楽坂の名前が出た途端に剣薙は血相を変え口を開く


 「っ・・・テメェなんでそれを知ってやがる」


 警戒、敵意。剣薙の言葉からはそんな感情が読み取れる。それはそうだろう、剣薙は自分の出自など一切語っていないのだから


 「我々の世代なら剣薙と聞けば神楽坂様の御子息か剣豪一家の2択、そして剣薙殿からは神楽坂様と同じ雰囲気が漂っておりますので」


 納得のいく答え、そう言うべきだろうか。剣薙は「そうか・・・」とだけ呟いてさっきまで向けていた敵意は綺麗さっぱり消え失せていた


 「何か知りたい事があれば是非。昔話程度なら何時でも」

 「気が向いたらな」

 「さて、そろそろ行こうぜ」

 「おっと、これは引き止めてしまって申し訳ない」

 「いいさ。また来るよ」


 やっさんに手を振り我輩達は商店街を歩き始めた

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