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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(上)
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第25幕 異形

「オレにカカワルな・・・」


黒影が口を開く。声帯が出来たのか聞き覚えがある声、というか昔の我輩でものを言う


「だいたいわかった。虎織、耳塞いで我輩の背中だけ見ておいてくれ」


コイツは中学生の頃の我輩、それと・・・


「キミタチはチョウワをミダす。センせイハ、かんぺキをモとメル」


やっぱりあの頃の担任か・・・


「なんだアイツら」

「あんまり喋りたくないから聞かないでくれると助かる」

「そうか」


剣薙は何か察してくれたのかそれ以上口を開くことはなかった


「ケジメは我輩が着ける。もしもの時だけ頼む」

「いいぜ。魔術込みのテメェの力見せてもらおうじゃねェか」

「さぁ、一度倒した馬鹿共だ。最速で倒させて貰う!」


虎徹に魔力を込めて踏み込み、居合、そのまま連撃。

黒影はまだ霧散していない。まだまだ威力が足りていない、ならもっと一撃を重くしないと。

それに必要なのは砂鉄か。それならこの山にはごまんと有るし錬鉄には困らないだろう


「集え」


声と共に魔術式を起動し右手に砂鉄を集め、纏めかなり重量のある剣の型を取らせる。それはもはや斬るというか押し潰す、そう表現するのが相応しいとすら言える


「整えろ」


さらに魔術式を重ねていく。錬鉄、鉄の属性に分類される魔術だ。これを知る魔術師は少ないという。火、水、風、土、雷が基礎とするなら鉄は応用と言うべきなのだろう。まぁそもそもで使える人が少ないらしいから適性があっても存在を知らずに一生を終える人も少なくないと大和先生が言っていたか。実際我輩も雪が教えてくれなかったら知らなかった訳だし


「いくぞ!」


ちょっと大きく作り過ぎたか。馬鹿みたいに重たいが今の我輩には丁度いい気がする。黒影はまだ、のそのそと動きながら唸りながらこちらを睨めつけているように思う


「椿流、大物用剣舞。大蛇!」


砂鉄の剣を大上段に構えてから真っ直ぐ前へと振り下ろし、その剣に体重を乗せて黒影を叩き切って反動で身体が宙へと浮かぶ。そのまま剣を無理矢理引き抜き落ちる身体の体重を乗せて上からもう一度斬撃を加え、地面に足をつける


「カンペキジャナイ・・・マダ足リなぃ」

「おいおいこんだけ叩き込んでも健在ってどんだけ硬いんだよ・・・」


身体の再生の方が早いのか黒影はまだ健在だ。でも


「まだ剣舞は終わってないからな・・・!」


風の魔術式で剣を浮かせ身体を捻って横薙ぎに剣を振るい、さらに遠心力に任せて追撃となる袈裟斬りで黒影を切り裂く、はずだった。黒影に触れる前に剣の先はバラバラに分解されいた


「あーそうだ、そうだったな・・・最近の黒影は魔術というかそのトラウマが持つ特性とかそういうのも真似るんだった」


正確にはどんどんと似せてくるというべきか。あのアリサのトラウマを写した狼は異常だったが最近華姫付近の銅鏡の様な黒影はトラウマの性質をまるっと写し出し魔術さえもコピーできるという厄介な代物らしい。

この中学の頃の担任は解体と結合という属性や原理がよく分からない謎が多い魔術式だ。それにしても昔の我輩側が静かなのが気になるところだが


「モえ尽きろ・・・」


足元に紅蓮の炎が走る。静かにしてると思ったらなるほど・・・これか・・・記憶の片隅にある魔術式、緋炎走(ひえんそう)。1度使うと魔術式が壊れるというデメリットがあるが普通の魔術式では出せない火力の化け物魔術式だ


「残念だが我輩の魔術式は我輩が1番分かってるんだよ!」


緋炎走は魔術式が壊れる以外にも後方に跳べば簡単に避けられるという欠点がある。そして魔術式を構築するのに時間がかかるが故に連発は出来ない。

我輩は後ろに跳び退いた瞬間に砂鉄の剣を元の砂鉄に戻し手に残った分を黒影へと投げつける。ダメージは無いが当てることに意味がある


「やっば・・・もう少し後ろか・・・!」


まだ緋炎走の範囲内に我輩は居た。もう1秒後には紅蓮が範囲を燃やし尽くす。打てる手を探せ。他に手は無いか?後ろに跳び退くには距離的に難しい


「無理ならもう前へ出るしかないな!」


ヤケという訳では無い。こういうやばい時こそ頭が回ると言うやつだ


「纏え、流せ!」


風を操り身に纏う。それに水を含ませこちらが焼け死ぬ前に突破し次の一撃で決める。確固たる意志を込め魔術式を拳に込め、走る。

炎が周りを燃やし続けるが何とか馬鹿みたいに熱い程度でこちらの被害は抑えられている。中学の頃の我輩の火力で助かった。今の我輩の本気だったら我輩なんてすぐ灰になってるだろな。そう苦笑いになりながら炎を抜ける


「壊し、穿ち、吹きとばせ」


叫びと共に右の拳を黒影に叩き込む。黒影は微動だにせずこちらに腕を伸ばしてくる。掴まれるとやばい。直感がそう警鐘を鳴らす


「祓い、滅せよ!」


黒影の腕は気にせず左の拳を全力でぶん殴り黒影を少しだけ吹き飛ばす。それと同時に両の拳で叩き込んだ魔術式が作動する


「錬鉄、青杭(あおくい)


青い炎と共に黒影の身体から無数の黒い砂鉄の杭が勢いよく飛び出てくる。狐火で内部から焼きながら杭が内側から串刺しにする我ながら恐ろしい即興技だ。

対人戦じゃ絶対に使えない様なやばさだなコレは・・・

案の定この一撃には耐えられず黒影は霧散していく。思ったよりも手こずったなぁ・・・まだまだ修行不足か


「存外時間かかったな」


剣薙がそこら辺にあった岩の上に座りこちらに声をかけてくる


「思ったより硬かったんでな」

「修行不足だろ。テメェの使う流派はよくわかんねェがテメェはまだまだだ」

「返す言葉がないな」


そう、師匠はもっと強い。我輩なんて比にならない程に。まだまだ腕を磨かないとダメだと認識出来ただけでも今回は良しとしておこう・・・



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