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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(上)

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第7幕 妖術書

ひとつ。妖術は他人の為では無く自分の為に使うべし

ひとつ。妖術は軽々しく使うべからず

ひとつ。自らを見失うべからず


宇迦様から貰った巻物の冒頭にはそう書かれていた。

どうやら手書きのようで達筆過ぎて一瞬読めなかった。多分宇迦様の手書きなのだろう


巻物の中身は至ってシンプルで妖術の使い方、やってはいけないこと、心得等が書かれていた。

狐火や変化、流体化に呪い、幻覚など使う相手を考えなければならない物が多い様だ。


そして巻物の最後は黒く塗りつぶされている。あまりにも危険で消された物なのだろうか?



ぽん、と肩を叩かれた。不意の出来事に驚き、勢いよく後ろを振り向く。肩を叩いたのは宇迦様の様だ



「坊や、熱心に読むのは良いがここで集中されると稲穂が彼岸花に変わってしまうのでな、帰ってからじっくりと読んでは貰えないか」

「えっ?確かに変異がどうのって楓と凪が言ってたけど・・・」

「そう、坊やの魔術師としての素質は変異。神域は坊やの素質を最大限発揮させてしまう様でな、それを鎮静化させる巫女としての能力がある虎織が居てもどうやら集中しているとそれをも上回るらしい。無意識に変えてしまうのだろうな」


虎織ってそんな才能もあったのか・・・初めて知ったぞ

というか神域の力もあるとはいえ神域に影響を与えるってかなり危険な気がしてきたぞ。というか雪城のお嬢さんから虎織呼びになってるって事はかなり意気投合してるっぽいな


「えっ、私ってそんな才能有るんですか?」

「なんと無自覚だったとは・・・まぁ興味が無いとそういうのって調べもしないし識者が周りに居ない限りは気付きもしないというものか」


虎織も自覚無しだったようだ。でも考えてみれば巫女が使う術式を使える訳でむしろそういうのが無い方がおかしな話なのかもしれない


「さて、2人ともそろそろ帰るといいよ。この後デートなのだろう?これ以上大切な時間を使わせてしまうのはオレとしてもあまり気がいいものでは無いからね。帰り道は家の玄関に繋げておいてあげたから」

「デートだなんて・・・」


虎織は少し恥ずかしそうにそう言った。かわいい


「宇迦様、ありがとうございます」

「あぁ、次は3人でゲームでもしよう。君達の道程は険しいだろうけどきっと素晴らしい人生になるよ」


我輩と虎織は頭を下げて虎織の手を取り宇迦様の部屋を出る。

外に出ると日本家屋の横に燃えるような赤の彼岸花が1輪咲いていた。多分これが変異させてしまった何かなのだろう。それにしても彼岸花か・・・


「綺麗な彼岸花だねー。世間じゃあんまりいいイメージ持たれてないけど花言葉の中に情熱だったり想う人は貴方一人とか素敵な物もあるんだよ。まぁ後ろ向きなのも有るんだけどね」

「虎織は彼岸花好きなのか?」

「うん。昔彼岸花畑に行ったの覚えてない?私そこで見たあの咲き乱れる彼岸花から好きになったんだ」


彼岸花畑・・・?記憶にない・・・随分と小さい頃に行ったのだろうか


「覚えてないな・・・子供の頃に行った感じか?」

「そうそう、小学生の頃に将鷹のお母さんに連れて行って貰ってさ」

「ダメだーぜんっぜん思い出せない・・・」

「まぁ無理もないかなぁ。その後直ぐに寝ちゃってたから多分疲れた状態で朧気に見てたんじゃないかな」

「そうなのかなぁ・・・」


考えていると凪と楓が目の前に現れる


「ここから現へとお帰りください」

「家に帰るまでが参拝でございます。お気をつけて」


2匹の間に鳥居が現れる。今度は虚無ではなく家の玄関がくっきりと映っていた


「凪、楓。ありがとう」

「いえいえ」

「お礼には及びません」


2人で鳥居を潜る。なぜか勢い余って我輩は玄関の引き戸にぶつかってしまった


「痛った・・・」

「おっと・・・確かにこれは危ないよね。将鷹がぶつかってなかったら私も顔から行ってたよ」


虎織に怪我が無くて良かったと思いながら引き戸を開けただいまと声をあげる


「あら?お帰りなさい。随分と早いじゃない。まだ30分くらいしか経ってないわよ」


琴葉ちゃんがひょこりと顔を出す。その言葉を聞いてから靴箱に置いてある時計を見る。8時48分、本当に家を出てから30分も経っていない


「ということは神域は時間の流れが現とは切り離されてるみたいだな」

「神様の居場所だし時間なんて止まってたりして」

「ほぼ止まってるみたいな物だろうなぁ。さて、宇迦様が気を使ってくれたんだ。支度しようかね」

「そうだね」


我輩は自分の部屋に戻り着替える。一応羽織は鞄に入れておかないとな。

何が起きるか分からないから備えあれば憂いなし。短刀は何時でも引き出せる様にポケットに忍ばせておこう


「よし、財布も携帯もある、装備品も問題ないな」


こうして危険と隣り合わせになるかもしれない我輩達の休日がゆっくりと始まった

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