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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(上)
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第1幕 鬼

時刻は午後6時。夏ということもあって日はまだ登っている。

駅で路面電車を待つ最中、行先の違う電車が来る


「では将鷹、綺姫を頼むぞ」


桜花さんが電車に乗る時にそう言った


「えぇ、任せてください。我輩と虎織がきっちり守ります」

「2人が居るなら安心だとは思うがもしも何かあればすぐに連絡するのだぞ」


返事をする間もなく電車の扉が閉まり走り出す


「全く、桜花も心配性よね・・・ここ2ヶ月何も起きてない訳だし」

「琴葉ちゃん、ちょっと短絡的過ぎるぞ。左右偽陰をどうにかしないと根本的な解決に成らないし・・・」


この華姫を落とすためにアイツはまた何か手を打ってくるに違いない。アイツを倒さない限り我輩達は安心は出来ないのだ


「それもそうね。でもきっちり守ってくれるんでしょ?」

「そうなんだけどさぁ・・・左右偽陰の能力分かってないし、まだ不明のままの拾弍本刀の1人も必ず左右偽陰と組んでる。分からない事だらけだから打つ手がなぁ・・・」


それに城ヶ崎もだ。アイツこそ次に何かしてくる可能性が高い。符術師の対策は簡単でも手の内が読めない現状ではまともにやり合うこと自体難しいんじゃないだろうか


「そんな弱気でどうすんのよ。貴方と虎織の強さは私がきっちり知ってるわ。勝てはしなくとも少なからず負けないわよ」

「そこは勝てるとか言ってくれよ・・・」

「ふふっ、言ったじゃない強さはきっちり知ってるって」


琴葉ちゃんはお淑やかに笑う


「言ってたけどさぁ・・・」

「あっ、言い忘れてたわ。将鷹の言う通り私の身長が3センチ伸びてたわ。よく気づいたわね・・・貴方もしかして虎織より私の方が好きだったり?」

「長年の付き合いってやつだ。我輩からしたら虎織以上に好きになれる人なんて居ないっての」


確かに琴葉ちゃんは好きだがライクという好きでラブでは無い


「それはそれで傷付くわね・・・」

「えぇ・・・どう答えるのが正解だったんだよ・・・」

「琴葉は可愛いなとイケボで言えば良かったのよ」

「模範解答あんのかよ!?」

「有るに決まってるじゃない!」


何故か怒られた。不本意だ・・・こういう時は話題を変えるのが1番いいのか?よく分からないけどこういう時はそうした方がいいと蓮が言ってたしなぁ


「てか身長伸びたって事は」

「そうね。鬼の血が活発になってるって事よ。あんまりいい傾向では無いの。いつ暴れ出すか分からないし成長を止める事で鬼の血を押さえつけていたって事は暴走した時止めていた成長が急に反映されてしまう。ということは服が破れて最悪全裸よ。百歩譲って服が破けて見えるか見えないかの範囲ならまだいいわ下着が見える程度なら許容しましょう。でも全裸はだめよ」

