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毒蜘蛛令嬢

快適籠城生活を金と銀のアイドル(王太子殿下と公爵子息)に取り上げられちゃったけど…今は別の至福の時を噛み締めておりますよ。


「はぁ~この中のマリダのとろみ…たまりませんねぇ」


私は今、ユタカンテ商会製のピンク色のパーテに囲まれて、ラグの上に座り…女子会の真っ最中だ。


女子会メンバーは私、クラバッハの王宮内メイド長のクイーナさん、メイドのカリア、そして同じくメイドのルイナーデの4人だ。


メイド長のクイーナさんは結構な甘党みたいで先ほどからマリダ(つまりはチョコの事だけど)を包んだ『フォンダンショコラ』をお召し上がりになって喜んでおられる。


何故、パーテに囲まれて女子会を開催しているかと言えば…このパーテは王太子妃の部屋の中に設置されているからだ。何故こんな状況かと言えば


猛毒蜘蛛令嬢こと、ケイトリーサ=バウンテラス公爵令嬢との直接対決を避けたいらしいエイシュリット王太子殿下が、一人にしないでくれ~と子犬攻撃をしてきたせいでアリウム様とフォーデ様を巻き込んで、金銀黒のアイドルでその令嬢をお出迎えする段取りとなったんだけど…


何故かその席に私も参加しろ、とエイシュリット王太子殿下が言ってきた。それを聞いたフォーデ様がまた、なぁにぃ?みたいな顔をしてきて素早く同席を却下され…それでも


「アイリエッタ姫ぇぇ!」


とウザく叫ぶエイシュリット王太子殿下に負けて、渋々妥協案として部屋の中にパーテを置いて、その中に私は隠れて待機する…で落ち着いた。


うぜ~マジうぜ~


エイシュリット王太子殿下達が座っているソファセットを盗み見れる位置に、パーテを箱型に立てて設置していき、囲った所にレデスヨジゲンポッケの中から出してきてラグを床に敷いた。


王太子妃の部屋の中にパーテの囲い…胡散臭過ぎて却って怪しいと思うんだけどな…


そして折角パーテで囲って部屋っぽくしたのだからと、ローテーブルを出してレイゾウハコも出し、更に魔力コンロを出してお茶を沸かしクッキーを食べていると、そこへメイド長とカリアとルイナーデが顔を覗かせた…と言う訳なのだ。


「あ、カリア…これ食べる?」


と、言って買い置きしていた市販のモルのピリ辛フライを食器棚から出してきた。はっきり言っちゃうとこのお菓子、じゃがいもチップスのカレー味なんだよ!


ガンデンタッテの特産品の香辛料『コンデリー』は、カレーのスパイスに味が似てるんだよね。それに目を付けたのが異界の迷い子の方で、数十年前にはカレー風味の食品が世界中で大ブームになったらしい。今では定番だけどね。


「この辛味っ手が止まりませんよね!」


カリアもルイナーデもキャッキャしながらお菓子を摘まんでいる。


因みに…パーテの隙間からエイシュリット王太子殿下が私達の事、時々覗いているんだよね~イヤ怖いわっ!排水溝から覗く〇エロかよっ!


「ケイトリーサ=バウンテラス公爵令嬢お越しになられました」


「!」


キャッキャしていた私とメイド達はその声でお喋りを止めて、エイシュリット王太子殿下の方向へ聞き耳をたてた。私はパーテを少し動かして室内を覗き込んでみた。


そして侍従の男性に促されて入ってきたご令嬢を見て…なるほどなぁ~と思ったね。


つまりだね、男の人の好みって割と固定されている気がしているのだよ。


あくまで私が異世界で18年、こっちの世界で16年生きてきた際に、男性に直接聞いてみたりした結果から導き出した答えだけど…大抵の男の人の女の子の好みって


その1、仕草が可愛い

その2、スッピンが可愛い

その3、細かな所に気配りが出来る

その4、メシウマ料理が作れる

(あくまで私調べです)


大多数の男子は可愛い系女子が好きなんだよな~。人によっては細かなフェチはあるだろうけど、この辺りの萌えを押さえている女の子は大体モテる。


何がぁスッピンが可愛い女がいいな~だよっクーリエル兄様っ!それはスッピン『風』なだけであって、化粧下地とかコンシーラーとかがっつり塗ってて、ソレ…皮膚呼吸出来るのか?ってくらい厚塗りしてるんだよ?知ってるか?ああん?


