第2話 キャラクリですわ
バーチャル空間で燈火が目を開くと、そこにはAdvance Adventure Onlineのタイトルロゴが浮かんでいる、初期設定用の薄暗い空間だった。
『プレイヤー名を入力してください』
音声が流れ、キャラメイクの指示が伝えられる。
「プレイヤー名は……『トウカ』でいいですわね」
本当は家名を入れてプレイしたいところだが、本名フルネームにしない程度には燈火もネットを知っている。
目の前に浮かんだウインドウに名前を入力すると、次に出てきたのは大きな鏡だ。
今は現実世界でヘッドギアにスキャンされた園城寺燈火そのままの姿が映っているが、ここから自分の好きなように外見を変更できるらしい。
せっかくなので日本人らしい黒髪から、ファンタジー世界らしく金髪ロングにしてみた。瞳も碧眼にしたので、これなら一見して園城寺燈火には見えないだろう。
「身長は……そのままでいいですわね。体重は少し軽くしてしまいましょう。あとは……スリーサイズ!? そんなものまで設定できるのですか!?」
目を閉じてたっぷり5分ほど考えた後、燈火はウインドウに手を伸ばした。
(わ、私の目的は動画を見た方にこのゲームを楽しそうだと思って頂くことですから、多少は目を引く要素もあったほうがいいかもしれませんわ! ええ! 決して私がこうしたいわけではなく!)
燈火は少し……そこそこ……いや、かなり胸を盛った。
キャラメイクを終えると、虚空に扉が出現する。あそこから出ればいよいよ冒険の始まりだ。
「と、その前に……」
パントマイムのように手を動かすと、目の前にメニューウインドウが浮かび上がる。
「撮影ボタンは……これですわね」
メニューの端にあるカメラのマークを押した。
ぽん、と音が鳴り、ボールに羽根が生えたようなキャラクターが現れた。
燈火から少し離れた場所に浮かび、大きな目で彼女のことを見ている。
撮影機能をオンにしておくと、ゲーム内の自分の姿が動画として保存できる。このキャラクターは世界観に合わせられた『カメラ』だ。
「さてと!」
父のため、自らに課した使命は3つ。
ひとつ、AAOを楽しくプレイすること。
ふたつ、その姿を撮影機能で保存しておくこと。
みっつ、プレイ後に動画を投稿すること。
「ではカメラさん、よろしくお願いします」
ドアノブに手をかけ――ふと、父が見せてくれた実況動画を思い出した。このままさらりとゲームが始まってもそっけない気がする。
カメラの方を向き、あの投稿者の真似をしてみることにした。
「みなさんはじめまして! トウカと申します! 今日はこのゲーム、Advance Adventurer Onlineをプレイしていきたいと思いますわ!」
これから向かう世界への期待に胸を膨らませて、燈火改めトウカは扉をくぐった。
「さあ、冒険の始まりでしてよ!」