チョコレート・ステーションで(お菓子の家で)、あなたも
第7回 アイリスNEOファンタジー大賞の締め切り時間、ギリギリに完成して、投稿いたしました。
よろしく、お願いします。
この建築物は、童話の
「お菓子の家」
を、モデルにして作られた。
ちなみに
…お菓子の家とは
クッキーの屋根、
マカロンのドアノブ、
チョコレートの壁、
といった、これら建物の外側を構成する部分だけでなく、
ロールケーキの椅子
綿菓子のソファー
など、建物の内側に置かれた家具も、
お菓子として食べることが可能な場所だ。
…しかし普通は、家を食べることは、絶対に出来ない。
だが、お菓子の家では、その
「今まで出来なかったことが、可能になる」
ので、間違いなく、お菓子の家は、
スゴい場所だ。
…そんな
スゴい場所を目指して、
この
「チョコレート・ステーション」
という名称の、
「お菓子の家」
は、作られた。
チョコレート・ステーション
そこには今、
私こと
「油田 ユーコ」
という名前の女性が、
初めて足を踏み入れている。
その目的は、「お菓子を食べる」こと。
お菓子の家に来たら、誰でも実行してしまう、当然かつ普通の目的である。
そんな私が現在いる場所の、このチョコレート・ステーションという名称の、お菓子の家は、噂や口コミ(くちこみ)では、非常に評価が高い。
…ちなみに、その噂や口コミだと
「このチョコレート・ステーションという場所を構成する、お菓子は
どれも美味しくて、
何を最初に食べれば良いのか
迷ってしまう」
らしい。
これらの噂や口コミに誘われて、
私こと油田 ユーコは、期待に心と体を弾ませて、チョコレート・ステーションに、今から
1時間以上も前に、やってきた。
…でも、
こうして来てみたらチョコレート・ステーションに関しての
「噂や口コミは、本当だったこと」
を、身をもって思い知る。
それは
私こと油田 ユーコは、チョコレート・ステーションという名称の、
お菓子の家に来てから、
「もう1時間以上も経過している」
のに、まだ
「最初に食べる、お菓子を決められない」
で、いること。
クッキーの屋根、マカロンのドアノブ、綿菓子のソファー、ロールケーキの椅子…など
どれも美味しそうで、どれから食べていいのか、迷ってしまう。
こういう時は、知り合いや恋人に、相談すべきだが、
残念ながら、どちらにも相談できない。
チョコレート・ステーションには現在、
「他人の男性が一人いる」
だけで、
「私の知り合いは、誰もいない」
のである。
…それに、
「恋人の男性」という存在は、
つい最近、私こと「油田 ユーコ」は
恋人の男性の方から一方的に、別れを告げられており、
今の私に恋人という存在は、
誰もいない。
これらの諸事情により、私こと油田 ユーコには現在、
相談する相手が誰もいないため、相談による解決は、不可能である。
だから、自分自身で決めようと
している最中だ。
でも
私こと油田 ユーコは、昔から
「優柔不断で決断力がない」
ことで、有名だ。
…この優柔不断で決断力のないことが、災いして
「恋人の男性から別れを告げられた」
ことが、つい最近に発生している。
本当に辛かった。
恋人の男性と別れたことは…
しかし、
いつまでも辛いままでは、いない。
私は、恋人の男性と別れた辛さから立ち直るために
噂や口コミで評判のチョコレート・ステーション
という名称の、お菓子の家に足を運び、
「美味しい、お菓子を食べることで、気晴らしをする」
ことにした。
そうすれば私は、
辛いことから立ち直れる。
…はずだった。
けれど
そのチョコレート・ステーションに来てみたら、私こと油田 ユーコは、再び自分自身の優柔不断で決断力のない辛さと、向き合うことになってしまった。
…1時間以上も、経つのに、未だに決められないことである
それが現在の、私が置かれた状況だ。
正直言って、こんな状況を望んで、チョコレート・ステーションに来たわけではない。
だから今日は、このまま帰ることにした。
まだ何も食べていないけれど、今は帰ることが、この状況では一番良い。
そう思いながら私が、
帰り支度に取り掛かった時、
突然
「チョコレートを手に持った男性」
が、
「油田 ユーコの視界」
に入ってきた。
…この男性、見覚えがある。
私が覚えている限りでは、
この突然、油田 ユーコの視界に現れた男性は、チョコレート・ステーションに1時間以上前から、
「一人だけいた他人の男性」
に間違いない。
そう断言できる根拠は、
「突然現れた男性」と、
「一人だけいた男性の外見」が、
全く「同じ」こと。
両者とも
「チョコレートのような髪と瞳の色」を持ち、
