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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第1章 先代鬼姫編
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第11幕 開戦

暗い夜道を2人で歩いて行く。


城が見える一本道に出て建物の屋根へと登って辺りを見回す。

特に異常なし。危険がないのを確認してから銃に付けるようなスコープを取り出し城の正門を確認する。


「正門は問題なし。」


次に正門付近と正門の向こう側、つまり敷地内を見渡す。


「正門付近問題なし。敷地内問題なし。」

「それじゃあ中に入って探索でもしてみる?」


虎織が髪留めを触りながら聞いてきた。


「そうするか。話が出来る状態ならいいんだがな」


今気づいたが虎織の髪留めがいつもなら2つなのだが3つつけてある。まぁ御守りみたいな感じでつけてくれているのだろう。実際何かあった時の為に魔術式を仕込んであるのだが。


正門へと繋がる橋の前まで歩を進める。

段々と緊張してきた。

ドッドッドッと心臓が早鐘(はやがね)をうつ。相手が用意周到ならこの橋を渡っている時に落としにくる可能性も捨てきれない


虎織(とらおり)、この橋は慎重に渡るべきだろうか?」

「落ちるかどうか確認してから速攻で渡るのがいいんじゃないかな」

「とりあえず手頃な石をと・・・」


手頃な石を探そうと辺りを見渡した瞬間、ズドン!と大きな音がした。音の方へと目を向けると橋の中ほどに白髪の女性、先代鬼姫、和煎(わせん)(ほのか)が立っていた。


「まさか橋が落ちるんじゃなくて先代様が橋に落ちてくるとはね・・・」

(わらわ)の城に何用ぞ?外からの見物だけなら許すが今の時間に入城は許さんぞ。しかし、せっかく来て貰ったのだ。特別に中に招き入れて茶でも淹れてやっても良いか・・・?うむ。良しとしておこう!」


話は通じるようだ。しかも割とフレンドリーな感じがする


「先代様、単刀直入で申し訳ない。我輩達と共に華姫の役所まで来ていただけませんか?」

「ほう。役所とな。もしや貴様ら十二本刀に連なる者達か」

「はい。」

「奴らは信用ならん!皆、妾を陥れ、裏切り、殺したではないか!黒鉄(くろがね)も、白浜(しらはま)も、左右偽陰(そうぎいん)も、田都(たみや)も、奄守(えんじゅ)も、城ヶ崎(じょうがさき)も、吉音(よしね)も、白鷺(はくろ)も、雪城(ゆきしろ)も、剣薙(けんなぎ)も、あまつさえ最も信頼しておった久野宮(くのみや)でさえも!どうせまた妾を甘言で惑わせて良いように使ってポイじゃろ!あの日の事を思い出すだけで腸が煮えくり返る!よし決めた!貴様らはこの場で石垣のシミにしてやる!」


先代の眼は赤く染まり、風でも吹いたかのように髪がふわりと靡き、毛先が深紅へと染まっていった。


「最悪なパターンだね・・・」


虎織は背中の鞘から刀を引き抜き正眼で構える。


「こうなるのも一応想定はしてたけど、いざ対峙すると怖いもんだな」


我輩も腰の鞘から刀を引き抜き、脇で構え、虎織より2歩前へ出る。

人と命のやり取りなど今までしたことが無い。出来れば殺したくは無いというか人は殺さないと昔決めたのだ。

というか我輩は人を殺せないのだが・・・

まぁ今回は捕縛だから殺さずに済むわけだが。


「構えた割に攻めてこんな。さては貴様らかなり慎重派か?まぁ良い。疾く死ね。」


目の前に居た先代は視界から消える。残ったのは少しの砂埃だけだった。


「口程にもないとはこのことじゃな。」


虎織の後ろに先代は現れ虎織を掴もうとしていた


「虎織は殺らせないぞ」


先代の掴みかかる腕を下から上へと切り払う。切り払うというより弾いて軌道を逸らしたというのが正しいか。

鉄と鉄がぶつかる音が響き、我輩は戸惑ったが魔術師でましてや鬼の血筋なら腕を鉄のような硬度にできるのも納得だ。


「ほう。貴様、さっきのが見えていたのか」

「目だけは良いんでね」


虎織が飛び退いたのを確認し、振り上げた刀を振り下ろす。もちろん防がれ、弾かれた。だがそれでいい。弾かれては打ち込み、弾かれては打ち込み。


我輩はあくまでも時間稼ぎをしているに過ぎない。


「楽しいゾ!貴様!妾の遊び道具にピッタリじゃ!サンドバッグでもなく、かと言って強すぎず!良き塩梅じゃ!」


先代は笑いながら守りを捨て攻めてきた。

今度はこちらが防ぐ番だが少々分が悪いか。片腕しか硬化出来ないならまだ何とかなったが両腕となると話は別だ。


刀1本で捌くのは難しい。魔術式を展開しその魔術式で防ぐ他ない。


「どうした?防戦一方ではないか。もっと身を削るような死合をしようではないか!」


そういうと共に右ストレートが飛んできた。通常の右ストレートではなくそれは正拳突きのようだった。

そしてそれは魔術式の壁を使わせる為のフェイントであり左手の手刀が本命か。


左手の手刀を刀でいなす。すると待っていたと言わんばかりに先代は思いっきり踏み込み掌底を打ってきた


「八極拳か!?」


このままではモロに食らってしまう。

当たるか当たらないか、そんな所で先代の動きが完全に止まる。


「風の鎖か・・・忌々しい!そこの小娘は雪城家の者か!」

「ご明察。将鷹、時間稼ぎありがとね」

「死ぬかと思ったぞ」

「ごめんね。明日パフェ奢るから許して」

「わかった。」


ふふっと口元を隠して笑う虎織。そんな虎織を見て我輩も自然と笑顔になる。


「おいそこ、妾ほっといてイチャつくでない!この体勢しんどいんじゃぞ!」

「「あっ、すみません・・・」」

「これだから雪城家の人間は嫌いなんじゃ!」


先代は暴れる様子もなくただじっとしていた。

数秒たった頃、鎖はいとも容易く何かに引きちぎられた。


「どうやらまだ半人前のようだな小娘!」


虎織に向かって勢いよく先代は踏み込み掌底を叩き込もうとする。

当の虎織は鎖が引きちぎられた事に驚いて反応が少し遅れていた。


「危ない!」


身体が虎織を庇うように虎織の前へと出る。


無茶はするな、自分を大切にしろ。色んな人からそんなことを言われた。そんなもの知ったことか。

我輩は我輩より虎織が大切なんだ。かけがえのない大好きな人なんだ。

左の肺が熱い。じんわりと鈍い痛みと燃えるような熱さが身体を襲う。


「こふっ・・・」


口からは血を吐き、さながらアニメや漫画で胸を貫かれて死にかけている人のようだった。胸は貫かれているのだが。


「珍しい。貴様の心臓は右側じゃったか。しかしまぁ橋の下の水に落とせばどうせ死ぬじゃろう。」


身体が持ち上げられ先代は腕を振り我輩から腕を抜きながら水面へと投げ落とす。


身体が沈む。熱い、寒い、痛い、苦しい。しかし身体は動かない。このまま沈む他ないのか・・・


虎織、ごめん。



ーー俺はお前の死を認めないーー


声が聞こえた。どこかで聞いた事のある声。


ーーあとは任せろーー


我輩の意識はそこで途切れた



幕間 ■■


■■■■■■■


■■■■■■■■■■■■■■、■■■■。


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