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第30話 10秒間の勝負ですわ

 アンジュが好んで使うスキルに『八艘飛び』がある。

 壇ノ浦の戦い――源義経が敵の手から逃れるために船から船へ跳んで渡ったとされる逸話が名前の由来となっているこのスキルは、大きく2つの効果を持つ。


 1つ、指定した地点に向かって最大8回連続でジャンプ移動を行う。

 2つ、そのジャンプ中は受けるダメージを大幅に軽減する。


 ジャンプ中は自身からの攻撃が0ダメージになるというデメリットがあるものの、それを補って余りある強力なスキルである。

 アンジュはこのスキルで敵との間合いを詰め、即座に攻撃に転じるという戦法を得意としていた。


「『八艘飛び』!」


 あくまでも、1位を狙う。

 アンジュは、迷わずトウカに向かって突っ込んだ。


「っ!」


 アンジュの戦法を知っているトウカはガードの姿勢をとるが、それは意味を成さなかった。

 アンジュの目的は攻撃ではないからだ。

 すれ違いざまにトウカの手を掴んで、祭壇の外――赤い半透明の壁に向かってジャンプした。


「何を……! アンジュさん!」

「スキルやモンスターの攻撃はともかく、人の考えまでは読めないみたいだな! 安心したぜ!」


 細剣の攻撃を受けたがスキルの効果でダメージを抑え、そのまま彼女の身体を浮かせて運び去る。


「待ちなさい!」


 背後からツララの声が聞こえた。

 理由は知らないが、この王者はやたらとトウカに執着している。

 それを利用しない手は無かった。

 ジャンプ4回を使って赤い壁の向こう側まで行くと、トウカを思い切り地面へ投げつけ、残りのジャンプで元いた位置へ戻る。


(……まずいですわ!)


 赤い壁の向こうに滞在できる時間は10秒。

 それを越えれば問答無用で敗退だ。

 走れば5秒とかからない距離。

 しかし。


「『氷壁』!」


 駆けだしたトウカのに、白い壁が現れた。

 どうしても自分がトドメを刺したかったのか、ツララが出現させたものだ。

 避けるにしろ壊すにしろ、この走る勢いを止めては制限時間を越えてしまう。


 ()()()()()()()()()()()()()()


 簡単には壊せそうもない氷の防壁を目の前にして、しかし彼女は足を止めずに、その名を、ギルドの仲間にも、アンジュにも秘密にしていた()()()の名を叫ぶ。



「『デュークドラゴン』!!」



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