「綿菓子のように柔らかで優しい物腰」で、
「焼きたてのクッキーのように整った容姿」、
など、どの部分をあげても
クレームという名称の苦情が、つけられないほど
「ステキな見た目」を
している。
それに、私こと油田 ユーコは、このチョコレート・ステーションに来てから1時間以上、
一人だけいた男性の存在が、気なって、ずっと目で追っていた。
目で追っていた男性は、今こうして、
「視界に突然現れた男性」として、私こと油田 ユーコの
目の前にいる。
突然、目の前に現れて驚いたけれど、間違いない。
ちなみに、この男性、一瞬だけ私の視界から消えていた時が、あった。
その原因は、この男性が
チョコレートの壁に隠れるように移動した結果
私の視界がチョコレートの壁によって、遮られたこと
が原因である。
だけど、それは本当に一瞬のことで
こうして今、男性は、私の視界にチョコレートを両手に持ちながら、現れた。
…ずっと目で追っていたけれど、こうして突然、現れたので私は現在、驚いている。
しかし、この男性は悪くない。
私を初めから、驚かすつもりで、行動を起こしたわけではないことを
ずっと目で追っていたから、知っている。
男性は、このチョコレート・ステーションで
「当たり前のことをしている」
だけであった。
当たり前の行動とは、「お菓子を食べる」ことだ。
チョコレート・ステーションは、お菓子を誰でも自由に、好きなだけ食べられ、料金は無料、そして何よりも、美味しい。
そういう場所だ。
だから、この場所で、お菓子を食べることは、当たり前である。
それなのに、私こと油田 ユーコが今、
驚いている理由は
この男性が、
「チョコレートの壁という、お菓子を食べる」
際に行った、一連の動作が、
「たまたま私を驚かせる結果になった」
だけのことで、この男性に悪意は存在しない。
ちなみに、この男性が
チョコレートの壁を食べる際に行った、
一連の動作は
まず、この男性は
自分自身の手を伸ばしてチョコレートの壁を掴み、
食べやすい大きさの分だけ剥ぎ取り(はぎとり)、
剥ぎ取った(はぎとった)チョコレートの壁を自分の口元へと運び、
ワザとらしく口を大きく開けたのちに、
チョコレートの壁を口の中に入れる
…という内容が、男性がチョコレートの壁を食べる際に
行った全動作である。
このようにして、この男性がチョコレートの壁を食べると
チョコレートの壁には、
男性が食べるために剥ぎ取った分だけ、
「穴や隙間」
が空く(あく)。
そうやって生まれた穴や隙間を通して、男性は
油田 ユーコの視界に、再び入った。
…これが現在の、私と
突然、視界に現れた男性との
状況である。
ちなみに
男性と私こと油田 ユーコの間には、
たった「30センチメートルの距離」しか、
空いていない(あいていない)。
しかも
男性と私は、お互い向き合っており、手を伸ばせば、相手の顔や体に、触れてしまう。
ものすごい近距離である。
…しかし、そんな状況にも関わらず
この男性、
たった30センチメートル先で
突然、男性の視界に現れた油田 ユーコに対し
全く視線を向けないまま、
さっきと同じように、
チョコレートの壁に手を伸ばして、チョコレートの壁を剥ぎ取り
剥ぎ取ったチョコレートの壁を、口元に寄せてから
食べていた。
ちなみに先ほど、男性が剥ぎ取ったチョコレートの壁は、完食されており、もう残っていない。
今、
こうして男性が食べているチョコレートは、彼という存在にとって
「おかわり」
である。
その証拠に
次から次へと、チョコレートの壁を、剥ぎ取っては、休むことなく口に入れ、食べ続けていた。
男性は今、「食べること」しか、考えていない。
おかわりを今も、続けていることが、その証拠だ。
そして目の前にいる私こと油田 ユーコには、まったく視線を向けていない。
…だが
私こと油田 ユーコは、
今も、おかわりを続ける男性から目が離せず、
ずっと見続けていた。
それは、この男性の素敵な見た目だけが理由ではない。
男性から私が、目を離せない理由は
「彼がチョコレートの壁を食べていく様子」
である。
この男性、チョコレートを口の中に入れて味わい出すと
「両手を頭上にあげてから背伸び(せのび)」をしたり、
「円を描くように首と上半身を回転」させたり、
「ガッツポーズを行う」など、
とにかく色々な「リアクション」を行うので、
見ていて飽きがこない
のである。
…改めて説明するけれど、この男性は、チョコレートを食べているだけで、
路上パフォーマンスを、しているわけではない。
それは見ている私が、一番理解している。
男性は、本当にチョコレートの壁を、食べているだけで、それ以外のことは、していない。
でも
