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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(下)

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第5幕 過去と今

「アンタ彌守ちゃんとはどういう関係?見たところ血の繋がりはなさそうだし誘拐でもしてきたのかしら?」


ゆずと呼ばれていたこの緑髪の女はいちいち癇に障る言い方をしてきやがる。だが誘拐と言えば誘拐か


「誘拐と言えば誘拐だが」

「えっ・・・マジ?ロリコン?いやいや流石に華姫でコイツ匿うのヤバすぎるじゃない・・・!」


本当にこの女は・・・!


「話は最後まで聞きやがれ。彌守はアルカンスィエルに監禁されてたんだ。それを連れ出しただけだ」

「ふーん。こんな年端も行かない子を監禁するなんて随分と変態揃いの場所だったのね」


柚の目付きが変わった。明らかにここに居ない誰かへの憎悪が発露している


「あぁ、まともな奴はほとんど居なかった」

「アンタ含めて?」

「そうだな」


俺も大概まともじゃない。目的の為なら平気で人殺しが出来る奴なんて人道から外れてるしな


「近衛はまともじゃん!私をずっと守ってくれてるし!確かに口と目付きと素行が悪くて馬鹿舌でも少なくとも私が関わった人の中ではまともだよ!」

「色々と余計だろそれは」

「ねぇ彌守ちゃん、アルカンスィエルでどんな事されたか聞いてもいいかしら?」


彌守は少し考えている様子がある。辛い過去だ、わざわざ話す必要はない。そう口を挟もうとした瞬間彌守の口が開く


「柚さんは優しい人みたいだからちょっとだけ・・・」

「ありがとう。それとごめんなさい、辛いでしょうけど教えて」

「ずっと暗くて寒い牢屋で大人の人達が私を見てたの。それで1回だけ牢屋から出られるんだけど頭に変な被り物させられて目隠しもあって椅子に括り付けられて・・・」


思い出すだけでもおぞましい。俺が彌守をアルカンスィエルから連れ出すきっかけになったあの日の話だ・・・


「急に電気が身体に流れてもう何が何だか分からなかった、痛いし全身焼けるみたいに熱いしでも縛られてるからじたばたしても逃げられない、そんな時に他の人達の声が頭に響いてきて・・・実験はやっぱり失敗だったとか、次のモルモットを用意しないといけないとか・・・」


「共感体質か・・・」


柚は他に聞こえないようにそう呟いた


「それで1人だけ、その場に居た1人だけが必ず助け出す、待ってろって・・・」


柚は座っていた椅子から飛び出すように俺に掴みかかってきた。当然の反応だ


「おい、剣薙・・・!テメェこの子がそんな酷いことされてるってのにその場でじっと見てたのか・・・?」


軽蔑に憎悪。そういう目だ。それにどこから取り出したのか分からないが明らかにヤバそうな液体が入った注射器が手に握られていた。返答次第で俺を殺すって脅しだろう


「あぁ、あの場で連れ出しても逃げ切れる訳もないからな。それに」


言い切る前に注射器を俺の頚動脈目掛けて刺そうとしてきやがった


「柚さんやめて!」


彌守の言葉で皮膚に刺さる前に注射器は止まる


「確かにその時辛かった、苦しかった、痛かった・・・でも、でも!それ以上に近衛が助けて出してくれて一緒に居てくれた時間は楽しくて、キラキラしてて・・・手放したくないの・・・!だから私から、何も無い私から近衛を取らないで!」

「ごめんなさい彌守ちゃん。ちょっと感情的になり過ぎたわ・・・その、剣薙もごめんなさい・・・」

「いや、いい。彌守をあの時助けられなかったのも事実だ」


責められるべきだ。あの時助けられなかったのだから。きっとあの実験の前に助けられていたら彌守が怖がる物も少しは減っていたかもしれない


病室が静寂に包まれる中窓の外から大きな物音がした。まるで木を斬っている様な音だ


「何事!?」


真っ先に窓の外を見たのは柚だった。そして笑いながら俺達にこう言った


「バ風咲がまたバカやってるわよ」

「何やってんだよ・・・アイツは・・・」


ベッドから起き上がり窓の傍まで歩いていく。外を覗くと風咲が見覚えのない純白の刀を持って空を歩いていた。見るからにあいつが使っていた刀よりも数段格が上がっている様に見える。それに木を斬りつける時水が刀身を覆う様に膜を張っている。アイツ俺との手合わせの時に手を抜いてって事か?いや、そんなことする様なやつじゃないな


「うわぁ!ざっきー空飛んでる!凄い!」


彌守が能天気な感想を言っているが気にする暇などない。何せ今の風咲はさっき手合わせした時よりも格段に動きが良くなっている。というよりもあれがアイツの本来の戦い方だろう。

地面に降り立った風咲は峰を肩に乗せてから剣閃を2本引く。その軌跡には水が滞留し落ちてきた木を飛沫を飛ばしながら斬り裂いて行く


「近衛、近衛!虹!」


彌守の指指す方には水飛沫のおかげで虹がかかって見える。こういうの込みで魔術を使ってるならアイツはかなりバカなんじゃないのかとは思う。まぁ偶然の産物だろうが。


次は降ってくる数が多いな。どう切り抜ける


アイツの答えは乱撃だった。少々期待外れだが袈裟に始まり袈裟に終わる。確かタイ捨流だったか。そうなるとアイツの椿流の源流はタイ捨流か


見るべきものは見終わったと言うべきか。素直にベッドに戻るとするか


次アイツとやり合う時はあの時より随分と楽しくなりそうだ



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