第12話 想像以上の反応ですわ
「みなさんこんにちは! トウカです! 今回も引き続きAAOで遊びます! どうぞ最後までご覧ください!」
動画投稿をした次の日、トウカはAAOにログインすると、カメラを起動して始まりの挨拶をし、ギルドへ向かう。
その途中、頭上から「おーい」と呼ぶ声が聞こえた。
「アンジュさん!」
声の方を見上げると、屋根の上にアンジュが立っていた。
彼女は黒い鎧をガシャンと鳴らしてトウカの前に飛び降りる。
「よおトウカ。見たぞ、お前の動画」
「まあ! ありがとうございます!」
「結構再生されてるみたいじゃねえか」
「そうでしょうか? それなら嬉しいですわ」
トウカには再生数の基準がよく分からないが、ネット慣れしているアンジュが言うならそうなのだろう。
「どうして屋根に登っていらしたんですの?」
「それは、ほら。ああいうのがいるからさ」
アンジュが指差した方を見ると、数人の男性プレイヤーがこちらに向かって走ってきていた。
「いたぞ! 『ですわ』だ!」
「アンジュもいる!」
「おーい! トウカさーん!」
「動画を見てくださった方でしょうか? アンジュさんも呼ばれてますわよ!」
笑顔で手を振るトウカだったが、すごい勢いで近づいてくる彼らを見て、だんだんと引きつった笑いに変わる。
「ジャスガ上手すぎだろ! どうやったんだ!?」
「本当にお嬢様なの!?」
「ですわって言ってください!」
「わわわわ!?」
いきなり詰め寄られ、トウカは混乱する。
「よかったら一緒に素材集め行きませんか!?」
「僕が作った装備着てください!」
「リアルでもお嬢様って本当ですか!?」
「あの、お気持ちは嬉しいのですが、ご、ごめんなさい、い、一度にそんなに話せませんわ……」
ふらふらと後ずさりしたトウカの手を、アンジュが掴んだ。
トウカに詰め寄っていたプレイヤーに向かって悪戯っぽくにやりと笑う。
「悪いな。トウカはあたしと遊ぶ先約があるんだ」
言うが早いか、そのまま手を引いて走り出した。
「な? こうなるから道を歩いてなかったんだ!」
トウカの手を掴んだまま、何メートルもある屋根の上にジャンプした。
そしてギルドに向かってジャンプを繰り返し、屋根の上を飛んで進む。
トウカから悲鳴に近い声が上がる。
「わぁぁっ!? 飛んでます! 飛んでますわアンジュさん!」
「あたしのスキル『八艘飛び』だ。手を放すとトウカは落ちるから気を付けろよ!」
下を見ると、トウカとアンジュを見て手を振る者や声を上げる者が見えた。
「VRMMOで有名人になるとこうなるんだ! 喜べよトウカ、今なら探さなくても人に会えるぞ!」