それに知っているか?ひとり暮らしの男の所に手料理を差し入れてる女で、自分の母親に作ってもらった料理を持って行ってる女も中にはいるからなっ?見極めろよ?結婚してから痛い目見るぜ!


……話が逸れたね。とにかくだ…今、エイシュリット王太子殿下の前に現れたケイトリーサ様は、派手なオレンジ色のドレスで(お前はブルべだ!)化粧はがっつり厚化粧、レッド系のグロス(何度も言うがお前はブルべだ!)で、ブルーブラックの髪にブリザードブルー色の瞳…典型的な悪役令嬢のご容姿のきつめの美人だった。


つまり、ケイトリーサ様は恐らくだがエイシュリット王太子殿下の好みの真逆のタイプだと思われるのだよ。


ホラ、エイシュリット王太子殿下の手紙にも書いてあったじゃない?


長く美しい髪を持ち、透き通るような肌…大きな瞳…心根は穏やかで優しく…だったかな?の可愛い系女子の詰め合わせみたいな女の子が今カノなんでしょ?それがもろタイプなんだと思うんだよね。


ケイトリーサ様は~重たい髪色は地毛だから仕方ないにしても、何でまたそんなボリューミーな盛り髪してんのか謎な髪型で、似合ってねーフリフリのオレンジ色のドレスで~笑顔が好戦的過ぎるんだよな。


「エイシュリット王太子殿下からお呼びと伺い、参上致しましたわ」


おおっ…キンキンと響く声だね。ご挨拶は流石に綺麗な作法だね。フムフム…


「急に呼び出して済まないな…実はガンデンタッテからお越しのアイリエッタ王女殿下が…」


と、エイシュリット王太子殿下が言いかけた時に、扇子で口元を隠す悪役令嬢こと、ケイトリーサ様。おいおいっ!ほくそ笑んでるの丸分かりだしっ!もっと扇子で隠せよ!


「アイリエッタ王女殿下がどうされましたの?」


嬉しみが溢れすぎて声が弾み過ぎだよ、ケイトリーサァ!


「……」


こっちからは金銀黒のアイドルの顔は見えないんだけど、3人共魔質がオラついているのが視える。まさかフォーデ様?ケイトリーサ様の前で例の、なぁにぃ?みたいな変顔しているんじゃないだろうね?


「アイリエッタ王女殿下が自ら作られた菓子を差し入れてくれてな。ケイトリーサ嬢もどうだ?」


エイシュリット王太子殿下がそう言うと、あからさまにケイトリーサ様は目を鋭くした。自国の王太子殿下を見る目じゃねーけどな。


「その菓子を作られた?まあ、オホホ…王女殿下自ら調理場に入られるなんて下賤ですこと…」


うわっめっちゃ言葉悪っ…。エイシュリット王太子殿下の御前で他国の王女殿下である私への暴言?すげぇい…。言いながらもケイトリーサ様から発せられる魔質が嫌悪や嘲りっぽい魔力波形に変わっていく。


はぁ…なるほどね。アリウム様が、モンドリアントベアと称したのも何となく分かるわ。あの真っ赤な唇から毒入りの糸を出してきそうだもんな。


エイシュリット王太子殿下はそんな暴言を気にも留めないのか、テーブルの上に置いてあるお菓子を口に入れて咀嚼しているようだ。私のクッキーから殿下の体に魔力が微量ながら入って流れて行くのが視える。


まあ本当にそのお菓子は私の作ったものなんだけどね。さっき排水溝から覗くような王太子殿下を薄気味悪く思って、苺っぽい果肉入りのクッキーとチョコチップ入りクッキーをあげたんだよね。


IT(それ)は排水溝に戻れよ!


