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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(上)
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第16幕 路地裏

表、というか店の前に大柄な男が3人。それ以外は見当たらない。相手はこちらに気付きはしていないようだが注意するに越したことはない。もう少し前へ出ようかそんな時に仕舞っていた携帯が振動する。こんな時にタイミングが悪い・・・

ディスプレイには禍築と表示されている。通話状態にして要件を聞く


「なんだ禍築。こっちは結構厄介な状態なんだけど」

「魚屋の前に怪しい男3人が」

「もう補足してる、てか接敵するから切るぞ」

「失礼しました・・・!ご武運を」


電話を切り武装した3人の前へと躍り出ようとしたが虎織が手を前に出す


「直ぐに飛び出さない。まずは相手の行動を観察してそれからどうするか決めないと」

「どうこう言ってる暇は無いだろ。このままじゃ市民が危ないし」

「・・・そっか、ごめん。伝え忘れてたね。しばらく華姫市民には役所付近に避難してもらってるんだ。朝起きた時点で言っておくべきだったよね」


初耳である。というか避難して貰ってるとは言うが店を持ってる人はさっきまである程度居たような気がするんだが・・・

そう思いながら周りを見渡すと向かいの肉屋は閉まっているし八百屋や小さな商店は完全に無人だ。そういえば戻って来てから魚屋の店主と若大将を見ていない


今思えばあの時感じた違和感は魔術による道の変化とかでは無く不自然なまでに人が居なかった事なのだろうか


「動きだした」


虎織の言葉に思考を現実に戻し軽く視界に捉えていた者達にピントを合わせる


3人は鎖に巻かれた魔術師を抱えて役所のある方向へと進んでいく


「後ろから不意打ちでも仕掛けるか」

「じゃあ行こうか」


我輩と虎織は魚屋から飛び出す。その瞬間3人の男が鎖に縛られた魔術師を地面に乱暴に落としてからアサルトライフルに手をかけこちらに銃弾を寄越す。これは予想外だ。不意打ちをするつもりがバレていた、そして距離を詰めるには難しい。それどころか被弾しない為に後ろに有った魚屋の横から裏手の方へと逃げて来た

弾は見えなくても銃口の向いている方向を見れば何とか避けきれるかもしれない。いや、3人分一気に避けるのは困難という物だ。自分を過信してはいけない。虎織はどうだろう?


「虎織、銃弾避けて進めるか?」

「私には少し難しいかな・・・アレを連射されるとなると風の壁じゃ防げないし」


風の壁も無敵では無いからな。避けるのも一苦労だし何より3人相手なのが質悪すぎる


「どうしたもんか」

「坊やと虎織、困っている様だね」


壁から声が聴こえた。宇迦様の声だ


「宇迦様?」


虎織の問いかけに宇迦様はうむ。と短く答える


「ちょっとだけ友達のよしみで助けて船でも出してあげようかなとこうやって出てきた訳なんだけど現代兵器ってゲームでの知識しか無いからアドバイス出来るほどでも無いなぁと声をかけてから気づいてしまってな」


壁からひょこっと上半身だけ出てきた宇迦様は困ったという表情で我輩達を見る


「あぁ!そうだ!坊や、ぶっつけ本番にはなるが妖術を使って見たらどうだ?失敗しても影朧とやらがカバーして「軽い気持ちでそんな事言わないで下さい!」


宇迦様の言葉を遮り虎織が力強く言う。宇迦様もそれにびっくりしたのか一瞬顔を強ばらせていた


「確かに将鷹は銃弾の1発や2発受けても大丈夫かもしれません。でも・・・!私はそれが嫌なんです!将鷹には傷付いて欲しくない!痛い思いをして欲しくない!わがままなのは分かってます・・・!それでも、私は・・・」


言い切る前に宇迦様が虎織を片手で持ち上げる


「宇迦様!その手を離してください!」

「いいや離さん。坊やは静かにそこで事の成り行きを見守っておくがよい」


宇迦様の眼が金色に煌々と光り我輩は身体の自由が効かなくなってしまった。喋る事はおろか指先1つ動かす事も出来ない・・・呼吸するのも厳しいくらいだ


「虎織、ちょっとは考えたらどうだ?そうやって坊やを甘やかしているからそこ止まりなんだ。そこに甘んじているから、大丈夫だとあぐらをかいているからそれ以上先に進まないんだ」

「そんなつもりじゃ・・・」

「はぁ・・・ならここで消える方が坊やの為になるだろう。お互い今の関係では良くない事だらけだからね」


宇迦様が手刀を構え振りかざす。寒気と共に全身の血が燃える様に熱く、眼の前の神への怒りが冷たく身体を覆う。


「虎織から手を・・・離せ!」


身体は不思議と動くようになっていた。眼前の神目掛けて拳を握り殴りかかる


「いけない子だ。神相手に殴り掛かるなんてとんだ罰当たりだよ」


虎織から手を離して我輩の方を向く。手刀がこちらに向かってくる。当たれば多分死ぬ。神経一つ一つを燃やす様に刃の様に鋭く意識する。

手刀が我輩の身体を掠める瞬間、神はニヤリと口角を上げる。そして我輩は視界に蒼い炎を捉えながらさっき居た場所より数センチ手前に戻って居た。自分で何が起こったかは理解出来ていない。だが気にせず前へと走り神に殴り掛かり拳を当てる


「思ったより痛いな・・・ごめんよ2人とも。あまりに時間がなかったからこのような形でしか君たちに協力してあげられなかったんだ。別にオレを赦さなくてもいい」

「演技だったんですか・・・?」

「半分はね」


その言葉を聞いてさっきまで身体を覆っていた熱はどこかへ行ってしまい寒気だけが身体に残る


「虎織は気付いていただろうけどね」

「えっ・・・」

「えぇ・・・気付かなかったのかい・・・?」

「眼がガチでしたから・・・というか今もちょっと怖いです・・・」


虎織は涙目になりながら少し距離をとり言う


「あぁ・・・ごめんよ・・・本当にごめん・・・力を入れていないとはいえ首を掴んで上げてしまったものね・・・」

「冗談ですよ」


ふふっと虎織は笑ってみせる。というか我輩怒りに任せて宇迦様殴っちゃったんだよな・・・謝らないと


「宇迦様、殴ってすみませんでした・・・」

「いや、謝らないでほしい。これはオレが悪いから。それと坊やは虎織の事になると多少の無茶はやってのけるってのが分かったからいいんだよ」


宇迦様は頬を擦りながら笑顔で言う。いや本当にコレは申し訳ない・・・


「それで坊やがさっきやったやつはね、妖術と禁厭の狭間にある物だろう。普通ならアレは狐火でやるものなんだけど坊やのは禁厭の炎でやっていたからね」

「自分でもどうやってどういう原理であんな風な事出来たのかよく分からないんですけど・・・」

「今はそれでもいいさ。感覚を1度掴めば何とかなるものさ。オレはもう帰るから2人で頑張ってくれ。本当にごめんよ・・・」


そう言って宇迦様は壁に消えていった。さっきの技果たして実戦で使えるのだろうか・・・


「少しだけわがまま聞いてもらってもいい・・・?」


虎織が急にしおらしく、言葉を紡ぐ


「うん。なんだ」

「あの3人片付けたら2人でゆっくり話したい事があるんだ」

「虎織、それ死亡フラグだぞ」

「・・・とりあえず安全策で3人ぶっ倒そうか」

「具体的には・・・?」


虎織と作戦を話していると男達が路地裏にやってきた。

アサルトライフルの発砲音が路地裏に響き渡る

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