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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(上)
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第27幕 変化

「なっ・・・!」


我輩と虎織が剣薙に追いついた時には剣薙は血塗れで倒れていた。見たところ致命傷ではないがそれなりに血が流れてしまっている。急いで蓮に来てもらわないと・・・それと応急処置・・・!敵の気配は無いから問題ないはずだ


「虎織!今すぐ蓮に連絡してくれ!応急処置は我輩がする」

「分かった!」


倒れている剣薙に近づいてがっちりとした腕を掴み脈を測る。まだ生きている。大丈夫だ。袖から袋から出していない新品のタオルを引っ張り出しタオルを傷口に当て圧迫して止血を試みる。確かこれは結構な力で圧迫するんだったか


「薬師寺君五分で来るって」

「分かった・・・!虎織、次は禍築に連絡して華姫の門の監視カメラの映像でコイツがやられた時の映像探すように言ってくれるか?」

「了解」


血は止まってきた。おおよそ犯人はコイツが連れていったあの少年だろう。

しかしあの手合わせの時の強さを考えるとあの少年がコイツより強いとはどうも思えない。

不意打ち?油断?慢心?まだ知り合って数時間しか経っていないがコイツがその程度でやられるとは考えにくい


「何があったんだよ・・・」


そのままぐるぐると思考を回しながら蓮の到着を待つ。静寂だけがその場を支配し5分が永遠と思える程に長く感じる。剣薙は失血で死なないか、大丈夫だろうか?と不安が時々頭を過ぎる。コイツとは仲が良い訳じゃない。意見は食い違うし敵なら容赦なく殺すし・・・


でも、死んでいい奴なんかじゃない。それにコイツが死んだらあの彌守って子が悲しむしな


「患者の容態は?」


蓮が到着したようだ。我輩は手短に説明をしてストレッチャーに剣薙を乗せる


「心配そうな顔すんなって。この程度の傷俺がすぐ治してやるよ。だから安心してお前はお前の出来ることをやれ。それにお前の止血のおかげでこっちも迅速に処置できるから死ぬ事はねぇよ」


蓮はそう言って救急車のドアを閉める。蓮が処置してくれるなら安心だ・・・


「将鷹、行こう」

「あぁ、そうだな。敵の正体を知るチャンスだ」

「うん。剣薙さんがやられたって事はかなりの手練だよね。あの子供がそんな力あるとは思えないし他の誰かが剣薙さんを襲ったって考える方がいいよね」

「そうだな。そう考えるのが一番納得行くが・・・」


歩き始めて数分後携帯が振動する。

ディスプレイには雪と表示されていた。雪からの電話なんて珍しいと思いながら通話状態にする


「どうした雪」

「あっ、将鷹!頼まれてた映像見つかったよ!」

「映像・・・?あっ!もしかして禍築の手伝いしてるのか」

「そういうこと!あと何分くらいで事務所に着く?」

「あと5分から10分ってとこだな」

「じゃあお茶用意して待っておくね!」


雪はそう言って電話を切った。それにしても雪はなんでもやってのけるな・・・やる気がある時は本当になんでも出来るというかなぁ


「まさか雪が辻井君の代わりに作業してるとは思わなかったよねー」

「虎織は知ってたのか・・・というか電話かけたから知ってて当然か」

「うん。そういえば将鷹って雪と凄い距離近いけど好き、だったりするの・・・?」


虎織が真面目な顔でそう我輩に問いかける。

雪は確かに虎織と出会ってなかったら惚れていた可能性は否定できない


「友達としては好きだな。でもまぁ気が合う親友ってとこだな」

「そっか。でも雪って将鷹の好みどストレートだよねー。僕っ娘で可愛げがあるけど鋭い、それに綺麗な髪色だし」

「なんでそれ知ってんだよ・・・」


髪が好きなのは言ったことあるけど僕っ娘好きは公言した事は無いんだが・・・


「ひ、み、つ」


ふふっと虎織はいじわる気に笑ってから少し早足で事務所へと向かう。我輩もそれに合わせて歩を少し早める



事務所に着いたのは電話で話してから6分と言ったところか


「雪、準備はできてるか」

「おっ、宣言通りの時間だね!もちろん準備は出来てるよ!瞬き厳禁だからね!」


そう言って雪はキーボードを凄まじい速度で弾き監視カメラの映像を再生する。

少年を連れた剣薙が事件現場となる場所に辿り着いた。そこで少年と会話しているのかしばらく動きがない。

瞬きでもしようかと思った瞬間、少年の姿は少女となり剣薙は驚愕することも無くただそこに立っているだけだった。少女の姿に変わる瞬間なにか見えた気がするが全部見てからでも問題はないからこれは見終わってから戻してもらおう。

少女の姿は白髪で顔つきは剣薙に似ている。血縁者なのだろうか?


「ちょっと止めるね」


雪の言葉を聴いて我輩は瞬きをする


「はい、瞬きタイム終了。じゃあ続き流すよ」

「あぁ」


少女が凄まじい速度で蹴りを放つ。その脚には機械具足と言うべきかよく分からない物が気付かないうちに装着されている。

それを受け止める剣薙の腕にも銀色の篭手が存在していた。魔術式の発動は見受けられなかった・・・謎ギミックだ。もしかしてとは思うが白鎖を強引に解いたのはこの篭手あっての芸当なのかもしれない。


少女と剣薙は笑いながらお互いの攻撃を防ぎ合い戦っている。そんな時に少女はふっ、っと倒れ込む様な動作を見せて剣薙はそれを受け止めようとした。その時だった。ニヤリと少女の口元が上がり普通の人間なら肉が弾け飛びそうな蹴りを剣薙へと当てる。

傷口と同じ位置だ。こんなの食らってあの程度の傷で済んでる剣薙がやばい・・・

率直に出た感想はそれだった。そのまま剣薙は倒れ込み数分後我輩達が辿り着いたという状態だった


「雪、少女の姿が変わるところまで戻してくれるか?」

「変身シーンをじっくり見たいと」

「そうだな」


雪の言い方はなんか語弊がありそうだがまぁ気にしない方向で行く。

戻してもらった所をまじまじと見つめる。やっぱりそうだ。変身の魔術式、それに数枚の札、城ヶ崎の物に間違いないだろう。という事はこの少女と我輩達は戦うしかないって事だな・・・


敵が増えるばかりで少々気が滅入りそうだった・・・

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