どうして、チョコレートの壁を食べただけで、
この男性がリアクションを行ってしまうのか
は、目の前で見ている私でも、全く分からない。
この場合、普通なら
「どうしたんですか?」
と声に出して聞くべきだけど、
チョコレートの壁を、夢中になって食べる男性に声をかけたら、邪魔をしてしまう。
そうなった場合、男性のリアクションも止まってしまい、見る楽しみが、なくなる。
だから、声をかけることなく見続けていた。
でも
どうして、この男性が私の、
「急に目の前に現れて、
チョコレートの壁を食べだし、
おかわりとリアクションを続けている」
のか、全くわからないので、逆に気になってしまう。
…気になるから目が離せないけれど、見ていて、わからないものは、
これからも見続けたとしても、
やっぱり分からない。
だから
私こと油田 ユーコは、思い切って
「チョコレートの壁を食べる」
ことにした。
この男性に対する疑問は、この男性がチョコレートの壁を食べ始めたことから、始まっている。
つまりチョコレートの壁が原因だ。
その原因を、私こと油田 ユーコは、自分の体を張って確かめることにした。
これこそがチョコレートの壁を、
食べる理由だ。
この理由に従って私は、
目の前にある
チョコレートの壁に手をかけ、
食べやすい大きさの分だけ剥ぎ取ったのち、
そのまま口元へと運び、
ワザとらしく口を大きく開けたのちに、
チョコレートの壁を食べた。
こうして私の口の中に入ったチョコレートの壁は、口の中に入れる前の硬さを、少しずつ失いながら、
油田 ユーコの全身へと浸透していく。
すると
自然に私の体が、
「両手を頭上にあげてから、背伸びを行った」
ことに気づく。
つい、さっきまで
私の口元にあった両手が
視界から消え、
私の頭上に移動していく様子を、見ていた
ので、間違いない。
今この瞬間、私こと油田 ユーコは、背伸びをしている。
でも
私こと油田 ユーコは
「背伸びをする」
という行動を、予め決めていなかった。
それなのにチョコレートの壁を食べたら、
勝手に体が動いて、背伸びを、していたのだ。
どうして勝手に体が動いたのは、わからない。
分からないからこそ、
また
チョコレートの壁を、食べてみる。
体が勝手に動いた原因は、
チョコレートの壁を食べたこと以外に、考えられないからだ。
だから、またチョコレートの壁を剥がして、口元へと運び、そのまま食べてみる。
そうしたら今度は、私こと油田 ユーコが
「円を描くように首と上半身を回転させている」
ことに気づいた。
首と上半身が回っている時、その動きに合わせて、
「私の視界が円を描くように動いた」ので、間違いなく
油田 ユーコは、
チョコレートの壁を食べてことで
また勝手に体が動いた
ことに気づいた。
チョコレートの壁を食べて、2回も勝手に体が動いたのは、
どう考えても、
チョコレートの壁を食べたことが原因だ
と考えて、間違いない。
…でも
気づいたことは
それだけじゃない。
たった30センチメートル先で、私と向き合っていた
「男性の表情が、変わっていた」
ことである。
そのことに私こと油田 ユーコは、チョコレートの壁を、おかわりした際に
視界が円を描くように動いた瞬間、男性の表情が
私の視界に入ったことで、気づいた。
さっきまで何度もチョコレートの壁を、おかわりして、食べるたびにリアクションをしていた男性は、
今は油田 ユーコを見つめている。
それ以外のことは、何もしていない。
チョコレートの壁を、おかわりすることもなく、
リアクションを起こすこともないまま、
私のことだけを、見つめていた。
でも、ただ見つめているだけでは、ない。
男性の表情は今、
今まで見たことがない笑顔
に変わっていた。
そんな男性を見て、私こと油田 ユーコも、おかわりをする手を止めて、見つめ返す。
今まで見たことがない笑顔が、気になった。
だからである。
すると
目の前にいる男性は、
急に全身の力が抜けたかのように、
目の前にあった
「チョコレートの壁に、もたれかかって」
しまう。
この光景を見て、私は驚いた。
突然の出来事だからである。
そんな私を見ながら
男性は
「チョコレートの壁を気に入ってくれて、
本当に良かったよ。
ホッとした…
チョコレート・ステーションに、あなたが来てから1時間以上、お菓子を全く食べないから、ずっと心配していた。
どうして、だろう
…って
それで気になって、あなたを見ていたら、
お菓子を食べない理由がわかった。
チョコレート・ステーションの、お菓子は全部、美味しいから、どれから食べれば良いのか、迷っている。
そう思ったから、行動に出た。
…だけど
ちょっと驚かせて、ごめん。
