第14幕 作戦会議
先代との戦闘から約半日。
太陽が気持ちよく照る昼下がり我輩達は喫茶店で会議をしていた。
「ハーイ。コーヒーお待ちどうサマー」
カタコトの日ノ元言葉を喋っているのは金髪サイドテール、外国人のお姉さん、ローズさんである。
「ローズ、貸切で私たちしかいないんだしそのカタコトやめたらどう?」
琴葉ちゃんが珈琲にダバダバとガムシロップを入れながら言う
「失礼、接客中となるとつい癖で」
先程のカタコト喋りはなかったかのようにとても流暢な日ノ元語でローズさんは話す。
「それで、ウチで会議するって事は結構な大事でしょ?お姉さんが知恵を貸してあげましょうか?」
クスクスと煽るように笑いながらローズさんは席に座る。その瞬間厨房の方から怒声が響く
「おいローズ!サボんな!サンドイッチもうあがるからテーブルに持ってけ!」
黒髪の大男、この店の店主、ヴァンさんが厨房から顔を出しながらカウンターにサンドイッチが乗った皿を手際よく並べていく
「仕方ない店長だこと・・・」
ローズさんはそう言いながら席を立ちサンドイッチが綺麗に盛り付けられた6枚の丸皿を器用に運んできてテーブルへと置いていく
「凄いバランス感覚ね」
驚愕というような表情を浮かべながら琴葉ちゃんは言う。
「お姉さんはただ面倒だからこうして一気に運ぶ術を修得しただけよ。できる限り歩きたくないもの」
「横着する為なら努力を惜しまないその姿勢を仕事にも活かして欲しいものだがな」
そう言いながらヴァンさんがエプロンで手を拭きながら我輩達の座る席に向かってくる。
「結果的に仕事に役立ってるからいいじゃない。頭が堅いと若い子に嫌われるわよ」
「特に好かれたいとも思わんがな」
ヴァンさんはどかりとソファーに座り脚を組みバンダナを外す。バンダナで隠れてみえなかったが生え際に金色が見える。
元々金髪だったのだが風土に合わせて黒髪にしているそうだ。
「全員席に着いた事だし会議を始めさせて貰うわ。各々よく聞くように」
琴葉ちゃんの声で全員が背筋を伸ばす
「今白鷺城は先代鬼姫、和煎仄に占拠されている状態なの。放置する訳にもいかないし、何よりそのうち市民にまで被害が出るかもしれないから捕縛または討伐を行うわ。それにあたって作戦会議というのが今回の目的よ」
「それでめずらしく華姫の英雄たる元拾弐本刀の壱番がいるわけか」
「ワシは英雄などでは無い。ただの1人も護れなかった無力な老いぼれだ」
久野宮さんは俯きそう呟いた
「くのみー、後ろを向いても仕方ないわ。話を進めましょう。白鷺城の敷地の見取り図はこれで正門がここね」
琴葉ちゃんは丸めていた紙を広げ門の部分を指さした。
白鷺城の見取り図を見るのはこれが初めてな為よく分からない部分が多い。
そしてその見取り図には墨で黒く塗りつぶされた部分があった。
「ここの部分はなんで黒塗りに?」
我輩は黒く塗られた部分を指さし何か知っているか聞いてみる。
「そこは元西の丸ね。危ないから封鎖したと聞いているわ」
答えたのは琴葉ちゃんだった。
「老朽化とかか?」
「いえ、そこには幽霊が出るそうよ」
場が少々冷え込む。
えっ?そんな理由なのか?
いや、でも悪霊とかやばいやつが出るのかな
「はっはっはっ!ジャパニーズホラーか!そういう所にはウィジャボードを持って行きたいものだな!」
「ヴァン、会議の場で騒がないの。しばくわよ」
「すまん」
はしゃぐヴァンさんを窘めるローズさん。それにしてもしばくってローズさんほんとに外国人か?
日ノ元の方言なんだけど・・・
「どこから乗り込むのがいいのかしらね・・・」
「面倒だし正面突破でいいのではないか?」
久野宮さん、それはいくらなんでも・・・
「ある意味それが正しいのかもしれないわね。魔術で空を走って奇襲するより意外性があって先代様も驚くかもしれないわね」
それでいいのか琴葉ちゃんよ。
「でも正門くぐっても広場と坂があるよね?」
虎織がド正論をかます。
そういえば橋の先の門って広場に繋がっててそこからもうひとつ門をくぐって城の中だったよな。
さて、どうしたものか
「そこも正面突破でいいだろう。相手は仄様1人。ならばそこまで警戒する必要などはない」
この人は我輩が思っていたより脳筋系なのかもしれない。
しかし他の案が思いつくわけでもないので反論することも出来ない
「ヘリで降下した方が早いんじゃないか?というか遮蔽物もない所を走り抜けるのはなかなか危ないと思うんだがそこんとこどうよ」
ヴァンさんが髪をかきあげながらココアシガレットを咥えてポリポリと食べ始める。
サンドイッチあるのにそっちを食べるのか・・・
「ヘリは落とされると色々大変じゃない。それに目標は先代様1人だけなら飛び道具とかは気にする必要はないんじゃないかしら?」
反論する琴葉ちゃん。確かに先代1人なら飛び道具を警戒する必要は少ないのかもしれない。
だが日々喜さんの気が変わって向こう側に本当に着いたとした場合は飛び道具への対策は必須だろう。
「甘いんだよ琴葉様は。対策し過ぎなくらいが人間相手ならちょうどいいんだぜ。相手が1人であっても遮蔽物がないならスナイパーの存在を警戒するのがまず第一だな。」
流石傭兵だっただけある。的確に問題点を挙げていく
「じゃあヴァンならどう攻めるのかしら」
琴葉ちゃんの問にヴァンさんは待ってましたとばかりにニヤリと笑う。
「まずは西の丸の石垣の方から登るだろ、そっからは簡単だ。ここが道として通じてるはずだから白鷺城の中に侵入して出来れば柱に身を隠しながら進んで先代を討つ。以上だ。」
「その西の丸へ登る時はどうするつもりよ。狙撃手が居ると仮定するのなら登っている最中は無防備よ。そこを狙われてしまえばひとたまりもないわ。」
ローズさんもヴァンさんの作戦の問題点を挙げる。
「それは確かにそうだな。雪城、魔術で弾除けとかに使えるようなものを全員分札で作れるか?」
「一応は可能ですけど防げて50口径3発ぐらいですかね」
「よし、それなら速攻石垣登って物陰に隠れれば問題ないな。とりあえず固まって動くのがいいだろう」
固まって動けば弾除けの回数も増えるという感じだろうか
「それで制圧できるのかしら?」
琴葉ちゃんが見取り図をたたみながら言う。
納得しているというかこの作戦で行こうという感じだろう。
「おおよそは。あとは先代のスペック次第としか言いようがないな」
「この人数でかかれば大丈夫だ。仄様1人ならな」
ヴァンさんの問に久野宮さんが答える。
「ヴァンの作戦で攻め込む、それで異論はないかしら?無いようなら短いけど会議は終了よ。みんなの準備が出来次第作戦を決行するから声をかけてちょうだい」
何か引っかかるものがあるがここで会議は幕を閉じた
引っかかるものの正体が分からないがきっと何か後で分かるはずだ
少し頭を冷やして物事を整理するとしよう・・・