ついうっかりソレ呼ばわりしてしまった…エイシュリット王太子殿下はクッキーを食べ終わると


「アイリエッタの作る菓子は美味いなあ」


そう言いながらチラチラこちらを見ている。おい?何故いきなり呼び捨てなの?私、許可したっけ?それにこっち見んな!ここに居るのがバレるだろうが!


「殿下、こちらを意識しすぎですわ」


私と一緒に覗き込んでいたメイド長のクイーナさんは低い声で呟いている。


ケイトリーサ様は唇を噛み締めて不敬にもエイシュリット王太子殿下を睨んでいる。すると銀のアイドル、フォーデ様が


「あれ?ケイトリーサ嬢は召し上がらないの?美味しいよ、この菓子」


と、ケイトリーサ様を更に煽っている。今更の疑問だけど、銀のアイドルは腹黒なんだろうか?


「ところでケイトリーサ嬢にお聞きしたいのだが…最近、高位貴族から下位貴族への嫌がらせや恫喝ともとれる悪辣な行いをしている者がいると報告を受けたのですが、ご令嬢は何かご存じですか?」


ケイトリーサ様は扇子で口元を隠すと「さあ?」とエイシュリット王太子殿下に素っ気無く答えた。


「しかしそんな悪辣なことをしている者を見かけたら私が強く叱責しておきますわ」


おいおい…あんたがしゃしゃり出てどうするんだよ?見つけたらホウ・レン・ソウだよ。ああ、分かった!ここでもケイトリーサ様は男受けゼロな対応をしていると、気が付いたよ。


こう言っては何だけど…たかだか公爵家の令嬢というだけの立場なのに、貴族の頂点に立って仕切ってる感満載に出しているのは、まるで自分が令嬢のトップだよ?とアピールしていることに他ならない…


さあ、どうするのかな金銀黒?


「そうだな…そんな悪辣な者なら叩けば色々と埃が出そうだな、アリウム、すぐに調べて来てくれ」


エイシュリット王太子殿下がそう言うとケイトリーサ様は一瞬、腰を浮かしかけた!


思わず吹き出しそうなったら、私の後ろでメイド長も吹き出しそうになっていた。カリナは結構大きな声で笑いかけていた。大丈夫だよ?このパーテ内は消音魔法をかけているから存分に笑いなよ。


「まあまあケイトリーサ嬢、ゆっくりとお茶でも飲んで寛いでいてくれ。悪辣な者の交友関係や悪辣なことに使ったであろう金銭の流れを今、調査しているからね」


フォーデ様が嫌味たらしくそう言うと、ケイトリーサ様は唇の端を引きつらせている。


アリウム様は静かに部屋を出て行かれた。さあケイトリーサ様、大ピンチだよ?


「私はケイトリーサ=バウンテラス公爵の者ですよ?こんな辱め…お父様に申し付けますよ?」


あはははっ!自分で悪い奴ですよと自己紹介しちゃっているよ!


その悪役令嬢の自己紹介を聞いて、金と銀のアイドルは同時に笑い出した。


「そうか、辱めか…分かった。バウンテラス公爵にそう申しつけ泣きついてくるがよい」


エイシュリット王太子殿下の言葉に私もメイド達も仰天した。だ、大丈夫なの?申しつけられちゃってぇ!?


暫く唖然としていたケイトリーサ様だったが悪役令嬢の役目?を思い出したのか不敵な笑みを浮かべた。


「フフ…随分と辛辣な物言いですわねぇ…宜しいですわ。お覚悟なさいな」


まるで悪役令嬢のソレである。いや…まごうことなく悪役令嬢なのでしょうけど…


ケイトリーサ様は足音を高らかに響かせながら部屋を出て行った。


ケイト姐さんお疲れっす!真の悪役令嬢の悪役っぷりを拝見させて頂きましたー!


