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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(上)
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第23幕 誰?

「お待たせー」


虎織がマグカップを持って部屋へと戻ってきた


「ありがとう」


ブラック・・・?何度見てもブラックコーヒーだ。砂糖は入っているのだろうが・・・

牛乳は切らしていない。まだ1リットルが三本あるはず


「虎織、今日はブラックの気分だったのか?」

「あっ、うん!砂糖はたっぷり入れてあるから大丈夫だよ!」


光が部屋に入り虎織の髪がキラリと光る。我輩はマグカップを近くのテーブルに置き神経を尖らせる


「お前は誰だ・・・?」

「将鷹?どうしたのいきなり・・・?」

「お前は誰だって聞いてるんだよ。虎織じゃないだろ」

「酷い・・・!彼女に向かってそんな・・・」

「残念だったな。虎織はまだ我輩の彼女じゃないんでな!」


決め手というか更なる確証を得た。こいつは虎織じゃない!髪が光った瞬間普通なら少し青みがかった灰色だがこいつはどちらかというと暖色、オレンジに近い色だった。さらに風に乗ってきたシャンプーの匂いが違う。それにさっきの言葉が証拠となる


「へぇ・・・やるじゃんお兄さん。でもこんだけ色々とイチャイチャしておいて付き合ってないなんてどれだけピュアなのかしら?」


虎織の顔で意地らしく、悪魔的に微笑む敵。いやもうそれは虎織の顔でやらないでくれ・・・!ギャップで死ぬ!

まぁそんな感情は押さえ込んでポーカーフェイスで対応する


「我輩がヘタレてるんでな!それとその言い方、お前は記憶を読み取る魔術と変化系の魔術が得意みたいだな」

「ふふっ・・・面白い人ね。そこの珈琲、飲まない方がいいわ。人を殺せる毒が入ってるから」

「なんでそれを教える」

「貴方が気に入ったのよ」

「気に入ったってんなら素顔を晒したらどうだ?」

「それもそうね。あまりこの顔で色んな表情すると襲われそうだし」


そう言って敵であろう相手は顔に手を当ててから髪を撫でる。そうするとまるで手品の様に整った顔の金髪美女の顔となった。どこかローズさんに雰囲気が似ているのは多分我輩が外の女性をほとんど見た事がないらかだろう


「私はレベッカ。レベッカ・フォルテハイドよ。風咲将鷹君」

「敵だってのにこりゃご丁寧にどうも」

「敵ねぇ、そんな表現はしないで欲しい物ね。協力者と呼んで貰えるかしら?」

「アルカンスィエルの奴らは敵でな。我輩はそっちに着くつもりもない」

「誰がアルカンスィエル側だって言ったのかしら?早とちりしてない?私は確かにアルカンスィエルの部隊に混じって華姫へ乗り込んだわ。まぁさっきまでアルカンスィエルに所属していたんだけど」

「やっぱり敵じゃないか!というか毒殺しようとした瞬間に敵だよな!」


そうだ、さっき殺されかけたんだぞ。よく考えりゃこうして話してるのもおかしな話じゃないか?虎織の見た目に気を取られ過ぎた気がするぞ


「話は最後まで聞きなさいよ。信用は出来ないでしょうけどアルカンスィエルから抜けるわ。というよりスパイになってあげる。これからの襲撃とか作戦の情報、欲しいでしょ?」


二重スパイの可能性もある。どうしたものか


「なぁ、信用できる奴らに相談してもいいか?」

「それが信用に繋がるならいいわよ。なんならここに仲間を呼んで皆で話し合ってはどうかしら?」

「・・・わかった」


電話を掛けよう、そうした瞬間に澄んだ鈴の音が響く


「将鷹!無事!?」

「毒とか飲まされてねぇか!?」


虎織と蓮が勢いよく家へ乗り込んできたのだ


「大丈夫大丈夫。毒殺されかけたけど生きてる」

「貴女、絶対に許さない・・・ここで刻んで鯉の餌にしてあげる・・・」

「ちょっと待て雪城、2人共争った形跡が無いし戦意無しだぞ」

「そんなのどうでもいい・・・この女は八つ裂きに・・・ってえっ?2人共戦意無し?」


獣の様に息を荒らげていた虎織がふっと素に戻る


「虎織、一旦深呼吸しようか。吸ってー。吐いてー」

「OK。落ち着いたよ」

「じゃあ説明するよ。この人、アルカンスィエル所属なんだけど」


虎織が腰に刀をさげている辺りかなり本気で助けに来てくれた様だ。その腰の刀の鯉口を切って何時でも殺せるぞと警告と警戒をする


「・・・本人の申し出でこっちに向こうの情報をくれると」

「裏切ってこっちに着いてくれるってこと?でも信用できるのそれって」

「俺は条件下では賛成だな。俺たち華姫のメンバーはこいつに一切の情報を流さないって条件かつ知ってる情報を全部ここで吐いてもらってヴァンさんが聞き出した情報と照らし合わせていく。それなら多少は信用できるようにはなるだろ」


