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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(下)
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第10幕 向けられる殺意

喫茶青空へと着いた我輩達はclosedと書かれた看板を無視して中へと入る。するとヴァンさんが頭を抱えているではないか。多分レベッカさんが何かしたのだろう


「あらー?虎織ちゃんじゃない」


そして嬉しそうに現れるレベッカさん。浮ついた様な表情でこちらに近づいてくると共に虎織から放たれる殺気がどんどんと増していくのが分かる


「私の彼氏にあぁいう写真送らないでください!」


視界の横を虎織が通り過ぎる。沈み込む様な音のないステップからの蹴り、並大抵の人間なら吹き飛ぶ程の威力の蹴りがレベッカさんの鳩尾を捉える


「ゴハッ・・・ありがとうございますっ!」


レベッカさんはそう言うと地面へと倒れ込む。少々やりすぎな威力なのだろうがこの人嬉しそうに地面で悶えてるのが怖すぎる・・・


「うわぁ・・・随分とやばい一撃入れたな・・・」

「もう一撃いいですか?」

「やめとけ、その人銃で撃たれても悦ぶような人だから・・・」


呆れた様なヴァンさんの一言で上げた脚を下ろす虎織。しれっとトドメ刺そうとしてなかったか?


「ヴァン、邪魔するんじゃないわよ。さぁ虎織ちゃん!さっきのキツいのもう1発!そうすればその子にエッチな写真とか送らないから・・・!」


やばいやばいやばい!この人ホントやばいよ!怖すぎるだろ!


「分かりました。椿我流・・・」


冷徹に、冷酷に虎織は魔術式を展開しながら脚を高く上げる。やばい、これは殺しにかかってる!


「虎織ストップ!その技はやりすぎだ!」

「なんで?なんで止めるの・・・?」

「自分勝手な理由で悪いけど虎織が人を殺すのを見たくない」


魔術式は展開されたまま虎織の脚はゆっくりと降ろされた。一安心とはまだ行かない。あの魔術式は発動待機の状態のままだ


「邪魔しないでちょうだい!そんなに私の裸が見たいのかしら?」


レベッカさんが叫ぶ。そして煽る様に憎たらしくこちらに視線を向ける


「虎織以外の裸に興味ありません。それ以上虎織の表情を曇らせるなら我輩が貴女をここで痛みなく殺します」


言ってから気付いたがこの人にもし我輩は人を殺せないという情報を握っていた場合この脅しは全くもって意味が無い


「へぇ言うじゃない。いいわ。気持ちよく死ねないのは癪だしこれ以上の会話は無意味ね。はぁ・・・虎織ちゃんに蹴られたかったなぁ」

「ため息つきたいのはこっちですよ・・・全く・・・。それにしても虎織、顔赤いけど大丈夫か?」

「だ、だいじょうぶ!たぶん!うん!」

「女誑しめ」

「なんで!?」

「無自覚とかマジでクソね!ヴァンも何か言ってあげなさい、あんたの弟分でしょ」

「姉御、将鷹はこういうやつだ。虎織のことしか見てない奴でな」


ヴァンさんは少し笑いながらそういった。それにしても心当たりが全く無いというのに女誑し扱いは酷くないか


「さて、と。用事も済んだし琴葉ちゃんの所にでも・・・」


言葉を言い切る前に思い出した。我輩達は琴葉ちゃんの居場所を知らない。多分宇迦様の所では無いし病院だったら蓮から何か一言あるはずだ。そして事務所の場合雪が抱えて連れてきていた可能性もある


そうなれば思い当たる居場所は十二所か?


「琴葉ちゃんは土地神さまの社に居るって大五郎さんが言ってたよ」

「そっちかぁ」


神社までは合っていたがよりにもよってそっちかよ・・・土地神さまと今顔合わせたくないんだよなぁ。何言われるかわかんないし。


でも行かないとだな


それにしても大五郎の爺さんが虎織の前に出てくるのも珍しいな。あの黒狐宇迦様の前以外には出てこないと思っていたが


「それじゃあ行くか」


店を出て虎織を抱えて空を走る。緊急事態だしそのまま社に向かうとしようか。本来ならあの石階段を登るべきなんだろうが


走ること5分程だろうか。土地神さまの社へ鳥居を潜らず地を踏もうとした瞬間身体が吹き飛ばされる


「きゃっ・・・!」

「虎織。手は離すなよ!」

「うん!」


石階段から突き落とされる様に我輩の身体は吹き飛ぶ。幸いな事にこのまま吹き飛べば虎織に怪我ないだろう


「痛って!」


地面へと背中がぶつかる瞬間特に痛くもないのにそんな言葉が反射的に出る


「と思ったけど痛くないな・・・」


地面へとぶつかる瞬間に身体がふわりと浮いてゆっくりと落ちたのだろう


「鳥居はくぐって石段を登って土地に入れ。童がそんな礼儀知らずだとは思わんかったぞ」


聞き覚えのあるロリボイス。土地神さまの声だ


「いやぁ緊急事態なら問題ないかなと」

「緊急事態であってもお前は鳥居を潜り石段を登れ。虎織はまぁ良い」

「我輩だけかよ」

「土地神さまの制約的なやつかな・・・」

「どうだろうなぁ。我輩に何かかけてるのかそれとも単純な嫌がらせかもしれないぞ」

「仲悪いもんね土地神さまとは」

「悪いって訳じゃわないけど向こうから突っかかって来る感じだなぁ」


グイッと身体が前へと引っ張られる


「童ぁ!早く登ってこい!」

「ハイハイ今行きますよ・・・」


今日は随分と石階段が長い気がするが気の所為ということにしておこう・・・

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