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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(下)

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第19幕 良薬口に苦し

 「おーい、琴葉ー?そろそろ起きろ。じゃないとこの匂いヤバめな薬飲ませるぞ」


 俺は袖の魔術式に隔離されていた瓶を取り出し蓋を開ける。姫が言うには魔力が回復する薬らしいが飲むのに抵抗が生まれる程に匂いがキツい。雑草ともう一種類不快感のあるよく分からん匂いが入り交じる人が飲んでいいのか分からない様な物の匂いだ


 「ひっ・・・!」


 琴葉の鼻の辺りに瓶を近づけた瞬間琴葉は目を見開きすごい速度で足と手を器用に使いドタドタと後ずさって行った


 「起きたか。おはよう」

 「お、おはよう!影朧、それ、どうするつもり・・・!?まさか私に飲ませようって気じゃないでしょうね・・・!匂いで分かるわ!それは不味い薬よ!」

 「起きなかったら飲ませるつもりだったが起きたしなぁ。姫、飲むか?」

 「いらないかな」

 「そうか。吉音は?」

 「いるわけないじゃんそんなの」

 「土地神、飲め」

 「強制か!?なんじゃ人の庭荒らしてさらにやばい薬を飲めと!?」

 「冗談だ。俺が飲む他無いようだな」


 瓶を口に近づけると異臭というかもう不味いのが分かる


 「一気飲み推奨だよ・・・」

 「そうだろうな・・・」


 らしくないが怖気付きそうだ・・・だが飲むと決めた。一気に口へと流し込む。雑草だ。思った以上に雑草の味が強い。そしてあとからその雑草を刈り取るが如く漢方薬の味が口いっぱいに広がる。無理やり飲み込もうとするが身体がそれを拒否するかのように飲み込めない。そして舌がヒリヒリとしてきた・・・なんだこれ。意味がわからん・・・


 「影朧、口から垂れてるわよ」

 「あー・・・飲み込めない?」


 俺は必死に喉へとこの謎の液体を流し込み口を開く


 「大丈夫だ・・・でもこんな不味いもんよく飲めるな・・・!お茶くれお茶!」

 「どうぞ。玄米茶です」


 藍だったか?巫女がスっと現れて俺に冷えたお茶を渡してくれる


 「はぁ・・・助かった・・・なんだよこれ。不味すぎるだろ」

 「まぁ良薬口に苦しって言うし効果はきっちり出るよ」

 「その言い分だと姫も飲んだことあるんだなコレ」

 「半分だけだけどね」

 「もう半分はコイツが飲んだわけだ・・・通りで初めて飲んだ感じがしねぇ訳だ・・・うぇっ・・・というかコイツこれ飲み慣れてたりしねぇよなぁ・・・」


 舌がひりつく感覚が思ったよりも早く引いていく


 「それなりに飲んでるかな・・・」

 「おいおいマジかよ。味覚馬鹿になるぞ。定期的に飲んでるならやばいぞ」

 「倒れる度薬師寺君に飲まされてるからねー。将鷹無茶ばっかりするから・・・」

 「はぁ・・・ちっとは俺に頼りゃいいもんを・・・ってそうなったら死ぬほどの事態だな。しかもコイツ自殺も出来ない呪いかかってるしなぁ」


 少彦名命の加護と釣り合わせる為の呪い、それが自殺出来ない呪いだ。どんなに辛くとも生きる事を強いるあの神らしい呪いだな。それにこの呪いの対になる加護が不殺となると尚更タチが悪い。どうやって釣り合いとってんだよマジで。損しか無い、俺にはそう感じるのだが将鷹にとっては有難いものなのかもしれない。なんせ今の将鷹は1人殺して後はどうにでもなれと殺しを続けられる性格じゃないからな


 「ある意味では不殺の延長線みたいなものだよね」

 「あぁ」

 「で、私を起こして放置してる訳だけど?」


 琴葉が少々不満そうにそう言う。そういえば将鷹は琴葉を連れて何処へ向かう気だったのだろうか。家でゆっくりというのも何か違うだろう


 「なぁ姫、コイツは琴葉連れて何処へ行く気だったんだ?」


 こういう時は姫に聞くのが1番手っ取り早いし面倒も無い


 「多分だけど剣薙さんの所かなぁ・・・明日華姫の案内して欲しいって将鷹が私に言ってたし」

 「あぁ・・・あの目付き悪い奴か。待て、アイツと仲良くしろってのか?」

 「そんなことはないと思うけど」

 「いいえ、仲良くしてちょうだい。少なからずこれからの戦力になるんだからできる限りは良好な関係を築いて」


 琴葉は無理難題を言ってくる。絶対喧嘩になる場面あるだろ・・・

 だが、琴葉の意見がこの場合疑う余地もなく正しい。仕方ないが多少なりとも我慢する方がいいだろう


 「わかった。善処する」

 「素直でよろしい。将鷹より物分り良くて助かるわ」

 「アイツは感情が先に出るからな」

 「まぁ必要であれば殴り合うくらいは許容するわ。そうやって仲良くなったりする事もあるだろうし」

 「それはアイツの特徴だろ。俺は殴り合いするとそのまま殺すなりなんなりしちまうぞ」


 まぁそんなことはしないが


 「心にもないこと言っちゃダメだよ」


 姫に速攻でバレた。なんか癖みたいなのが有るのだろうか・・・


 「それにしても将鷹大丈夫かな・・・影朧はどんな状態か把握したりとか出来ないの?」

 「それは無理だな。アイツ全部シャットアウトしてやがる。微睡めばもしかしたら覗けるかもしれないが確率はかなり低いだろうな」


 将鷹からすれば要らぬ心配と言うやつなのだろうがな。いや、姫から心配されるのは喜んでそうだな・・・

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