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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(上)
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第14幕 死神

琴葉ちゃん達と合流するため魚屋へと向かう。魚屋に近付くにつれ寒気がどんどん酷くなる。夏だと言うのに冬の様に身が凍え、手が悴む


「流石にこの寒さはヤバいね・・・」

「あぁ、真冬になりかけてるな。おい、お前らの仲間にこういう魔術使うやつは居るか?」


我輩は鎖でぐるぐる巻きにしている外国人に問う。しかし返ってくるのはくぐもった唸り声だけだった。

そういえば口に鎖巻いてたの忘れてた。口の鎖を解き外国人の口を自由に動かせる様にした


「こんなモノを使うやつは居なイ。それと鎖が冷えて痛イ」

「そうか。残念だが鎖は解かねぇぞ。何するかわかんねぇやつを野放しになんかできるかっての」


シャリッと小さな氷の粒を踏むような音が聞こえた。足元を見ると薄く霜が張っている


「おいおい、マジかよ・・・」

「完璧に冬になってるね・・・」


太陽はきっちりと顔を出し燦々と照りつけている。そこに雪の粒が舞い今が夏とは言い難い光景がいきなり飛び込んできた


「あっ、2人とも遅かったじゃないですか」


眼帯を外し紫色の瞳を光らせる日々喜さんが魚屋の前に立っていた。周りには糸が切れた人形のように人が散乱している。そしてもうひとつ、人ではない薄ぼんやりとした何かが日々喜さんの後ろに佇んでいる


「日々喜さん、その後ろのは・・・?」


我輩は挨拶などそっちのけで日々喜さんに問いを投げる


「・・・風咲君、視えてしまっているんですか」

「薄ぼんやりと」


何かが目の前までずいっと、ありえない動きで来た。流体とでも表現するべきなのだろうか?ヌルッと我輩との距離を詰めてくる。この距離でも人の形をしているのは分かるのだがそれ以外は一切分からない


「お前、ただの人間じゃ無いな?俺が見えてるってのに死なねぇ、それに死ぬ気配すらない。一度死んでいる様にも視える」


口のようなものが微かに動く。

その声は渋く、非常にダンディだった


「アンタは一体何者なんだ?」

「俺はお前達の感覚で表現するんなら死神と言えば解りやすいだろう」


死神・・・確か人の魂を冥界に送る存在だったか?そんな存在がなんで日々喜さんに?


「将鷹、誰と話してるの?」

「えーっと、幽霊?」


流石に死神とか言ったら心配されるだろうし幽霊ということにしておこう


「・・・嘘だよね。幽霊より質が悪そうな雰囲気が漂ってるよ。ホントの事教えて」

「おいおい、この嬢ちゃん視えて無いってのによく解るな」

「死神」


我輩がそう口にした瞬間、柏手が打たれる


「あっぶねぇ・・・巫女かこの嬢ちゃん・・・?危うく消される所だったぜ・・・」

「死神って巫女の力でも消えるのか?」

「あぁ、一応魔のモノって判定らしいからな」

「まだ居るんだ・・・」


もう一度柏手が打たれた。死神はふっと消えかけあと1回柏手を打たれたら完全に消えてしまいそうだった。本能が消させてはいけないと吠える


「虎織、ストップ!死神は死神でも良い奴らしいから!」

「死神って視えたらヤバいってどっかの本に書いてあったけど大丈夫なの・・・?」

「その方は大丈夫ですよ。私もハッキリとこの眼で視ています。でもまだ死んでません。なんならこの死神さんのお陰で私はこうして生きていますから」


日々喜さんが我輩の代わりに答える。そして日々喜さんは一言添える


「寒いんでそろそろこの空間どうにかならないですかね・・・?」

「おっと。すっかり忘れてたな」


氷が溶け、周辺は異常な冬から正常な夏へと変わる。しかし寒気は引かない。寒気の正体はこの死神という存在そのものから来る物だというのが判明した。いやまぁ分かってたけども


「で、日々喜さん、その死神さんは一体どういう存在なんですか?」


虎織は警戒を緩めることなく問いを投げる。無害といってもやはり死神という存在は恐怖を掻き立てるのだろう。見えていないのならなおのことだ


「この方は子供の頃に助けて頂いてその時からの縁で契約という形で私の刃となってもらっています。まぁ基本的には私がこの眼を晒さない限りは姿も表しません。在り方としては死期が近づいている人にそれを教える、そんな感じですかね・・・?有り体に言えば外の国の伝承にあるバンシーという妖精に近いですね。能力に関しては・・・本人から説明して頂いた方が解りやすいですかね」


バンシーは確か叫び声を聴いた人間が死期が近いとかそんな妖精だっけ・・・?まぁどうでもいいか


「俺の能力は透過、それに人の寿命を削るだけの能力だ。お前らの言葉で言うなら変異魔術ってやつか?その範囲でしか削れないのが難点だ」

「で、見えた人の寿命を削ると?」

「そういうことだな。日々喜が人に刃物を向ければそいつの寿命が死ぬ直前と同じになる、それを俺が一気に削り取るってだけの話だ」


それはもうチート級に強いんじゃないか?仕組みとしてはおおよそ刃物を向けられることによって死が近い状態になる、そこを狙って死を引き寄せるみたいな感じなのだろうか?


「日々喜、そろそろその眼を隠してくれ。お前の魔力も無限じゃない」

「そうですね。ありがとうございます」

「必要なら何時でも呼ぶといい」


日々喜さんが眼帯を着けると死神はスっと薄くなった。薄くなっただけで消えた訳じゃない。そこには言及する必要もないだろうな。それにしても今まで注意してなかったからとは言え気付かなったのは少々違和感がある


「驚かせてすみません。風咲君、本当に体調とか大丈夫ですか?」

「特に違和感もないですね」

「本当ですか・・・?死神が視えるなんて普通じゃ有り得ないんですよ?」

「まぁ今のところは大丈夫ですから心配しないでください」

「・・・今回は虎織ちゃんとずっと一緒に居て下さい。もしかしたら何か死にかける様なことがあるかも知れませんから。いいですよね虎織ちゃん」

「はい。将鷹はしっかり見ておきます」

「では、琴葉様の所へ戻りましょう。あの二人と脳筋と一緒に居ると思うので大丈夫だとは思いますが」


気付けば道端に転がっていた糸の切れた人形のように倒れていた人々は消えていた。あの死神が片付けたのだろうか


我輩達は魚屋に戻り奥の扉を開き絶句した・・・

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