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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(上)
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第32.7幕 邂逅

ちっ、死なない程度の傷だと俺が表に出る訳にはいかねぇ。失血死の可能性とかを考慮するなら表に出ても大丈夫だが


「影朧、今は出てこんでええよ。こっちでどうにかするさかい」


日照の声が響く。どうにかするってもどうしようってんだよ。見殺しだけは許さねぇからな


「そないに声荒らげんでもええやん。大丈夫大丈夫。将ちゃんの治療には丁度ええのがおるんよ。なぁ、少彦名命。ごめんな虎ちゃん、ちーとおやすみ」


日照の言葉と共に姫ががくりと崩れ落ちる。それを受け止めるのは黒髪の神。俺の元になった禁厭や薬の神、少彦名命だった


「日照、手間をかけましたね。この子達に姿を明かす訳にはいかないので」

「はぁ、秘匿主義が過ぎるんちゃう?そろそろこの子らに正体明かしてもえぇやろ」

「それじゃあ私とこの子達と対等では居られませんので。この子達がお墓に入るまでは秘密にしておくつもりですよ」


さて、それはどうかな。姫に関しては薄々気づいてるしコイツも眼を完璧に使いこなせる様になったらすぐにでもバレるだろう


「そうやろなぁ。少彦名命もそろそろ覚悟しとった方がええでぇ」

「あの、日照は誰とお話しているんでしょうか・・・?」


これは驚いた。日照にしか俺の声が聞こえていない様だ。てっきり神は勝手に俺の声が聞こえるもんだと思っていたが


「影朧、オレにも聞こえるているよ」


狐耳の神、確か宇迦之御魂神と言ったか。ということは少彦名命だけ俺の声が聞こえていないわけか


「気楽に宇迦でいいぞ。坊やみたいに様を付けてもいいが」

「影朧、種明かしするとな、少彦名命は神力を今封じとるからあんさんの声が聞こえんのよ。それと忠定言うたかなぁ出てきたらどうや?坊やの身体今は好き勝手できるんやろ?」


忠定のやつそんな事できるのか・・・いや、驚く様な事じゃねぇな。俺に表へ出る方法を教えたのは紛れもなくこの雪城忠定なのだから


「全く、日照様は聡いから困るな。少彦名命の御前無視していただきたかったんですが」


忠定は将鷹の身体を使い言葉を紡ぎながらゆっくりと立ち上がる。それを見た少彦名命は走り出す


「そんなに走ったら転けま・・・ぐはっ・・・!」


忠定が言葉を紡いでいる最中、少彦名命が袖を捲り綺麗な右ストレートを将鷹、いや今は忠定の顔面にぶち込んだのだ。普段の少彦名命からは想像もつかないような煙が出るようなパンチだった。というか摩擦で煙が出ていた。体は1回転2回転とクルクル回り地面のに身体を擦りながらその摩擦でなんとか止まった


「痛ってぇ!何するんですか少彦名命!借り物の身体を傷つけないでいただきたい!」


頬をさすりながら忠定はそう言う


「忠定、もう1発殴らせてください。次は必ずその身体から剥がしますから・・・」


パキパキと指を鳴らしながらゆっくりと少彦名命は近づいて来る。その表情は怒りに満ちており朗らかな雰囲気などない。漫画でキレたキャラが近寄ってくる時に口から白い煙が出ている描写がたまに見かけられるがなるほど。こういうことか・・・


「ちょっと待って!怖いんだけどぉ!?」

「待ちません。さっさとその身体から出ていってください。後は好きにして構いません」

「少彦名命。ちーと待ちぃな。今の将ちゃんの身体でそれやったら死んでまうよー」


止めに入ったのは日照。これは助かった。下手なことされると将鷹が死にかねない。というか忠定が表に出ている為か俺が表へと出て治す事もできない。出来れば手短に主導権をこちらに渡して欲しいものだ


「チッ、次は有りませんから」


不満気に少彦名命はそう言って後ろを向く


「少彦名命、あの時はすまなかった」

「今はなんとも思ってませんよ。だからその身体は早くその子に返してあげてください。この子の不注意、いえ、幸三郎の不始末であったとしてもこの子には重すぎるモノですから」

「そうできればさっさとしているさ・・・」


この2人は面識がある、俺の勘が正しいのなら少し前に忠定が言っていた恋仲だった神とは少彦名命の事なのだろう


「影朧、ご褒美あげよか?」


要らねぇよ。てか合ってんのか


「いやいや、遠慮せんでええよーというか貰って貰わな困るんよ」


そう言うと日照が自らの左腕を手刀で切り落とし地面に投げた


「来い、影狼」


引き寄せられる様に俺の意識は切り落とされた左腕に吸い込まれて行った。

そして俺は蒼炎の狼へと変貌していた


「さて、出してあげたんやからやることやってもらおか。少彦名命呼んだはええけどどうやら治す気失せてしもうたらしいしなぁ」


まずは将鷹の身体へと噛みつき燃やし傷を癒す。この禁厭の炎はあくまでも炎の形をした魔術式と呼ぶべき物だ。これには少彦名命の権能を薄めてではあるが行使できる。これから薬を作ろうと思えばできるはずだ。俺の頭では傷の治し方しか理解できないがな


蒼炎が将鷹を燃やし傷を塞ぎ不調を整えていく。これで姫が悲しむこともない


次は遠くから向かってくる人間共の始末か。将鷹が見ていたら多分やり過ぎだと言うのだろうな。

全てを灰にし苦しませて殺すのだから・・・

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