第20幕 自己紹介
「ご苦労さま。・・・って2人が抱えてる包帯ぐるぐる巻きのソレは何かしら?」
部屋に入ると琴葉ちゃんが興味ありげに目を輝かせ聞いてくる
「そんな目を輝かせるようなもんじゃないよ。怪我人だよ怪我人」
「あら。ということはその包帯の中身は敵って事でいいのかしら?」
「うん。そうだね。でもしばらくは起きないんじゃないかな?傷口焼いて塞ぐ時から気絶したままだし」
そりゃ気絶するわ・・・普通に止血で焼いて塞ぐってハード過ぎないか?いや、でもホッチキスで傷口を塞がれるよりはマシなのかもしれない・・・
というか片方は弾丸が身体に入ったまま傷口塞いだりしてないよな・・・?
「蓮が後で取りに来てくれるからそれまではここに置かせて貰う」
「そう。それじゃあまずは全員自己紹介しましょうか。これから協力し合うんだから多少なりとも知っておいた方が良いでしょうし」
その言葉でなんだかんだでまだ自己紹介も何もしていないという事に気付いた
「言い出しっぺの私から自己紹介するわ。私は綺姫琴葉、華姫の現鬼姫よ。戦闘能力はほぼ皆無だからそこん所よろしくね」
「じゃあ次は私!」
琴葉ちゃんの自己紹介に続き水色髪の少女が元気に手を挙げ口を開く
「私は彌守!戦闘能力は皆無だけど役に立てると思うよ!」
多分この子は怪我の手当てとかが得意なのだろう。たぶん・・・
少しの静寂。我輩は仕方なく口を開く
「それじゃあ次は我輩が。風咲将鷹だ。一応戦えるけど人殺しは出来ない。獲物は日本刀と拳銃だ」
口を閉じたとほぼ同時に虎織が口を開く
「雪城虎織。獲物は日本刀だけで基本的には将鷹とバディを組んで戦ってます」
再びの静寂。そして白髪の男が重い口を開く
「剣薙近衛。武器はお前らと同じく刀だ」
「最後になってしまいましたね。黒鉄日々喜と申します。獲物は隠し武器、ナイフがメインですかね」
この場に居る全員が簡素な自己紹介を終える。簡素過ぎて名前以外はほぼ必要なかったまであるなと思ってしまう。そもそも自らの獲物の宣言は我輩から始めた訳なんだけども。
まぁ今はそんな事はどうでもいい。気になるのは白髪の男、剣薙近衛の剣薙という名字だ。何処かで聞いた、または見たはずなのだがてんで思い出せはしない
「剣薙、そう。貴方がねぇ」
琴葉ちゃんは意味ありげにそう呟いて手元にあったお茶を1口含む。どうやら琴葉ちゃんは心当たりがある様だ。答えを早々に求めるのは如何なものかと思われるかもしれないが思い出せないモノはきっとそのまま思い出せないままでふとした拍子に思い出すモノだ。そのふとした拍子がいつ来るのか分からない、だからここで答えを聞いてしまおう
「知ってるのか?」
「あら?一番貴方が反応しそうな気がしたんだけど・・・」
「我輩が?」
「えぇ、だって剣薙姓って拾弐本刀に居たじゃない」
その言葉で何処で聞いたのか、何処で見たのか思い出した。先代鬼姫、和煎仄が白鷺城の橋でその名を口にし、先代の従者であった久野宮竜吉のノートにきっちりと記された名前だったのだ
「いやでも流石にそんな偶然ある訳・・・」
でも剣薙なんて珍し過ぎる名字がそうそうあるはずもない。肝心の剣薙は黙りだし
「まぁこの話は置いといてと・・・剣薙、お前らは華姫に何しに来たんだ?」
「てめぇらに話す必要はねぇだろうが」
えぇ・・・そういう態度取りますか普通・・・?でも気持ちは分からなくも無い。我輩が同じ状態なら警戒して目的は話さないだろうし
「家族が居た所だから来たんじゃないの?」
青髪の少女彌守が剣薙に問いかける
「・・・はぁ。親父やお袋が居た土地だ、何かあってもアルカンスィエルからコイツを護れるぐらいには強いヤツは居るんだろ」
剣薙はそう言いながら無造作に髪の毛をわさわさと手櫛で乱していく
「あーえぇっと・・・その、憶測で申し訳ないんだけど貴方より強い人は単体では居ないかも知れないわよ?」
琴葉ちゃんがもごもごと言葉を紡ぎ始める
「はァ?いやいや、冗談はよせって。親父でもテッペン取れなかった土地だぞ?俺より強い化け物みたいなヤツらはわんさか居るだろうが」
「確かに化け物みたいな強さの人は何人か居るけど誰も彼も何処か欠陥が有るのよ。それに今は割と平和だからそこまで大きな力は必要ないし」
「平和ボケしてやがんのか・・・ならお前。風咲とか言ったか?俺とタイマンだ」
なんとまさかの我輩が指名されてしまった。鉱太とかなら分かるんだけど我輩かよ・・・でも・・・
「いいぜ。受けて立つ。ここで断ると後で師匠に怒られそうだしな。今回はさっきみたいにセコい手は使わないし使う必要は無いな。こっからはただの男の喧嘩だ」
「良い眼じゃねェか。なら表出ろよ。華姫の魔術師の力見せてみろよ」
ウィザードって某ヒーロー?と一瞬頭を過ぎったが魔術師を指す言葉だと言うのが何となく分かった。まぁそのヒーローのお陰なんだけど。そんな事を考えながら表へと出る
「それじゃあ始めようか」
我輩の言葉を皮切りに戦いが始まる




