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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(下)

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プロローグ

目を開けると白い天井。俺は何故ここに居るのか。確か・・・あぁ、そうだ。アイツに、妹に脇腹ぶち抜かれたんだったな


思い返せばあんなのは誘導に決まっている。散々人に甘いだなんだと言った俺もまだ甘いな・・・



風咲からあの少年、いや、正確には妹が化けさせられた姿か。それを無理やり奪取して華姫の出口まで抱えて走った


そして妹との話を始めたんだったか


「そろそろその変身解いたらどうだ咲弥」

「流石お兄様、この程度の変身じゃバレてしまいますか」

「何年お前の兄貴やってると思ってんだ」

「22年でしたっけ?」

「多分そんくらいだ」


正確には23年だがこんな細かい事を覚えているのは男としてどうなのかというやつだ。一応あまり覚えていないという風に装ったがつくづく自分が面倒なやつだと自覚するだけだった


「それにしてもなんでお前がここにいるってンだ?」

「そんなの決まっているじゃないですか・・・」


咲弥の姿が俺のよく知る昔と変わらない姿へと戻る。戻る瞬間に一瞬だが何か不気味な物が見えた。計り知れない邪悪な雰囲気、呪いに近い禍々しい何かだ


「お兄様を・・・殺す為ですよ!」


その言葉と共に鋭い一撃の蹴り技、容赦のなさと殺気からするに俺を殺すってのは本気らしい。その確固たる証拠にアルカンスィエルで作られた膝から足首にかけて大型の銀の刃、ヒールのような形状の爪先、踵に金色の刃が付けられた兵装❮ワルキューレ❯がその脚に装着されている


「甘ェンだよ」


俺も応戦する為にワルキューレより前に作られた兵装❮ファーヴニル❯を腕に出力して咲弥の一撃を受け流す。この兵装は原子レベルまで分解され俺達使用者の周りに舞い続ける。そして俺達が使用の意志を示せば装着または顕現させられる便利な道具だ。ワルキューレは俺のファーヴニルの後に作られた代物で全容の把握は出来ていない。作られたというのは聞いていたがまさかそいつが咲弥の手に渡っているとはな


「流石はお兄様。すぐに死なれてしまうと楽しくありませんからね!」

「そう言った事今すぐ後悔させてやるよ。かかって来いよ、咲弥」

「では、遠慮なく」


左からの蹴り、この動きはブラフで右で足払いか。ちょっとだけ遊んでやるか。

俺は左からの蹴りを受けてから刃の隙間から脚を掴む。ファーヴニルで掴んでも音を立てる事もないとは恐れ入った。こいつで昔鉄骨を掴んだことがあるが一瞬で紙を切るように両断出来たというのに


掴んだ脚を起点に咲弥は宙を舞うかの様に右脚での連撃を仕掛けてくる。足払いが効かないと判断しての連撃だろう。片脚で片腕で防げる限界を優に超えてきやがる。こうなれば左脚を離して両腕で防ぐ他ないか


「随分とやる様になったじゃねェか」

「褒めても殺す技しか出ませんよ」


咲弥は不敵に笑う。

速度の乗った蹴り上げ。受ける事もできる、だが1歩下がれば避けられる。どっちにしても次の一手が来るのは明白。隙ができるとしたら空振りした瞬間だ。なら1歩下がって一気に距離を詰めてゼロ距離で攻撃を加えるのが最適解だ


ワルキューレの刃が俺の目の前を過ぎ去った。



だが俺は動かない。これは誘い出しだ、最善手を打った瞬間に致命傷になる様な攻撃をしてくるだろう。

空を切り宙を舞う咲弥は次の一手を用意すべく身体を捻る。それを確認した瞬間に一気に距離を詰め右ストレートを叩き込むが想像以上に咲弥の反応速度が速い。足技で軌道を逸らされる


空中での身のこなしが異常だ・・・普通の人間ならこんな機敏には動けない。例え俺が努力してもこうはならないだろう。そうなればあのワルキューレの機能の1つか


「そんな遅い一撃では私に触れるなんて夢のまた夢、月を掴むようものですよ」

「そうかよ。ならもう少し本気出してやるよ」


ファーヴニルを脚にも現出させようとした瞬間咲弥がふらりと倒れそうになる。罠なのは分かっている。だが身体が既に動いてしまっていた。

咲弥の口元が釣り上がると同時に脇腹に衝撃が走る。痛みに声を上げる暇さえなく俺は倒れ込んでいた。不意打ちにここまで弱いのか俺は


「ふふっ、甘々ですね。お、に、い、さ、ま」

「テメェ・・・」

「このままトドメを刺してもいいんですけどやはりお兄様には屈辱の中死んで頂きたいんですよねェ。なのでここで私に負けた屈辱を噛み締めながら野垂れ死にしてください」


恍惚とした表情を浮かべながら咲弥は俺の顔を覗き込んでいた


「あぁ、その悔しそうな顔・・・いいですねェ。昔から自信満々で常勝のお兄様が敗北を噛み締めていらっしゃる・・・最高の眺めです。でも、そろそろこの場を離れないと・・・」

「待て・・・」


そこで俺の意識は途切れた



「あら、目が覚めた様ね。一応傷口は塞いであげたけど安静にしてなさい」


緑の蛍光色と言うべきか、珍しい髪色の女がそこに居た


「テメェは?」

「口悪いわね、少なくとも私はアンタの命の恩人よ?もう少し礼儀正しくしたらどうかしら?」

「誰が助けてくれなんて頼んだ」


ついつい噛み付いてしまう。きっちり礼が言えりゃいいんだが


「そこの青髪の子よ。あとはバ風咲ね」

「そうか」

「そうか、じゃないでしょ・・・まぁいいわ。これ、請求書」


女が白衣のポケットから出して来た紙を受け取り俺は顔には出さないが驚愕した。法外と言うべき請求額だ。内訳は治療費¥5,000、メス¥40,000、その他雑費¥7,000


「おいおい、ぼったくりかここは・・・」

「随分と良心的な金額よ。私のお気に入りのメス2本折ってその額なんだから」

「はぁ?」

「アンタの皮膚切る時にメスが2本ダメになってんのよ。どんな馬鹿な鍛え方してるのやら・・・」

「じゃあこのその他雑費ってのは?」

「青髪の子のベッド代とご飯代よ。今の状況で特上天盛り頼んでそれならまだマシな方」

「こいつ俺が寝てる間にそんなもんを・・・」

「今はお腹いっぱいで幸せそうに寝てるわ」

「彌守ぃ!」


俺の叫び声が部屋に虚しくこだましただけだった・・・


「アンタも食べる?」

「・・・食う」

「そう。アンタのお代はいいわ。バ風咲につけとく」

「そんな事していいのか・・・?」

「いいのよ。どうせバ風咲の事だから気にしないわ」


こいつ、結構酷いやつだな


「柚さん、剣薙は?」


ガラガラとドアを開き入ってきたのは風咲だった

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