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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(上)
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第13幕 接敵

「この道おかしいよね」


虎織が背負っている鞘から刀を引き抜き臨戦態勢になる。感じていた違和感がその言葉によって明確となる。

道にあるはずのない石灯籠がズラリと並んでいるのだ。何故気付かなった?何故あるはずの無い物に目をやらなかった・・・?

考えても答えが出るはずもない。魔術師の使う魔術なんて術者以外は分からない物が多いし何より魔術を覚えたての人間は意味不明な式を作りやすい


「素人にしては上出来なんじゃないか」

「そうだね。でももしも素人じゃないって言うならこの人魔術式の組み方を1から勉強するべきかな。地面とか踏むと揺らぐし」


そう言って虎織は地面を蹴る。確かに水の様に波紋が広がってその部分がゆらゆらと揺らめく


「なり損ないの魔術師さん、出てきたらどうかな?」


虎織は相手を挑発する。中々に悪役っぽいいい感じに悪い表情をしているのに何故か可愛げがある。


「とりあえず石灯籠倒してみるか・・・」


何となく、石灯籠に鎖を絡めて引っ張ってみる。設置が甘いのかすぐに倒れ粉々になってしまった。素材は石らしいがどうも脆い


「ワッツ!?お前達、日ノ元のココロ無いノ!?日ノ元は物にも魂が宿るから大切にするんじゃ無いノ!?ワッツ!?」


迷彩柄の服を着てアサルトライフルを持ったいかにもな外国人が少し遠くから姿を現し流暢な日ノ元言葉で我輩達に問いかける


「生憎魔術で作られた物は大切にしない主義でな」

「oh・・・でもそれは錬金術で作った日ノ元の石灯籠?なんだゼ」

「あー錬金術か・・・なるほど。なら尚更大事に扱う必要はないな」


錬金術。できる事は最近の化学で大抵どうにかなってしまう技術だ。利点といえば構成物質さえ用意出来れば実験器具無しに短時間で物が仕上がるって所だけか。しかもそれ自体精度が粗く本来の素材よりも強度が劣る。

まぁでも有害物質を作るとなると最悪最強の能力と言うべきか・・・


「うーん・・・まぁいっか。将鷹、私今から本気出すから足元とか服とか気をつけてね?」


虎織が珍しくただの人間相手に本気を出すらしい。何か癪に触ったのかそれともただ早くここを抜け出したいのか皆目見当もつかないが早めに終わるならそれでいいか


一陣の風が吹くと共に虎織は刀を片手にゆっくりと歩く。近くの石灯籠は虎織の周りに渦巻く鋭い風によってズタズタに削り取られていく。

多分人が巻き込まれたらミンチまではいかなくても原型は保てないだろう


「風刃、一の刃」


虎織の声と共に刀が横薙ぎに振るわれる。刃を振る動作から少し遅れて道の端にある石灯籠は鋏で切られた紙の様に綺麗に切れていく。

そして外国人のアサルトライフルを風の刃が耳を劈くような高音を立てながら2つに切り裂く


「ワッツ!?」

「次は首でも落とそうか。それとも脚がいい?」

「お、お前はなんなんダ!?魔術師にしては聞いていた話よりも好戦的で危険じゃないカ!」


外国人は後退りしながらコンバットナイフを逆手に持ち、構える。そんなものでどうこうなる程虎織の本気は甘くはない


「私今凄い機嫌が悪いからねー。で、どっちがいいかな?」


どうやらご機嫌斜めらしい。猫のように気まぐれな所は有るけどここまでころりと機嫌が変わる事は無い気がするが・・・


「死ねぇぇぇぇ!」


外国人がナイフを突き出し突っ込んでくる。戦闘のプロとは聞いていたが他のやつもこんな感じなのか?これじゃ拍子抜けもいい所だ


「風鎖、地封」


外国人は虎織に近づくことさえ許されずその場で完全に静止する


「ここで貴方を殺す事も出来たんだけど将鷹の前で殺しをするのはちょっと気が引けるから命は助けてあげる。将鷹、捕縛用の鎖巻いてもらえる?」

「りょーかい」


袖から鎖を引き抜きそのまま外国人に巻き付けていく。ぐるぐるのミノムシ状態にしてから口に鎖を噛ませる。端的に言えば自殺防止だな。そして縛り付けた鎖を引っ張り重さを確認する


「まぁこれくらいの重さなら問題ないか。てか暴れる様なら練習ついでに狐火で鎖熱するからな?」


一応釘を刺しておくに越したことはない


「さて、帰ろっか。はぁ・・・せっかくの2人の休みなのにこんなのばっかりだと疲れるね・・・」


虎織は溜息をつき愚痴を零す


「ごめんな。付き合わせて」

「将鷹は悪くないよ。こういう風に絡んでくる人が悪いし今回は厄介事も重なってるからね」

「だがなぁ・・・この埋め合わせは必ずするから」

「うん。楽しみにしてる。どうせだし何着か服でも選んで貰おうかなー?そろそろ夏本番だし水着もいいかも」

「どこへなりとも着いてくぜ」

「なら下着も選んで貰おうか」

「それは遠慮しておく!流石に気まずい!」

「冗談だよ」


虎織は笑ってみせる。いやー正直言うと店員さんの目とかなきゃ選びたいんだけどさ。

そんな下心丸出しな事を考えていたらゾクリと背筋が凍るような寒気がした


「っ・・・!なんかヤバい気がする!」


どうやら虎織も同じものを感じとったようだ。なんで次から次へと問題が起きてくるかなぁ・・・

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