でも、あなたが美味しく、お菓子を食べてくれて、本当に良かった。」
という内容の言葉を、
男性は声に出して、私に言ってくれた。
長い言葉である。
そんな
男性の長い言葉を聞いて、私こと油田 ユーコは、わかってしまった。
私が分かったこととは、この男性が
どうして私に対し、様々な行動を行ったのか、
その理由である。
それは…
この男性という存在は、
一番最初にチョコレート・ステーションに来た時、私こと油田 ユーコのように、
どれを最初に食べるかを迷って、
決められないことが嫌になり、
お菓子を食べないまま帰ろうとした
ことが、ある人
である。
…そんな過去を持つ人だから
今日この日、チョコレート・ステーションで
「かつての自分と同じ状況の、私こと油田 ユーコを目撃して、
この男性は放っておけなくなった。
だから
様々な行動を起こし、私こと油田 ユーコが
チョコレート・ステーションで一番初めに食べる、お菓子を
「油田 ユーコ自身によって、決められる」ように
手助けしてくれた
のである。
これまでの男性が行った行動や、男性の長い言葉を聞き、
私は、そう捉えることにした。
そうでなかったら、他人同士の関係でしかない私のために、急に目の前に現れて、チョコレートの壁を食べだし、おかわりとリアクションを続けていく、なんてことは絶対に、しない。
少なくとも私は、そうだ。
でも、この男性は、それをした。
他人同士の、私のために
…である。
だけど
ここまでの情報は、あくまでも私の推測で
正しいのかは、わからない。
でもチョコレートの壁を食べたら
あまりにも「美味しくて勝手に体が動き、リアクションをとった事実」は
間違いない。
それに
「チョコレートの壁が、美味しかったこと」
そして
「食べた後に無意識に体が動いたこと」は
全部、本当のことだ。
もし仮に、
チョコレートの壁が、美味しくない場合だと、私は
おかわり
を、しない。
「おかわり」という行動は、
美味しいから、まだ食べたいという
事実を証明するための
「動かない証拠」だ。
それを私に教えてくれた恩人こそ
この男性で、
私こと油田 ユーコは、この男性に対して
思わず
「ありがとう」
と声に出して、目の前の男性に、感謝の言葉をかけた。
私の素直な気持ちである。
この言葉を聞いて、男性は急にチョコレートの壁を剥がし、自分の顔を隠すようにして、食べだした。
気になる。
そう思った私は、この男性を見るために、男性の顔が見える場所へと移動した。
すると、男性は再び顔を隠す。
でも一瞬だけ、男性の顔を見たら
「チョコレートの壁が溶けるくらい、真っ赤な顔」
をしていた。
この男性は「恥ずかしがり屋」なのかもしれない。
だから私が、チョコレートを、おかわりした瞬間に安心して
体の力が抜けて、チョコレートの壁に、もたれかかった
のだろう。
恥ずかしがり屋を我慢していたことが原因で、そうなった。
そう考えた方が納得がいく。
だとしたら、
そこまでして、他人同士の関係でしかない私を、この男性は助けてくれた。
ことになる。
…この男性、
「スゴい人」だ
そう素直に、私は思った。
だからこそ、また言わせて欲しい。
本当に、ありがとう。
チョコレート・ステーションに来て、本当に良かった。
…以上が
私こと油田 ユーコが、初めてチョコレート・ステーションという名称の、お菓子の家に来て、
得た体験と感想の全てである。
ただ単に、
お菓子が美味しいだけではなく、
チョコレート・ステーションの、お菓子と同じくらい
スゴい人にも出会えて、本当に良かった。
もちろん気晴らしも出来たので、最高である。
…そんなチョコレート・ステーションに関して最近、
新しい噂と口コミ
が広まっている。
この
新しい噂と口コミの内容は
「チョコレートの壁」
を通して、
「初めてチョコレート・ステーションに来た、優柔不断で決断力のない女性」
と、
「元々は優柔不断で決断力のなかった、恥ずかしがり屋の男性」
が、現在
「恋人同士に、なっている」
ことだ。
他人事とは思えない、噂と口コミである。
もしかしたら、この新しい噂と口コミに登場する男女とは、
私こと油田 ユーコと、
つい最近、
「チョコレート・ステーションで知り合った、私の新しい恋人の男性」
について、
なのかもしれない。
どちらにしても、またチョコレート・ステーションに行って、お菓子が食べたくなった。
でも次は、
チョコレート・ステーションと、
お菓子の美味しさ、
そして
優柔不断で決断力のない私でも、決めることができた
要因を作った
スゴい人
こと
油田 ユーコの新しい恋人の男性と
一緒に
最後まで、読んで頂き、ありがとうございます。