蓮のこの提案ならば確かに信用はできる。我輩の頭ではこれ以上の最善手は無いと思える


「あら、その程度でいいのかしら?」


女はキョトンとしてそう言った


「それ以上何があるんだ?」

「そうねー飢えた男達の前に下着だけで放り込まれるくらいは妄そ・・・コホン、覚悟はしていたのだけど」


あっ、この人信用出来そうだけどダメな人だ色々と・・・


「将鷹、この人やばいよ・・・」

「うん。分かってる。というかわかった」

「あ゛ー!灰髪の女の子の下衆を見るような視線!ありがとうございます!ご褒美です!」


もう開き直ったと言わんばかりに欲望全開なこの人どうしようか・・・


「あの、とりあえず幾つか情報を」

「そうね。まずは信用から」


さっきのヨダレをダラダラと垂らしそうな顔からは想像出来ないようなキリッとした顔付きで女は喋り始める


「今華姫を彷徨っているのは先行部隊、というより裏切り者の剣薙近衛の始末と被検体の回収が目的よ。華姫を乗っ取るために送り出された部隊は2日後華姫に到着するはずよ」

「城ヶ崎が言っていた我輩達を殺すのはもう少し経ってからってそういう事か」

「ちっ、もうあの陰湿キモオヤジこっちに着いてるのか・・・」


あからさまに嫌そうにそう言った


「他には?」

「今来ているのは魔術が三流な奴らよ。私は魔術使えるの黙ってたからこうやって先行部隊になったわけだけど」

「その情報は聞き出せてたな。他には何か信用できるような要素とか情報はあるか?」

「そうねーとりあえず武器は全部ここに置いておかない危ないわね。あとコーヒーに入れた毒薬はこれ。アルカンスィエルでよく使われるものよ。研究なりなんなりしてちょうだい」

「この毒は俺が調べさせてもらう」

「あぁ、頼んだ」


これは情報になるか分からないけどと女は口を開く


「アルカンスィエルについてなんだけどこの会社元々は普通の製薬会社だったらしいんだけどあのジョウガサキが来てから軍用兵器とか麻薬類を扱い始めた。アイツいきなり会社の権利を買い取って私たち傭兵団を雇ったのよ」


買い取った!?どこにそんな金が・・・!


「それはそうとさっきヴァンって言っていたけどもしかしてヴァン・R・クロウズの事?」

「こっちからは情報を言わないって条件だろ?」

「そうなのだけどもしそうならヴァンと一緒に居る金髪美少女、いえ、今は美女かしら。ローズを呼んで貰えるかしら?」


2人の名前を的確に言い当てた。知り合いなのだろうか?


「将鷹!大丈夫か!遅くなったが皆無事か!?」


タイミングが良すぎるくらいにヴァンさんが家に来てしまった。そして我輩の部屋へと来て驚愕する


「げっ!姉御!?」

「やっぱりヴァンじゃない。妹とは上手くやっているかしら?」

「まぁぼちぼちと・・・」


ヴァンさんがやりにくそうにこちらに向かってきて小声で我輩に話しかける


「なんで姉御がここに居るんだよ・・・!」

「どういうご関係で?」

「傭兵時代の教官の姉というかローズの姉だ。しかも前線の敵を身体1つで壊滅させてくる化け物だぞ」


そうか、そういえばローズさんがヴァンの部隊の教官だったな・・・

というかこの人が本気を出せば我輩達はもう既に倒れている可能性すらあったのか・・・

軽くヴァンさんに今までのやり取りと経緯を説明して信用できるかどうか聞いてみる


「あの人は嘘をつくようなタイプじゃないが極端な快楽主義者でな、信用はできるけど人として終わってるからな・・・まぁ端的に言えば真性のマゾヒストだ・・・まぁこれは琴葉と話し合うべきだろうな」

「やっぱりそうですよね。でも、一応信用はしてもいいのかな」

「そうだね。信用はしてもいいかもだけど注意はしないとね」

「この変た、変人をどこに置いておくかも考えないとな」


これからあいつらがどう動いて来るか分からないがこれで少しはマシになるだろうか。だが過信は禁物だ

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