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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第1章 先代鬼姫編
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第15幕 手合わせ

カッカッカッと木と木がぶつかる音が響く。

現在我輩はヴァンさんと手合わせを行っている。

武器は木製の自分が得意とする物、我輩は木刀2本を、ヴァンさんは西洋系の武器を使っている。


「将鷹!もっと攻めてこい!防御も大事だが攻めないと相手は倒れないぞ!」


木製のハルバード?というのだろうか長い持ち手に斧のような刃が着いた形状の物を振るいながらヴァンさんは言う。


確かに攻めないと倒せないがヴァンさんは攻める隙を与えてはくれない。

まぁ隙は見つけてつくもので与えられものではないのだが


今もヴァンさんの猛攻は止まることはない。受け流すだけで手一杯だ。

そう思った矢先ヴァンさんがハルバードを大きく振りかぶった。

チャンスという訳では無い。1歩、2歩と飛び退き間合いを取る。


「雪城なら突っ込んで来たかもしれんが、お前は一筋縄ではいかないか」


やはり誘いだったか。

もし突っ込んでいたのなら槍で言うところの石突の部分をくらっていたのだろう


「それにしても二刀流は使わないのか?お前刀2本差してる癖に二刀流1回も使った事ねぇよな」

「二刀流は向いてないんですよ!っと!」


間合いを詰め木刀を振り抜く。

しかし持ち手の部分で見事に防がれた。が、握った木刀を離し1歩、そしてもう一本の木刀でヴァンさんの横っ腹に一太刀浴びせる。


「やるじゃねぇか。でも気を抜くなよ!」


ハルバードを地面に刺しそれを基軸にぐるりと蹴りが飛んでくる


「っ!」


油断し、判断が遅れ木刀を弾き飛ばされてしまう。

急いで距離をとったがここはむしろ詰めておいた方が良かったと自分の判断ミスを責める他ない。


横っ腹に一閃ではさすがに追い詰めた、または打ち倒した判定にはならないか・・・

まぁ人間その程度じゃ死なないしな


さてどうしたものか。現状我輩は丸腰、徒手空拳でどうにかできるものなのだろうか?

魔術が使えるならなんとかできるかもしれないがただの手合わせで魔術を使うのはちょっと気が引ける


この手合わせでヴァンさんを打ち負かすには多分捨て身で攻めるのが最善手だろう。

そうなればヴァンさんに先に動いて貰う他ない。我輩は構えず脚を開きいつでも走り出せるようにしてその時を待つ。


お互い一定の距離をとり相手の出方を伺う。

永遠とも感じられるほど長い時間を過ごしたそんな気にさえなる


痺れを切らし先に動いたのはヴァンさんだった。

大きく振りかぶり横薙ぎにハルバードを振るう。

めいっぱい息を吐きハルバードの持ち手部分にぶつかりに行く。刃さえ避けられるなら打撃を食らうだけで済む。

腕で持ち手部分を受けた瞬間、形容し難い痛みが左腕を襲う。


「なんのこれしき!」


痛みを紛らわせる為に声をあげながらハルバードを払い除ける。

正直めちゃくちゃ痛い!


拳を腰付近に構え脚に全力を込め踏み込み突き出す。

昨日自ら食らった技をヴァンさんの胸へとトンと軽く当てる


「これはお前が全力なら死んでたってやつか」


ヴァンさんは髪をかきあげながら言う


「どうですかね?実戦なら我輩の拳はヴァンさんに届かなかったかもしれませんよ」

「謙遜はいい。今回はお前の勝ちだ。まさか中国拳法まがいの技を使って来るとはなぁ」


昨日の一件がなければこの勝利はなかっただろう。

やはり対人戦は学べる事が多いな。

でも、もう死にかけるのは御免蒙るが


「手合わせはもういいかしら?」

「おう。俺の完敗だ。」

「そう、次は勝てるといいわね。風咲くん。これ、東雲さんが持ってきてくれたわよ」


ローズさんが手合わせが終わったのを確認してから我輩に風呂敷を渡してきた。

東雲の名前が出た時点で中身に察しはついた。


「ありがとうございます。」


ローズさんにお礼を言って風呂敷を受け取る。受け取った瞬間ずしりと腕に重さを感じる。

中身の物はこんなに重くはないはず・・・

そう思い風呂敷の結び目を解く。


「短刀?」


今朝頼んで直してもらっていた破けた羽織と共に入っていたのは白木の鞘に収まった刃渡り30センチほどの短刀だった。

そして手紙がはらりと舞い上がり目の前で開かれる。


手紙の内容は護身用にこの短刀を入れておくから使ってくれという内容とちょっとしたお叱りの文面だった。


本当に昨日の一件は色んな人に迷惑と心配かけてるな・・・

反省しないと


「そういえば桜花のおっちゃんが言ってたがお前、グロックのロングマガジンが欲しいんだって?」


どうやら桜花さんが昨日の昼の出来事を重く見てそういう武器商人とのコネがあるヴァンさんに相談してくれていたようだ。


「そうなんですよ。昨日の昼盛大にやらかしまして・・・」

「聞いてるぜ。黒影用の弾丸と対人用の弾丸を同じマガジンにしてたから間違えて普通の弾を黒影にぶち込んだらしいな」


はっはっはっとヴァンさんは大笑いしてから


「そんなおバカさんにはプレゼントだ」


そう言って黒く長い物をこちらに投げた。


「これロングマガジン!」

「おうよ!最近拳銃類あんまり使ってないからやるよ。俺の使い古しだがまだまだ使えるから使ってやってくれ。なんならマグナム弾が撃てるハンドガンもいるか?」

「では有難くいただきます。あっ、でもデザートイーグルは遠慮しておきます」

「なんだ知ってたのか。まぁお前のRSH-12がありゃ必要ねぇか。」

「我輩の虎の子の存在が露見してる!?」

「武器の流通はある程度把握してるからな」


なるほど。納得・・・できねぇ!

普通の商人から買ってるならまだしも東雲雑貨で仕入れて貰ったやつだぞ!?あの人は顧客の情報を渡すはずもないし・・・


「不思議そうな顔してるな。答えは簡単だ。華姫に入ってくる武器の検品は俺が少々手伝ってる。東雲雑貨の名前で銃が入ってくりゃ買うやつは俺かお前の2択なんだよ。」

「あー・・・なるほど」


今回は納得した。検品してるならそりゃバレるか。

まぁバレたところで特になにも問題はないが


「他のやつには言ってねぇから安心しろ。それとそいつまた撃たせて貰ってもいいか?マテバみたいな見た目で結構俺好みなんだけど買うか悩んでてな」

「ならまた射撃場行きましょう」

「おう!そうだなぁ、先代倒したら休暇貰って行くか!」

「うっす!」

「無茶して倒れて行けないはやめてくれよ」


ヴァンさんは笑いながらそう言って我輩の背中を叩く。

約束は果たす主義だ。

必ず無事帰ってくるぞと心に誓い羽織に袖を通す。


短刀を羽織の内ポケットに仕舞い刀を腰に差しいつでも戦える準備が完了する。


まぁまだおやつ時なんだが・・・

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