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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(下)
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第20幕 琴葉

 「剣薙に会いに行く前に寄りたい所があるんだけど」

 「何処行く気だ?」


 将鷹なら何も聞かずに首を縦に振って着いてきてくれただろうけど今は影朧、言うなれば将鷹であって将鷹でない、魂の形が少し違う人なのだから当然の反応よね


 「皆に謝りに行くわ。鬼の力が暴走して少なからず被害が出てる訳だし、謝って済む問題ではないのだけれど鬼姫としての責任みたいなモノかしら」

 「いいぜ。そういう筋を通すってのは大事だからな」


 影朧は軽く笑う。髪と眼の色、魂の形が違うだけの将鷹っていうのが私の中で何かがつっかえる様な違和感を作り出す


 「姫もそれでいいよな」

 「大丈夫だよ」

 「そう、ありがとう」

 「っと、今更だが琴葉連れてくけどいいよな土地神。それと吉音」

 「あぁ、連れていくのは構わん。しかし、もしもの事があってはならんからな、月奈を監視役として付けておく。あと用事が済んだらセメントと軽石を買ってここへ戻ってまいれ」

 「なんだ?どっかの舗装でもするのか?」


 影朧って案外天然なのかしら・・・きょとんとしながら本当に分からないという顔で土地神さまに質問している


 「お前らが壊した所の補修じゃぁ!お前それは素か!?素なのか!?素で聞いておるな!!」

 「まぁまぁそんなに怒らないでください。影朧はあまり人とコミュニケーションとってきてないみたいですし」


 一応フォローは入れておこう。

 影朧は義理堅いみたいだしこれを恩に感じてなにかしてくれたりするかもしれないという打算もあったけどよく考えたらコイツ恩を感じたりしなさそうね・・・


 「ふむ。確かにそれもそうじゃな。今回は目を瞑ろう」

 「ありがとうございます。それじゃあ行きましょうか」

 「一応出発前に確認しておくが身体に違和感は無いか?」


 影朧が私を見てそう言う。コイツ口悪い時あるけど基本将鷹みたいに優しい系なの・・・?


 「ちょっと肩がいつもより重いくらいかしら。ただ気にするほどではないわ」

 「そうか。問題ないならそれでいい」

 「へぇ、影朧は琴葉ちゃんの事結構気にするだねー」

 「今は姫の次に護る対象だからな・・・コイツが戻ってきて琴葉になにかあったら責任とかそういうので腹を切りかねん」


 凄い殺気を横から感じるんだけど横に居るの月奈よね・・・よっぽど影朧が気に入らないのか今にも影朧に襲い掛かりそうで怖いわ・・・

 月奈を簡単に宥められるの将鷹と月奈のお父さんだけなのよね・・・町中に出てから喧嘩になったら影朧は止められるだろうけど月奈は正直自信がないわ


 「月奈、そんなに影朧が嫌いなの?」


 虎織が月奈に問う。そういえば将鷹の事以外の問題は早めに対処する、そういうスタンスだったわね・・・

 今なら喧嘩になっても月奈のお父さんを呼んでくればどうとでもなる、そう考えて虎織は聞いたのかしら


 「そりゃ将鷹の身体使って好き勝手する奴だし嫌いだよ」

 「ひでぇ言い様だな・・・いやまぁわからんでもないがな。そりゃ昔とは言え自分に影響を与えた奴の身体を好き勝手してるしな。だがな、俺も好きでこうやって表に出てる訳じゃねぇ。コイツに頼まれて俺はここに立っている、その意味が分からない程お前も馬鹿じゃねぇだろ」

 「・・・もし、将鷹が嫌がる様な事したらその瞬間に殺すから。覚えておいて」

 「その場合コイツも死ぬ可能性もあるから気をつけろよ」


 やれるもんならやってみろと言う様に影朧は口角を軽く上げる。月奈を煽るなよとツッコミたくなったけどよく考えたらこれは殺されない様にする為の牽制とも取れる


 「多少の事は気にしないで貰えると助かるかなぁ」

 「虎織はそいつの肩持つんだ」

 「まぁ家族だからね」


 虎織は清々しいまでに晴れた目でそう言い切った


 「そっか、そうだよね家族なら・・・って家族!?も、もしかしてその薬指のはオシャレじゃなくて・・・」


 月奈が柄にもなくノリツッコミをかましながら仰天する。月奈の言葉が気になり虎織の左手に視線を向けると薬指に指輪。何らかの魔術式が施してあるってのは分かるけどそれ以外はよく分からない。一瞬だけ月奈の顔が曇った気もするけどすぐにその表情が明るくなる。

 多分虎織が影朧とくっついたとでも思ったのかしら?


 「ということは・・・将鷹と虎織は・・・」

 「ついさっきの話なんだけどね」

 「おめでとう!影朧の事なんてどうでも良くなるくらいめでたいね!おめでとう!!」

 「おめでとう、これで色々と気にしなくて済むわね。それでどっちから告白したのかしら?」


 これは聞かずにはいられなかった。どちらにもさっさと告白しなさいと言っていた立場からすれば気になる所なのよね


 「2人ともありがとう。告白は将鷹から・・・」


 照れながら少し恥ずかしそうに虎織はそう言った。あのヘタレもやればできるじゃない。まぁ将鷹の少しでも前へ進もうとする所を考えると将鷹から告白するのが必然よね


 「おーい。盛り上がってる所悪いけど桜花が謝る会場の準備してるから早めに行くぞ」

 「いつの間に桜花に連絡とったのよ・・・」

 「さっき電話しといた。このデバイスも中々便利でな」


 影朧は耳につけているインカムの様な物を人差し指で叩いてみせる。新しい通信機器、それともただのインカムかしら


 「翻訳機にそこまで機能つけてるって辻井君よく半日でそこまでの物組めたね・・・すごい」


 どうやら英語がよわよわな将鷹の為に禍築が作った翻訳機らしい。通信機能まで持ってるのはほんと高性能ね。あの変態は技術的にも変態なのがやばいわ・・・


 「それじゃあ今度こそ行きましょうか」


 正直皆に会うのが怖いけどこれは私のまいた種、私が謝らなきゃいけないものだもの・・・

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