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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(上)
123/361

第19幕 剣薙近衛

目の前の男がドス黒い人型へと変貌した。これを見るのは2回目、確信は得た。アイツはこの日ノ元特有の黒影という化け物の成分を取り込んで自らの身体を食わせている。

アルカンスィエルのヤツら彌守を連れ出してから随分と危ない実験を繰り返してるとは聞いていたがまさかここまでとはな


「おいおい、勝てねぇからってそう命を簡単に投げんなよ。ま、俺からすりゃァちっとは骨のあるヤツとやり合えるだけでも楽しいってモンだけどよ」


相手が聞く耳持たない事ぐらいは分かっているが言わずにはいられない。グルグルと喉を鳴らして獲物を見定める様に俺の方を見るがまだ動かない。目は無いがしっかりと正面からの視線を感じる


「かかってこいよ臆病者」


煽っても動き無しか。別にアイツの動きを待つ必要は無い。そうなればこっちから攻めた方が早く片付くか。先に動いた奴が負けるなんて勝負事の世界じゃ言われるが反応出来ない様にしてやれば後に動いた方が不利になる。

脚に最大限力を溜め込み1歩で距離を詰め、目の前の異形を叩き斬る。異形は綺麗に真っ二つになって地面に倒れ血をぶちまけ、水溜まりを作る。

普通の刀じゃこうはいかない。人間の骨なんて斬ったら刃こぼれして切れ味が落ちる所か何も切れない鈍に成り下がり頭蓋骨を叩き割った辺りで刃が止まるだろう。だが俺の持つ「黒鐡」は刃こぼれする程柔くはない


「コロシテ・・・」

「なんだ、まだ死んでねェのか。無駄に頑丈なのも困りモンだな」

「コロシテ・・・ヤル」


真っ二つになった黒い塊が蠢き自らのが作った血の海から鋭い血の塊を俺に向かって飛ばしてくる。だがそんな攻撃は俺には止まって見える。避けるなんて造作もない


「三下魔術師が。俺に当てたきゃきっちり狙う事だな」


黒い塊を粉微塵に切り捨てる。塊は塵となり風に吹かれて消えて行く。

それと同時に悪寒というべきか感じたことの無い感覚に襲われる。一体なんだ?考える間もなく路地の暗がりが青白く不気味に光を放ち火柱が立ち上る。魔術や化学、そんなもんじゃない。アレは別の何かだ。

あの路地に今居るのはさっき刻んだ奴の仲間と鬼姫の部下の優男、それとそいつにベッタリな女だけだ


もしアルカンスィエルのヤツらだとするとこれからの戦いが面倒になりそうだ。

路地へとゆっくり気配を消しながら歩くと包帯で縛られた男を抱えた優男が顔を出す。アイツが無事ということはあの不気味な感覚の正体はそこの優男かあの女という事になる


「そっちは片付いたみたいだな・・・」


男は此方に気付いた様で陰気臭い顔で俺に話しかけてくる。この表情はおおよそ俺が1人を始末した事に対して思う所があるという様な物だろう。本当にコイツのそういう偽善者ぶっている姿が気に食わない。今まで何人も手にかけてきた筈だろう、そんな奴が殺しを咎める権利なんて無いだろうに


「そういうお前は始末も付けず、挙句そいつらを助けンのかよ」

「そういう主義でな」

「ハッ、正義の味方気取りかよ」

「あぁ、目の前で人が死ぬのは御免だからな。それが敵でもだ」

「とんだ偽善者だな」

「偽善だろうがなんだろうが我輩がそう決めたんだ。だから貫き通すのが道理ってもんだろ」


真っ直ぐで甘い考えだけの馬鹿かコイツは。そんな物は捨てた方が身の為だ。そう言うべきなのだろうがどうせコイツは聞く耳を持たないだろう


「そうか。鬼姫が話あるらしいからあの店まで来いよ」

「マジかよ・・・えぇ・・・コイツらどうしよう・・・」


そういうと優男はおもむろに袖から携帯を取り出し誰かに連絡を取り始めた


「もしもし蓮、申し訳ないんだけど魚屋まで怪我人取りに来て貰える?そんでもってヴァンさんの所に・・・あーごめんな忙しい時に。うん。じゃあ頼むわ」


どうやら仲間に連絡を入れていた様だ。まぁ俺には関係ないか。

とりあえず店に戻って話でも聞くか。コイツらとも少しは情報交換しないとこっからの戦いに支障が出る可能性があるしな

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