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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(下)

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第1幕 お昼は蕎麦

暗がりでよく見えない。なんてことは無い。倒れているのは青髪の男だ


「アリサー無事か?」


倒れた男を見ておおよそアリサの無事は分かる。この家の現状を見れば大体は察しがつく。ゴム弾が跳ね返った痕、これはアリサが撃った弾の痕だろう。そしてそれが廊下に5つ転がっている


「あーお兄ちゃん・・・うちは大丈夫・・・」


ひょっこりと柱からアリサが顔を出す。明らかに顔色が悪い


「大丈夫じゃないだろ」

「お兄ちゃんは今来ないで」

「なんで」

「その・・・今下着だけじゃけぇ・・・」

「なら私なら問題ないよね?」


虎織がそういうとアリサが頷く


「じゃあ将鷹はちょっと待っててね。覗きに来ちゃダメだよ?」

「了解だ」


そういえばヴァンさんと一緒にアリサは行動しているはずだがヴァンさんは何処に居るのだろうか・・・?

あの人の事だから台所だろうか。そう思い台所に向かう。襖を開けるとほのかに香る和風出汁の匂いが鼻をくすぐる


「あっ、やっぱり」

「将鷹か。悪いな、勝手に台所と食材借りてるぞ」


ヴァンさんが小気味よい音を立て手際よくネギを刻んでいた。見た感じ卵雑炊だろうか


「いえいえ、アリサが迷惑かけたみたいで・・・申し訳ない」

「謝るのはこっちの方だ。敵の侵入に気付けなかっただけじゃなくアリサを危険に晒した。本気にすまない・・・」

「怪我もないっぽいから大丈夫ですよ。それに今アリサの為にそうやってご飯作ってくれてるじゃないですか、それだけでも十分ですよ」

「しかしだな・・・」


こういう時はヴァンさん頑固なんだよなぁ。まぁ我輩も同じか


「じゃあまたヴァンさんの所にアリサが行ったらお腹いっぱい食べさせてあげてください」

「あぁ、わかった」


苦笑いを浮かべながらもヴァンさんは納得したような表情をしていた



何となくだが今アリサの体調が優れないのは慣れない能力の行使のせいだと思う。アリサのアレは魔術でもなければ神様の加護でもない。生まれつきの異能とかそういうものだ。

今は鋭い直感だけだがそのうち何か他の物も発現する様になってしまうかもしれないし近くで見ておくべきなのかもしれない。それにアリサを黒影狩りに連れて行ったあの時の狼の件も気になる所だ


「随分と考え込んでるみたいだが大丈夫か?」

「あぁ、大丈夫です」

「そうか。んじゃ、俺はこれ持って行ってくるわ」


ヴァンさんは土鍋を持ってアリサの部屋へと向かおうとする。一瞬そのまま見送りかけたが今のアリサの状態はちょっと見せる訳にはいかない


「ヴァンさん、ちょっと待って!」

「なんだよ?」

「虎織に持って行ってもらいます」

「あー・・・そうか・・・それもそうだな。女の子の部屋におっさんが入るのもアレだしな」

「それは確かにそうですけど、まぁうん。そうです」

「おっさんってのは否定してくれよ・・・」

「我輩達はもうおじさんに片足突っ込んでるでしょ」

「ぐうの音も出ねぇな・・・というかお前がおっさんに片足突っ込んでるってんなら俺は片足というか両足膝まで行ってんぞ」


笑いながら台所で虎織が来るのを待つ。この指輪を通して虎織には伝わっているはずだ


「なぁ、さっきから気になってんだけどその指輪」

「虎織との指輪ですよ」

「ついにか。おめでとう。思えば長い道のりだったな・・・」


ヴァンさんの目が潤んで、鼻をすする音が聞こえた


「ヴァンさん、今から泣かないでくださいよ。そんなんじゃ式とかもうやば過ぎませんか?」

「だってよぉ・・・」

「えっ・・・ヴァンさんどうしたんですか・・・」


台所に入ってきた虎織の第一声がそれだった。そりゃそうだろう。ヴァンさんがもう大泣きしそうな雰囲気で台所に立っているのだから


「虎織、おめでとう・・・!」

「あぁーなるほど。ありがとうございます!でもそんなに泣くほどの事・・・いや、人のこと言えないや・・・」


まぁ虎織泣いてたしな


「そうだ、雑炊取りに来たんだ」

「おう、頼んだぞ」

「それはそうと虎織、アリサは今どんな感じだった?」

「夏風邪っぽい症状と頭痛みたいだね。これは薬師寺君の所に行った方がいいかもしれない。解熱剤でもいいとは思うけど素人の判断での薬はあんまり良くないからね」


虎織の意見には一理ある、そして蓮の所へ行くならアイツの見舞いもついでにできるしな。

柚さんが診てるって言ってたから大丈夫だろうけど腕の数とか増えてないよな・・・

いや、流石あの柚さんでもそれはしないだろう。多分・・・


「なら飯食って少ししたら蓮の所だな。車は何時でも出せるから行けるなら声掛けてくれ」

「あれ?ヴァンさんって免許持ってましたっけ・・・?」


以前は持ってなくて桜花さんに運転してもらった気がするが


「最近取ったんだよ。傭兵時代にちょっとかじってたからそこまで苦労はしなかったが筆記の問題が性格悪かったな・・・」


免許の筆記テストはかなり厄介だと聞いたな・・・月奈がキレながら愚痴ってたのを思い出す


「なるほど。そう簡単には免許を渡せないってのは分かりますけどね」

「人の命がかかってるからな」

「それはそうとアリサ大丈夫でした・・・?乗り物酔い酷いですけど」

「あぁ、低速、窓全開で走ってれば問題なかったな。あぁいうのは車の臭いと風景の急速な変動、揺れから来るもんだろうからな」

「そうですか。お気遣い感謝します」

「気にすんな」


さて、我輩達も昼飯何か食べないと・・・さすがにお腹が減っている。冷蔵庫に食材はっと


麺つゆとわさびといなりあげ、ネギしかない・・・

これは蕎麦ぐらいしか思いつかない・・・


とりあえず蕎麦を茹でて盛り付ける事にしたが茹ですぎたまである



昼飯を食べ、アリサの様子を見て見ると少しマシになってはいるようだ



「それじゃあ行くか」

「お願いします」



ヴァンさんの運転で蓮の居る病院へと運んで貰う。アリサは虎織に任せ我輩は剣薙の病室へと向かうことにした

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