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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(上)

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第9幕 進歩

「はぁ・・・」


琴葉ちゃんが溜息を零す。あの2人組には魚屋でしばらく過ごしてもらう事になった。そして我輩達はいつも通りの日常へと戻り、街中を散策している


「どうした琴葉ちゃん」

「いやぁ怖かったなぁって思っただけよ」

「あー確かに怖かったな。あの殺気は本物だわ」

「殺気だけで殺せそうだよね」


虎織が3色の団子を手に取りながら言う。確かにアレは普通の人が向けられたらそのまま自決を選ぶ様なモノだ。このまま味方になってくれるのならいいがもし対峙するとなるとかなりの心構えと使い捨ての刀が数十本必要となるだろう。というか虎織と組まないと勝てないだろうな


「虎織から見てアイツはどうだ?」

「将鷹と協力してやっと五分、そこに琴葉ちゃんの言霊とか色々と乗せてやっとかなぁ」

「やっぱりそうだよなぁ・・・」

「逆を言えば将鷹と虎織で事足りる訳よね」


琴葉ちゃんはなにか考える様にそう呟く


「そうだな。でも我輩達の予想以上に強いかもしれないんだよなぁ。まだアイツの獲物が何かも分かってないってのがなぁ」

「武器1つでそうも変わる物なの?」

「琴葉ちゃん、その人の武器が分からないって事はその人の間合いが分からないって事だから攻め方が分からないんだよ」

「なるほどね」

「まぁ将鷹みたいに刀を見せてから銃で撃つタイプも居るから目の前の獲物に集中しすぎるのも良くないけどね。というか最近将鷹は対人特化の初見殺し多いよね」


虎織は少々ムスッとしながら我輩の方を見て言う。正直我輩もこういう対人特化な装備にはしたくは無いけどいつ何が起きてもおかしくないこの状況下だから仕方ないと割り切る他ないか。だが本職は人殺しではなく守り人なのを忘れてはいけないな


「鞘の長さを統一して感覚を誤認させたりしてるものね。初見殺しというか1度見せてからの方が強い技かしら」

「黒影には何の役にも立たないけどね」


うーん。虎織がなんかやたら機嫌悪いぞ・・・?

やはり人と真っ向から殺し合う、というニュアンスはおかしいか。我輩は人を殺せない訳だし。まぁ便宜上殺し合いという表現を使うが我輩が殺し合いをするのが嫌なのだろうか?最近この手の話題になると途端に機嫌が悪くなる気がする


「今日の虎織は随分と刺々しいわね。将鷹が人と命のやり取りをするのがそんなに気に食わないのかしら」


琴葉ちゃんが気になっていた事を気にせず口に出し虎織に問う


「気に食わないよ。だってさ、殺せない人が殺し合いするのはおかしいでしょ」


虎織の口から出たのはどうしようもなくド正論だった。

人を殺す覚悟などない、そもそも殺しを神に禁じられているのだからそんな奴が命のやり取りの土俵になど立ってはいけないのだろう


「そんなの将鷹になんのメリットもないし、ハンデ有りの状態でただただ不利な状態を押し付けられているだけじゃん・・・」


その言葉は否定ではなかった。理不尽への憤りと言うべきなのだろうか


「はぁ・・・貴方達本当に仲がいいわね・・・てっきり模擬戦で手も足も出ずに負けたのかと思ったわ」

「それもちょっとあるかも・・・」

「はぁ!?将鷹が虎織から1本とったって訳!?」


琴葉ちゃんが驚き、声を上げる。それもそうだろう。言うなれば番狂わせ、昔の我輩なら絶対に有り得ない結果なのだから。まぁ実の所運が良かったというべきだろう。いつもより地面を蹴る力が強く躓くような形で走ったら思いの外速かった、そして虎織が感覚を掴みきれなかった。その2点が重なったからこその勝利なのだから


「あれは運が良かっただけだ。それに虎織は魔術使って来なかったしさ」

「そんなことないもん!あれはどうしようもなく完敗だったし!魔術使おうとした瞬間に目の前に来て気づいたら刀抜かれてたらどうしようも無いでしょ。でも次は負けないから・・・」

「まさかあの負けっぱなしだった将鷹がねぇ・・・なんかちょっと嬉しいわね。虎織に負けない様にまだまだ腕を磨いて華姫の役に立ててちょうだい」

「あぁ、そのつもりだ」


携帯が振動する。ディスプレイには禍築の表示、しかも緊急用の方だ


「どうした禍築」

「休日にすみません!市内に黒影の反応が出ました・・・!直ぐに向かってください!」

「外から侵入したって事か?」

「いえ、いきなり反応が現れたというか・・・」

「分かった。正確な位置と出現数を教えてくれ」

「数は4、位置は先輩行きつけの魚屋の付近です」


魚屋か・・・厄介事が厄介事を呼ぶのはどうにかならないものか・・・


「わかった。直ぐに現場に向かう」

「お願いします」


我輩は電話を切り虎織と琴葉ちゃんに報告を行う


「魚屋付近に黒影が4匹出たらしい」

「自然発生って訳ではなさそうね」


琴葉ちゃんが興味深い、そう言うかの様に顎に指を添え考える


「あぁ。虎織、休暇中だけど一緒に戦ってくれるか?」

「うん!行こうか。琴葉ちゃん、考え込んで無いで行くよ!」


我輩達は現場に向かって走り出す。何が起きているのか自らの目で確かめる必要がある。市内で黒影が発生するなんて事は古い文献でも書かれていない。黒影はこの付近だと決まって黒縄山に出現する。ならば市内に現れるのはイレギュラーだ。何かが必ずある


「ちょっと、置いていかないでよ!日々喜!抱えて行って!」

「承知しました。全く、あれくらいには自分の足でついて行ってくださいよ」


後ろから日々喜さんの呆れた声が聞こえてくる。そして凄まじい速度で我輩達を追い越して行った


「ねぇ・・・これって罠だったりしないよね・・・?」


虎織が不安気にそう言った


「罠であれなんであれ我輩と虎織なら何とかなるだろ」


嫌な予感を無視して現場へと全速力で駆け抜ける。

そして現場に着いた我輩達が目にしたのは赤黒い血の海が出来た後の景色だった

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