私は慌ててパーテの中から出て、エイシュリット王太子殿下の側に近付いた。


「あのままケイトリーサ様を帰らせて良いのでしょうか?」


私がエイシュリット王太子殿下に声をかけると殿下は少しふんぞり返って答えた。


「モンドリアントベア女の後をアリウムに尾行させている。今頃、証拠隠滅をどうしようかと作戦でも練っているのではないかな?」


なるほどね。あれほどソワソワしていたから今頃、必死になってるかもね。


それはそれでいいんだけど…


「私の名前をいつの間に呼び捨てに?」


エイシュリット王太子殿下の肩がビクンと跳ねあがった。


「まあまあ~その話は後で、ちょっとお話があるのでアイリエッタ王女殿下は座って頂けますか?」


フォーデ様がそう言いながら、立ち上がってソファに座るように私を促してきた。


ん?エイシュリット王太子殿下とフォーデ様の魔質が少し変化した。ちょっと緊張している?


パーテの中から同じく出て来たメイド長とカリア達が冷めたお茶を片付けて新しくお茶を入れ直してくれた。


「アイリエッタ王女殿下は我が国、クラバッハの建国の歴史はご存じだろうか?」


エイシュリット王太子殿下の言葉に私は頷いた。


クラバッハは建国100年ほどの新興国で、前ダバッテイン帝国を倒した後に興した国だ。確か…エイシュリット=イトラ=クラバッハ王太子殿下の軍人だったお曾祖父様がクーデターを決行して腐敗していた帝国打ち倒して初代国王陛下に就いた…のよね?


エイシュリット王太子殿下にそのような説明をすると、殿下は何度も頷いておられた。


「うん、大体そんな感じだ。そのダバッテイン皇帝及びその一族の治世は経済も政権も腐敗していて、一族どころか大多数の貴族諸侯は…ほぼ腐敗の恩恵を受けていた…と言ってもおかしくない状態だったんだ」


うん、それも軽くは近隣諸国の歴史として教えられている。私が頷くとエイシュリット王太子殿下も頷き返された。


「曾お祖父様…初代クラバッハ国王陛下は腐敗の小さな芽も全て潰していった。つまり貴族の粛清だ」


「!」


「大規模粛清で…高位貴族はほとんど国から消えた。その後に残った僅かな下位貴族と商家…大商人。それが今、爵位が上がり高位貴族位を拝して存在している…フォーデも元々伯爵家だ。私は元軍人の曾孫だし、それに元々曾爺様は伯爵家だ」


これは…何となく読めてきたぞ。さっきの毒蜘蛛令嬢…妙に偉そうだし、何だか自分が一番偉い的な魔力を出していたもんね。


「もしかするとケイトリーサ様は由緒正しき高位貴族の家系なのでしょうか?」


「そう正解」


エイシュリット王太子殿下はニヤリと笑われた。おや、アイドルのニヤリ顔頂きました!


「つまり彼女…バウンテラス家は唯一、旧ダバッテイン帝国時代から続く公爵家の血筋なんだ」


それで自国の王子殿下に対して上から目線なんだ。


「本当は爵位返上する予定だったんだよね、バウンテラス家。でもイシュの曾爺様があまりにも粛清し過ぎると、統治が難しくなるとして領地経営が順調だったバウンテラス公爵家を残した訳。それが今のあの状態を招いてる…」


フォーデ様の補足説明に先程のブルベ毒蜘蛛の姿を思い出す。


旧ダバッテイン帝国の公爵家の矜恃、傲り、自分は選ばれた者…所詮は成り上がりの元伯爵家の王太子殿下。伯爵家のくせに…自分より下位のくせに…。


ケイトリーサ様がエイシュリット王太子殿下とフォーデ様に抱いている感情としてはこういう所だろうか?


「ケイトリーサ嬢が私の妃候補の筆頭だったんだ。まあ血筋的には何せ彼女は公爵家の人間だし?自分が嫁に行ってやる…ぐらいの見下した感覚だったんだろうね。それが…建国3000年の由緒正しきガンデンタッテ王国のアイリエッタ王女殿下が嫁いで来られた…」


なるほどな〜そりゃ口から毒も吐くわなぁ。


「アイリエッタ王女殿下は巻き込むつもりはなかったんですよ…」


エイシュリット王太子殿下は悲しそうな顔をしながら、キラキラ魔力を曇らせた。


「貴女を危険には晒したくはない…だから…手紙を…」


手紙?ああっ!そうかっ…今分かったよ!キラキラ星人はあの毒蜘蛛令嬢から『運命の相手』の令嬢を守りたかったのだね!