「あー気にするのそこなんだ・・・いや、そうだな、うん。女の子からしたら暴走するよりそっちの方が問題だな・・・我輩も止める時に目のやり場に困るし」

「えぇ、暴走なんて皆が止めてくれるもの」


その言葉から琴葉ちゃんは我輩達を信頼してくれているというのがひしひしと伝わってくる。そして何か言いにくそうに琴葉ちゃんは口を開く


「・・・本音を言うとね私、独りが怖いから将鷹の優しさに漬け込んでこうやって家に泊めて貰って少しでも気を紛らわせようとしたの。ごめんなさい・・・」

「そういうの怖いよな自分が自分で無くなるなんてさ。正直な事言うとそうだろうなとは思ってたし。頼ってくれて嬉しいよ」


自分が何をするか分からない。この恐怖は想像を絶する物だ。自分で自分が分からなくなるのだから・・・


「そんな言葉かけられたら惚れちゃうじゃない」


琴葉ちゃんは口元を袖で隠してクスリと笑う


「冗談が言える程度には元気出たみたいだな。少しは表情も明るくなったし」


我輩は琴葉ちゃんの頬っぺたをいつぞやかにやられたように引っ張り横に伸ばす


「何するのよー頬っぺた伸びるじゃない」

「前のお返しだ」

「貴方へのあれはある意味ご褒美じゃない」

「ならこれもご褒美だ!」

「ふっふっふっ・・・いいもん、色んな所まさぐられたって虎織に言いつけてやるもん」

「やめて!その言い方だと洗濯板の上で正座させられて説教じゃ終わらないから!やめて!てかまさぐってはないでしょうが!」

「冗談よ。将鷹を揶揄うのは飽きないわね。っとそろそろ電車が来るみたいね」


ガタゴトと音を立てながら電車が走る。しかしいつもより速度が速い気がする。

気がするではなく明らかに速い。そして非常灯が赤く光り行き先の表記が「助けて」になっている。まさかこんなのを目にする機会があるとは・・・


「琴葉ちゃん、乗り込むから持ち上げるぞ」

「待っておくって選択肢は無いみたいね」

「独りは嫌だろ?」

「えぇ。ついて行く方がまだ怖くないわね」


琴葉ちゃんを抱え上げる。見た目通り随分と軽い。もはや抱えているのが気にならない程だ


「えっ・・・将鷹!これは流石に恥ずかしいってば!これお姫様抱っこじゃない!?」

「細かい事は気にするな!」


助走をつけ、一向にスピードを落とすことが無い電車の人気のない窓目掛けて跳び込む。

窓ガラスを蹴破り中に入ると覆面の男と思われる者が見慣れない機関銃を構えて運転手に向けていた。車内には幸いにも覆面と運転手しか居ない


「What are you guys!?」


聞きなれない言葉だった。多分英語だろう。残念ながら我輩は英語という事とこの覆面が男という事以外一切わからない


「琴葉ちゃん、こいつ何言ってんの?」

「はぁ・・・そうだったわね・・・英語ダメダメだったわね。お前達はなんだって言ってるわ」

「そうか。我輩はお前みたいな不届き者を捕まえるのを生業にしている!」

「律儀に答えるのね・・・というか私が翻訳してあげないとダメよね・・・I'm an ally of justice!」


琴葉ちゃんが我輩の言った言葉を翻訳して力強く言ってくれた


「Are you a hero?HAHAHAHA!No! I'm a hero !!」


男は問答無用と言わんばかりに我輩達に向けて機関銃を乱射する。避けるには少しばかり数が多いか。なら魔術でどうにかする他ない


「吹き荒べ!」


言葉と共に風が目の前の弾丸を潰すように渦を巻く。

最近解ったことなのだが我輩はどうやら発動したい魔術式の特徴を声に出した方が発動が早いようだ


「OK.Let's talk・・・」


男は暴風、というより魔術に驚いたのか銃から手を離し両手を挙げる。どうやら降参の様だ


「琴葉ちゃん、なんて言ってんの?多分降参だ的な事言ってると思うんだけど?」

「話し合おうって言ってるわ」

「なるほど。流石琴葉ちゃん!こういうのはヴァンさんに頼んだ方が良いよな?」

「えぇ、そうね。呼んでおくわ。その男が何かしないように見張っておいてちょうだい」

「分かった。運転手さん無事か?」

「ありがとうございます・・・!おかげさまで無傷です・・・」


良かった。・・・いや、良くないな。この状況でほっと一息なんて出来やしない。まだ確定ではないが外の言葉を使うという事はアルカンスィエル絡みの事かもしれない。これはまた忙しくなりそうだ・・・


「琴葉ちゃん。明日は一緒に出歩くぞ」

「あら、風咲君モテモテだーとか世間様に思われたいのかしら?」

「遠からず」

「うわぁ・・・ないわー」

「冗談だっての!」


拳銃を男に突きつけながら我輩達は談笑する。いたって普通の光景であり異常な光景でもあった

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