第13話 ギルドの仲間たちですわ
ギルドへの道をアンジュに連れられ飛んでいく最中も、街には背景でないプレイヤーの姿が何人も見られ、その全員がトウカを見て手を振ったり声をかけたりしてきた。
「さすがにトウカ目当てでログインしたプレイヤーは追いかけて来れるようなスキルは持ってねえみたいだな」
プレイヤーたちを振り切ってなんとかギルドにたどり着くと、玄関のドアに、「トウカは不在です」の張り紙がしてあった。
中に入ってきたトウカとアンジュを見て、マスター達が笑いかける。
「トウカ。一夜で有名人だな」
「AAOアクティブプレイヤーは大体見たレベルじゃないですかね? ネットゲームのブログで記事になったのが大きかったみたいですよ。切り抜き動画も拡散されてました」
「数少ないAAOの動画だ。アクティブプレイヤーはそりゃ興味あるだろうよ。おまけにゲーム初心者なのにあの上手さ、綺麗なアバターと声の女の子だからな」
アバターは本当の自分の姿ではないが、それでも容姿を褒められ、トウカは少し赤くなる。
「は、はい……私が知られるのはとても嬉しいのですが……」
トウカは不安そうな顔で玄関の方を見た。
ドアの張り紙を見るに、トウカを探すプレイヤーが何人もここに来たのだろう。
「このままではみなさんに迷惑をかけてしまいますわ……」
バサラはそんな彼女を見て快活に笑う。
「いや、それがそうでもないみたいだぜ?」
マスターとランヴァル、バサラを目線で示す。3人はトウカを見て頷いた。
「姫騎士の鎧の設計図を聞かれたよ。ギルドの仲間になりたいって人も大勢いる」
「僕は杖の作り方を教えて欲しいって人が何人も来ました。これでAAOに魔法使いが増えそうです!」
「俺は何回もPvP挑まれたよ。戦える相手が増えて面白え。トウカちゃん、お前のおかげだよ」
アンジュも背伸びしてトウカの肩に手を回す。
「あたしが誘ったんだぞ? トウカみたいなすげえプレイヤー、簡単に手放してたまるかよ」
「みなさんのご迷惑でないのなら安心しましたわ」
笑顔のみんなを見て、トウカはホッとした。
それから、話しておいた方がいいと思ったので、核心は避けて自分の目的を話した。
「私、ある人からこのゲームがあまり盛り上がっていないと聞いて、なんとかしたいと思ったのです。それで、動画を投稿して多くの人にAAOを知ってもらいたいと考えましたの」
ギルドのメンバーを見て、お辞儀をした。
「皆さんと、このゲームは楽しいのだと伝えたいのです。私、これからもご一緒してよろしいでしょうか?」
ギルドの仲間たちは顔を見合わせ、代表してマスターが答える。
答えはもちろん決まっていた。
「もちろんだ。君はもう僕たちの仲間だよ」