そうだよっもしかしたら…あの毒蜘蛛令嬢からすでに今カノが、嫌がらせやイジメとかされてるんじゃない!?あるよっ有り得るよね?


「あのような手紙を書いたのは…貴女を危険から守りたい一心で…」


エイシュリット王太子殿下の言葉に更に確信を得た。


そうかっエイシュリット王太子殿下はガンデンタッテの自称守護神の私の守護力で『運命の相手』をあの毒蜘蛛令嬢から護って欲しいんだね!そうだよね!?


「でも安心して欲しい…貴女は私が守っ…」


「お任せ下さい、エイシュリット王太子殿下!ガンデンタッテの守護神、このアイリエッタが必ず運命の相手の今カノ…貴方の愛しの令嬢を全力で護って差し上げますわ!」


「てあ……え?な……へ?」


私はテーブルに身を乗り出して、キョトンとするキラキラ星人の手を握った。


どさくさ紛れにアイドルと握手しちゃった〜!指長ーい!爪の形、綺麗だね。流石、指先まで綺麗とはアイドルは違うね〜!手はゴツゴツしてるね?剣士の手だね。


「私がエイシュリット王太子殿下と運命の相手様との愛を護ってあげるから、任せてね」


よーしっ!今後の目標と敵?が明確に分かってきてテンション上がってきたぞー!


打倒っ悪役毒蜘蛛令嬢っ!護れっ殿下の愛しい令嬢っ!


エイシュリット王太子殿下は私の決意表明を聞いて安心したのか、フォーデ様の肩に抱き付いて泣いてるみたい。


泣くほど嬉しかったんだね〜怖かったよね。正直、キラキラ星人に抱き付かれてみたいなぁ〜とか邪なことを考えながらエイシュリット王太子殿下に声をかけてみた。


「今後は私を頼りにして下さいね?だって一応…婚姻するお相手ですし?」


エイシュリット王太子殿下の目から涙がブワッと零れた。そして、念願のっキラキラ星人からのハグがやって来ましたーー!


ヤバーい!殿下めっちゃ良い匂い!お父様の加齢臭やお兄様達の汗臭い酸っぱい臭いと全然違うよ!?流石、アイドルは匂いすらも違うね!


殿下の魔力、気持ちいいね。優しくて温かくて心地良い。確か魔力が温かいと感じる人同士は、魔力相性が良いんだってね。


「こら〜っイシュ、俺も居るんだ。いい加減にしろ」


銀のアイドル、フォーデ様がツンツンした雰囲気でそう言ってきた。おや、そういえば銀のアイドル様の抱き心地も確かめておきたいかも?


エイシュリット王太子殿下は凄い勢いで私から体を離した。あ〜アイドルの体が離れていく…


自分で言ってて結構な変態発言だと思うけど…よーし、銀も来いや!


「フォーデ様も頼って下さいね?」


そう言ってちょっと両手を広げて来い来い〜みたいな感じを出すと、フォーデ様はなぁにぃ?みたいな変顔をしていた。そして、エイシュリット王太子殿下が小さく悲鳴を上げて後ろに引っくり返っちゃった!


どうしちゃったの!?


慌ててまた白目を剥いているみたいなエイシュリット王太子殿下を抱えると、殿下は私に再び抱き付いてきた。


「フォーデ!許さんぞっ」


とか叫んでいる、エイシュリット王太子殿下…どうしたんだろ?


フォーデ様を見ると肩を竦めている。


「もう好きなだけ抱き付いていれば?」


と言われた。意味不明だ……はっ…もしかして、エイシュリット王太子殿下ってば知らない間に毒蜘蛛令嬢の毒糸にやられていたのか?



盛大にすれ違っております。

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