表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(上)
130/361

第24幕 急務

「虎織、鎖から手を離さないでくれよ!」

「うん!」


我輩は跳ぶ、虎織を抱えて家々の屋根を跳び移る。

何故こんなに急いでいるのか。答えは簡単だ。黒縄山に本物の黒影が出た。それだけの事だ


「結局あの人はヴァンさんの所で預かるみたいだけど大丈夫なのかな」


あの変態、ローズさんの姉にしてアルカンスィエルの元尖兵、レベッカは琴葉ちゃんの判断でヴァンさんと共に行動する事となった。思う所はあるがしかしまぁ琴葉ちゃんの決めた事なら我輩は従うしかない


「実力的にはヴァンさんより上みたいだけど、ローズさんも居るなら大丈夫なんじゃないか?」

「そうじゃなくてヴァンさんが裏切らないかどうか。ローズさんを盾に取られたら裏切るでしょ?それにあの人はヴァンさんの上官?みたいな立ち位置だったみたいだし」

「まぁそうだな。そうなったらそうなっただ。その時にどうにかするしかないんじゃないか?」

「起こりうる可能性はとりあえず頭に置いておいた方がいいよ」

「だな」

「てかお前らの上司はちと能天気過ぎねェか?敵のスパイかもしれねェのによ」


白髪の男、剣薙近衛も一緒に屋根の上を跳ねていく。こいつ体幹が凄いな。一切ブレずに屋根の上を軽々と跳んで着いてきている


「琴葉ちゃんは良くも悪くも仲間への信頼が厚いからなぁ・・・もしあの人がスパイでもどうとでもできるって思ってるんじゃないか」

「流石にそれはどうなんだ?俺なら怖くてそんな事出来ねェよ」

「我輩もだ。でも、琴葉ちゃんが信用するって言ったんだ。我輩達も信用する他ない」

「その理論つーか考え方は辞めとけ。ろくな目に合わねぇぞ」

「忠告ありがとう」

「話は変わるがお前ら毎回屋根の上移動してんのか?」

「そうだな。急ぎの時はずっと屋根の上だ。それがどうかしたか?」

「いや、他意はない。車とかバイクで走った方が速いって思っただけだ」

「免許は持ってねぇんだ」

「不便じゃねぇかそれ?」

「華姫はそうでもないな。なんなら車より自転車の方がオススメだ。市内なら割とどこでも行けるし交通渋滞に引っかからないし。何より華姫でなら身分証は住民カードか顔パスで通るしな」

「所違えば価値観も変わるってヤツか」


剣薙は納得したような顔で言う


「そういうお前は車とかで華姫に来たのか?」

「いや、日ノ元に着いてからはずっと徒歩だ。アルカンスィエルの奴らに追われても森の中に入ればある程度撒けるんでな」

「なるほどな」

「なぁ、もう1つ気になってるんだがいいか?」

「なんだ?」

「お前の抱えてる女、雪城だったか?人見知りなのか?お前以外とろくに喋って無いように思うが」

「んー、そんな事は無いと思うけどなぁ・・・虎織、そこんとこどうなの」

「えっとねー、なんて言うか、あんまり男の人と話すの慣れてないんだよね。あっ、将鷹は昔から一緒に居るから大丈夫なんだけど」

「変わり者が多いなここは」

「そうだな。でも良い奴ばっかりだぜ」


そういうと共に黒影が出現する黒縄山の敷地に足を踏み入れた。ここからは常に神経を尖らせ何時でも黒影を斬れる様にしておかないと。まぁ虎織を抱えてるから今は無理か


「ここが例の山だな。ここの黒影の特徴は?」

「地域性知ってるのは中々だな。ここのは不死性とは言えないが生半可な攻撃じゃ直ぐに再生する。ゲームで例えるなら速攻で体力ゲージを0にしないと満タンまで回復する」

「一撃で屠りゃぁいいんだな?」

「まぁ、そうだな」


こいつ脳筋みたいな事言ってるけど実際は一つ一つの剣技が繊細で洗練されてる剣士なんだよな。

前動作無しの技、そこから派生させる技は避けるのが精一杯、避けた先にもう一太刀浴びせてくる、達人と呼んでも差し支えない剣技の持ち主だ。我輩は剣技じゃこいつには遠く及ばないと断言できる程に剣薙の技は凄かった


「なんだか嬉しそうな顔してるね」


虎織の言葉で自らの顔が綻んでいる事に気付いた


「これから我輩より強いヤツと一緒に戦うんだ。こんなに面白い事は無いだろ?」

「それちょっと戦闘狂っぽいかも」


クスリと虎織が笑う。まぁ我輩の人生一歩踏み外してたら戦闘狂だっただろうなと思いながらも我輩は笑って返す


「かもな。さて、こっからは一緒に歩こうか」

「そうだね。両手塞がってたら刀も抜けないもんね」


ひょいっと我輩の腕から虎織は飛び退く。そして我輩は虎織が掴んでいた鎖を袖の中へと引き戻す


「なにか来るぞ!」


気配は察知出来た。だが声を出すのは剣薙の方が早い。虫の脚がついた銅鏡の様な黒い塊が我輩達の前に跳ねる。こういう時に限って鏡かよと内心ツッコミながら距離をとる


「将鷹。今回は私何も出来ないかも・・・」


バックステップで跳んできた虎織の弱気な一言で鏡が誰のトラウマを写したのかが理解できた。鏡はボコボコと泡を立て人の形を取り始める


「人型・・・?」


いや、人型ではあるがそれは異様だ。下半身は1つだが胴体から上が2つある異形へと姿を変える


「オオオォォ・・・」


黒影は声を出そうとしているのか唸る


「なんだこの黒影」

「鏡、人のトラウマを読み取ってそれに姿を変える厄介過ぎる黒影だ」

「なるほど。で、今回は雪城のトラウマがソイツに反映されてるってワケか」

「あぁ、さっさと倒しちまおうぜ」

「そうだな。俺の足引っ張んじゃねェぞ?」

「お前もな」


剣薙は笑いながらそう言った。我輩も笑いながら刀を構え動きを待つ。剣薙の脚が一歩前へ出た瞬間に我輩は地面を強く蹴りだし刀を鞘に納めた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