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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(上)

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第21幕 意味の無い喧嘩

鉄と鉄のぶつかり合う音と地面を激しく弾く様な足音が響き続けている。魚屋の表の道で将鷹と剣薙近衛が刃を交えていた


「全く・・・男ってなんですぐに喧嘩したがるのかしらね」


私は思った事を呟く。本当になんで必要のない喧嘩をするのかしら。私には分からないわ。しかも木刀ならまだしも真剣でやるなんてどうかしてるわ・・・


「男の子は強さの証明をしたいものなんだよ。それに将鷹はこれから協力してくれる相手の実力をみたいってのも・・・あっ・・・!」


虎織が私のどうでもいい言葉に反応して話している途中で何かを思い出したかの顔を青くしてしまった


「虎織、どうしたのかしら?」

「将鷹の魔力、ほぼ無いんだった・・・どうしよう琴葉ちゃん!?どうしたらいいの!?」

「どうしようも無いでしょ。あの嵐みたいな剣戟の最中止めに入れるわけもないし、何より今のままなら大丈夫でしょう?刀で戦ってるから魔力なんて使う事無いわけだし」


話している間も凄まじい斬り合いが繰り返されている。太刀筋を見切っているみたいにすんでのところで避ける将鷹、そして隙を突いたはずの一太刀を難なく捌く剣薙。素人目じゃ互角に見えるし虎織が心配している様な魔力消費の疲弊は感じられない気がするんだけど


「将鷹のあの刀、虎徹なんだけど魔力で硬度を上げられるんだけどさっきからずっと魔力込めてるみたいなんだ・・・それに今さっき反応遅れてかなりスレスレで避けてたし」

「さっきのはわざと直前で避けてたんじゃ無いの?」

「狙って避けてたなら短刀で確実に勝ちに行ってるよ。多分それでもあの人は防いでたとは思うんだけどね」


将鷹の戦い方を熟知している虎織だからこその的確な指摘。でも将鷹だって新しい戦い方のひとつやふたつと思ったけどこんな時にそんな事するかと言えばノーだ


「それじゃあ今疲弊したまま戦ってるって事よね・・・大丈夫なの?」

「大丈夫じゃないよ。もう限界が近いみたいだし」


戦いに目を向けるといつの間にか防戦一方になり幾重もの斬撃を捌くのに精一杯で足取りもおぼつかない様になっている


「止めに入るわ」

「ダメだよ。今下手に間に入ると将鷹が嫌がるし」

「遠くから声をかけるとかでも?」

「2人とも自分の世界に入っちゃってるから声なんて届かないしどちらかが倒れるまで終わらないよ」

「本当に・・・なんでそうなのかしら・・・呆れて物も言えないわ」


首を振った瞬間、将鷹が倒れそうになっているのが見えた


「将鷹!」


虎織は本気の月奈よりも速く、雷の如き速さで倒れた将鷹を助けに行き、剣薙の刃を弾く。将鷹の意志を尊重するとだいたいこうなるといういい例かしら


「おい、コイツ持病持ちか何かか・・・?」

「ただの魔力切れです。水を差す様な事をしたのは謝ります」

「はぁ・・・びっくりさせやがって・・・さっさとどっかに連れてくかなんかしてやれ。そんでもって起きたらそいつに伝えとけ。次は万全の状態でかかってこいってな」


あら、意外と剣薙は優しいのかしら?まぁ口は悪いけどあの彌守って子に対してはかなり甘いみたいだし根はいい人なのかもしれないわね


数分後真っ白な車に乗った蓮が到着して現状を見て溜め息を零しながら苦笑いになりながら私に話しかけてくる


「綺姫、流石に止めようぜ」

「将鷹がやるって言ったら私の言葉程度じゃ聞かないでしょうに」

「そうなんだがなぁ・・・おい雪城、こいつを将鷹の口に流し込んどけ」


そう言って蓮は瓶に入った液体を虎織の方へと投げる


「えぇ・・・薬師寺君コレ飲ませるの・・・?というか気を失ってるのにどうやって・・・」

「口移しでもなんでもいいからどうにかして飲ませろ」

「それはちょっと・・・」

「なら蓋開けてそのまま突っ込んどけ!将鷹なら死ぬ事はない」


虎織はこくりと頷いてから瓶の中の液体を将鷹の口に流し込んでいく。色が黒というか茶色というかあまり良い色ではない


「アレは何かしら?」

「馬鹿な患者に飲ませる薬だ。起きたら口の中がえぐい味するだろうが魔力に関してはなんとかなるだろ」

「あー・・・そういう・・・」


えげつない雨の日の雑草みたいな臭いが風に乗り私の鼻を刺激する。これ絶対飲みたくないわ


「それはそうと頼まれてた試薬、一応渡しておく。飲み薬タイプと注射タイプだ。あくまでも試薬だから効果は俺も保証出来ない」

「味は?」

「いちご味に調整して苦味はできる限り感じない様に調合してるが俺自身これは飲めないから正確な味は分からん」

「そう、細かい所まで配慮してくれてありがと」


苦い薬は継続的に飲めないから甘くしてもらえると本当に助かるわ


「とりあえずコイツら治療してヴァンさんに引渡したらそこの馬鹿の様子見に帰ってくる。もし意識が戻ったら連絡頼むわ」


鎖に縛られた1人と包帯ぐるぐる巻きの2人を指さして蓮は言った。そしてその3人を車に乗せ走り出した。


今の華姫の状態を見るとあまり悠長に構えてられないかしらね。将鷹がある程度回復したら華姫内のテロリスト共を仕留める他ないかしら。というか喧嘩さえしてなければもう少し早めに動けたのだけど・・・


全く・・・

厄介な事にドクンと心臓が跳ねる。あぁ、早めに薬飲まないといけないわね・・・

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