第22話 イベント当日ですわ
イベント当日。
凍結が解除され、再びAAOにログインしたトウカは、アンジュに深々と頭を下げていた。
「今回は大変申し訳ありませんでした……」
アンジュはポンポンと、撫でるようにその頭に触れる。
「大丈夫だよ。お前に悪気があるわけじゃないのは分かってる。気にすんな」
「あ、あんじゅさぁぁぁん!」
「こらひっつくな! また凍結されんぞ!」
2人の様子を見て、マスターたちは安心した表情を浮かべた。
「なんとかなってよかったね」
「せっかくのイベントに参加できなきゃトウカちゃんも悲しいだろうしな」
その後、街の中心にある巨大なコロシアムでトウカたちイベント参加希望者は観客席に座っていた。
運営によるゲーム開始の宣言を待っているのだ。
「すごいですわ! こんなに人が……!」
「今回は久しぶりに参加者4ケタ越えらしいですよ」
プレイヤーたちは皆席につき、イベントの直前ということもあってかトウカに近寄るプレイヤーもほとんどいない。
「レギュレーションは確認したか?」
「はい。持ち込める武器、防具は一式ずつ、プレイヤーのスキルは5つまで選択、アイテムの持ち込みは不可ですわね」
アンジュが(トウカに暴かれるまで)やっていたように、鎧の下に別の装備を隠したりといったことは出来ないのだ。
今までに得たスキルを見て最後の確認をしていると、ファンファーレが鳴り響いた。
「お、始まるぞ」
派手な爆発の演出と共に、コロシアムの中心に人影が現れる。
この世界の王という設定の運営アバターだ。
立派な髭を生やし、装飾過多な服装をしているが、トウカには見覚えのある顔だった。
「おー、園城寺の社長さんか。相変わらず一番このゲームを楽しんでるな」
「おとっ……!?」
「おと?」
「い、いえ! なんでもありませんわ!」
(まさかお父様が王様だったなんて……これはますます負けられませんの)
雪夫……もとい王が口を開く。声は加工され、広いコロシアムの全てに響くようになってた。
「よくぞ集まった! 勇敢な冒険者諸君!」
客席から歓声が上がる。
「これより君たちは絶海の孤島で相争うこととなる。与えられた使命はひとつ! 生き残れ!」
(お父様に言われた以上、生き残るほかありません……!)
「さあ、己の武器を選択せよ!」
参加者それぞれの前にウインドウが開かれる。表示された自分の装備一覧から、自分が使う武器と防具、スキルを選択する。
「それでは皆の者、存分にその力を振るうがいい! <World End Battle Royal>開幕である!」
王の声と共に、トウカたち参加者の身体が淡く光り出した。
戦いのフィールドへの転送が始まるのだ。
「いよいよだな。トウカ」
「はい! また後でお会いしましょう、アンジュさん!」
光が強くなり、参加者たちがバトルフィールドへと送られていく。
(新スキルは俺のもんだ……!)
(どさくさにまぎれてツララさんにマスターって呼んでもらえないだろうか)
(え? 杖に仕込んだスキルって持っていけないんですか?)
(トウカとあの女に私の実力を披露してやる……!)
同じ時間、トウカたちからは離れた席。
ツララはクールな表情の裏で、ともすればこの場の誰よりも強い決意を胸に抱いていた。
(この舞台で園城寺に勝つ……!)
そして姫騎士系動画投稿者も、また。
(皆さんに、アンジュさんに、ツララさんに勝って1位になる!)
それぞれの思惑が渦巻くサバイバルが、始まる。
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