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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(上)
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第30幕 刀とプライド

「痛ってぇ・・・琴葉ちゃん、ちと加減してくれよ・・・っても聞こえないか・・・」


刀を正眼で構えて左足を前に出して息を大きく吐く。さっきの一撃で背中に結構なダメージが入って背中を丸めると背中が痛い。今日は痣ができまくってる気がする


「将鷹、琴葉ちゃんの動き見える・・・?」

「目で追うのがギリギリだな」

「なら行けるね。少しだけ視界借りるね」


指輪が光る。なんだコレ・・・視界がおかしい・・・左眼で自分の世界を、右眼で多分虎織の世界を見ている


「視界共有とか聞いてないぞ・・・!うぅ・・・絶対慣れないぞこれ・・・」

「ごめん、さっき思いついた魔術式なんだ。というか思ったより気持ち悪いねこの感覚!使っておいてなんだけど無理!吐きそう!」


視界が元に戻った。これは一生使う事ないだろうなぁ。

我輩は視界の端に捉えている琴葉ちゃんの動きを確認してから袖からゆっくりと白鎖を地面に垂らして待機する


「うぅ・・・頭クラクラする・・・将鷹これ頭パンクしないの・・・?」


虎織は右眼を押さえながら唸っている。正直そこまでなる程では無いとは思うんだけど個人差ってやつだな。これはしばらく虎織は動けそうに無い


「大丈夫。虎織はしばらく我輩の傍から離れない様にな」

「ごめん。いけると思ったんだけど想像以上に不可かかっちゃった」

「気にしない気にしない。今の最大の問題は琴葉ちゃんの服、だしな」


飛び掛ってくる琴葉ちゃんの脚に白鎖が絡む。申し訳ないけどしばらく地面に寝ててもらおうか。あんまり手荒なことしたくないんだよぁ・・・女の子相手だし


「落とせ」


白鎖が力強く琴葉ちゃんを地面に叩きつける。ちょっと力加減をミスった・・・後で謝らないと


「しょ、将鷹・・・やりすぎじゃない・・・?凄い音鳴ったよ?」

「これは自分でもそう思う・・・」


白鎖で捕らえる事ができたけど根本的な解決にはなっていない。どうする・・・考えろ


「あぁぁぁぁぁ!」


琴葉ちゃんの叫び声が聞こえると共に白鎖がギチギチと音を立てる。ギリギリで保っているがやばいな・・・


「捕らえろ!」


通常の鎖をできるだけ袖から出して琴葉ちゃんの手足と身体を縛り付ける。そして白鎖を解くとすごい勢いで袖へと白鎖が向かってくる


「わっ・・・!」


まるで久しぶりに家に帰ってきた猫の様に鎖は袖の収納の魔術式へと収まる。


「ぅぅぅうぅ・・・!」


琴葉ちゃんが唸ると共に鎖が弾け飛んだ。隠すべき所は鎖が上手く残ってくれているがこれはこれでなんというかセンシティブだ・・・


「やっぱ白鎖解くんじゃなかったな!」


後悔を口にしてみたが現状は変わらない。変わるはずがない。

飛び掛ってくる琴葉ちゃんに虎徹の切っ先を向ける。魔力を上手く込めれば強度だけ上げて斬れはしないはず


「眼も慣れれば先読みくらいはできるな」


襲ってくる琴葉ちゃんの鋭く伸びた爪を虎徹で受け流してから正眼に構え直す。

虎徹を持つ腕がビリビリと痺れた。琴葉ちゃんの腕力からじゃ考えられない程の筋力だ。これは数撃受けるだけでも虎徹が折れそうになるだろうな。見切って避けるのが最適解か


「この眼は彼方を見つめる為の物、この眼は刹那を捉える為の物」


魔術式の発動条件となる文言を口する。これは普段使っている遠視の魔術式の強化というよりリミッターを外す為の文言だ。


袖側からさっきと同じ爪での攻撃、視えたなら避けるのみ。ひょいっと虎織を連れて後ろに下がる事で琴葉ちゃんの爪は空を切る


次は虎織が狙われるか。2歩で間合い。これは虎徹で受けるのが最適解だ


鉄がぶつかる音と共に火花が散る。鉄と同程度の硬度の爪となると打ち合いはできるから何とかなりそうだ。でもどうやって琴葉ちゃんを鬼化から助け出す・・・?

呼びかけてみるのは流石にベタ過ぎるか。でも声をかけるくらいの余裕はある。やってみないと何事も分からない


「琴葉ちゃん!戻ってきてくれ!」


呼び掛けてみると少し動きが鈍くなった気がするがどうなのだろうか・・・今のこの眼じゃ確証は得られない


「椿我流、居合、辰!」


虎織の声が響き琴葉ちゃんの伸びていた鋼鉄の爪がいとも容易く斬り落とされる。今の眼が遠視の魔術式の強化状態じゃないと何が起こったのか分からなかったと思う。

刀を引き抜くと同時に風を纏わせ鋭く、そして繊細に龍の様な剣閃を画き尖った爪だけを斬り抜いて行ったのだ


「もういいのか?」

「うん。流石にもう大丈夫。護ってくれてありがと」


なんか照れるがまぁ今はそんな場合じゃない。爪は削いでくれたのならあとは鎖を引きちぎる腕力が問題になってくる。琴葉ちゃんの叫び声と共に土煙が周囲を覆う。

この眼でも追うのがやっとって相当な脚力だぞ・・・

それに蹴られなんかしてら骨が折れるというか砕けるぞ。

なんの迷いも、躊躇もなく我輩に向かって琴葉ちゃんは突っ込んでくる。蹴りが来るかそれとも・・・読めない程に速い


「危なっ・・・ッ」


虎徹で蹴りを逸らしはした。だが・・・虎徹が砕け、折れてしまった。間一髪横腹を掠める程度で済んだが肉が抉れ、痛い。他の刀よりは確かに耐久は劣るがしかし魔力を込めてよっぽどの威力じゃない限りは砕けたりなんかしないはずなのだ・・・


「嘘だろ」


痛みより虎徹が折れたショックの方が大きい・・・

これは我輩のプライドで、大切な貰い物だと言うのに・・・


「将鷹!しっかりして、心まで折れないで!」


虎織の言葉で何とか正気を取り戻した。このまま何も言ってもらえなかったら多分そのまま琴葉ちゃんに殺されていたかもしれない


「そうだよな・・・うん。まだ我輩には風切も短刀も残ってる!」


声を張ってやるぞ!と一言、気合いを入れる。

それが引き金となったのかネガティブから抜け出したのにさっき抉られた所が熱いし痛くなってきやがった。

今の琴葉ちゃんの攻撃はすべて一撃必殺。直撃すれば命はないな


こんな時でも少しだけワクワクし始めているのが不思議だが自然と気合いが入る。風切を引き抜いて大上段で構えてから琴葉ちゃんの動きを待つことにした

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