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捕虜…ですよね?

まだまだすれ違っております。

よろしくお願いします。

泣きじゃくるばかりのルイナーデから何とか聞き出した所、ケイトリーサ=バウンテラス公爵令嬢が私に上手く近付いて騙した後、そのまま地下牢に閉じ込めてしまえ…とルイナーデに指示を出していた…らしい。


地下牢に入りたい私と地下牢に連れて行きたいルイナーデ…すごい偶然だね。


しかもその令嬢はルイナーデのご実家にお金を握らせてたり色々とチラつかせているので、彼女は令嬢に逆らえないとのことだった。賄賂と恐喝か…公爵令嬢のくせにそちも悪よのぅ~悪代官かよっ!


「それは悪質だな」


エイシュリット王太子殿下がそう呟くとルイナーデはまた泣き出した。ルイナーデってまだ中3や高1くらいの年齢だもんね、そりゃお金握らされて脅されりゃ怖いわ。


エイシュリット王太子殿下はメイド長と護衛のお兄様に何か指示を出している。ルイナーデの証言の真偽を確かめようとしているのだろう。


それにしてもさ、エイシュリット王太子殿下の運命の相手ってケイトリーサ=バウンテラス公爵令嬢かと思ってたけど違うのかな?


こういう悪役令嬢みたいな動きをする令嬢をもしかしたら好きなのかと思って、エイシュリット王太子殿下の女の趣味を疑っちゃうところだけど…さすがに違うよね?


私がジットリした目で見詰めているとエイシュリット王太子殿下が実に苦々しい顔で私を見てきた。


「あの…先ほどから気になっておりましたが、何故アイリエッタ姫は牢屋の中から出て来られないのです?」


「ここが私の部屋ですから!」


「へ?あ……い、今の聞き間違いかな?え~と何と仰いましたか?」


「私の…」


「姫様っっお許しくださいぃぃ…!」


私の言葉を遮るようにルイナーデがまた号泣して、鉄格子に走り寄ろうとした。すると近衛の茶髪のお兄様がグイッとルイナーデの体を掴んで引きずり倒そうとした。こらっ若い女の子に何をするんだっ!


私はすぐさま魔術を発動した。


「うわっ!」


護衛のお兄様が軽く吹っ飛ばされている。私はルイナーデの体の周りに魔物理防御障壁を張って、近衛のお兄様の攻撃からルイナーデを守った。その後鉄格子を開けると、素早くルイナーデの体を牢屋の中に引っ張り込んだ。


「アイリエッタ王女殿下っ!」


「アイ…ッ!」


私はルイナーデを背後に庇うとエイシュリット王太子殿下や近衛のお兄様達をジロリと睨んだ。


「若い女の子に無体を働いているのはあなた達の方ではないですか!」


そのまま牢屋内のパーテを元の位置に戻して、消音魔法をかけて外界と遮断した。


「ふわ…っ姫様、牢屋の中をこのような内装にされていたのですか?」


ルイナーデは室内(牢屋)を見ながらラグの上に靴のまま上がろうとしたので、手で制した。


「ルイナーデ、履物はそこで脱いで、そう、素足で…」


ルイナーデは指示通り素足でラグの上に上がり、魔電商品を興味深げに見詰めている。


「そうだ、折角だしお茶にしない?お菓子とか沢山作ってきたのよ?一緒に食べましょう」


ルイナーデは少しキョトンとした後、えぇ!と叫び声をあげた。


「作ったって…姫様の手作りですかぁ!?」


私はまだ驚いたままのルイナーデをローテーブルの前に強引に座らせると、お茶の準備をしてレイゾウハコからレアチーズケーキを出してきた。


この捕虜生活を快適にする為に、自炊の訓練をしてきた私の成果を見よっ!


「ひとりでお菓子を頂くのは淋しいし、是非味を見て欲しいわ!はい、ルイナーデ召し上がれ」


ルイナーデは緊張しながら、出されたレアチーズケーキを口に入れた。


「!」


「味はどう?」


ルイナーデは一口食べた途端、満面の笑顔になった。良かったー!ホラホラもっと食べて~あ、クッキーも持って帰る?


暫し、女子会をしてからルイナーデを外へと帰すことにした。もしかして、エイシュリット王太子殿下がルイナーデが私にまるめ込まれて、捕虜の片棒を担いでいる…とか思われてルイナーデの立場が危うくなったらいけないものね。


「引き止めて申し訳なかったわね。ルイナーデの立場が悪くないように私が口添えを…」


と、私が言いかけるとルイナーデはまた目元を潤ませた。


「姫様っそれは、私のせいなのです。あの、こちらの牢屋にお連れしたのはバウンテラス公爵令嬢に指示されて…」


「ああそれね。え~と、ではもう一度確認するけど、エイシュリット王太子殿下があなたに指示したのでは無いってことなのね?」


「はっはいっ!それはもちろん違います!殿下はそんなご指示はされていません!」


ふむ…ということは、私はエイシュリット王太子殿下に身に覚えの無いあらぬ疑いをかけてしまったということだね。これはいけない。


「このままではいけないわね、エイシュリット殿下に謝罪しなくてはね」


私は鉄格子の前に立つと消音魔法を解いた。牢屋の前の魔質を探る。外にはメイド達はいないが、エイシュリット王太子殿下と護衛のお兄様達が居るようだ。


私がパーテを動かすと、エイシュリット王太子殿下が急いで鉄格子に近付いてこられた。


「…ひ、姫…」


アイドルはそのご尊顔を曇らせている…。私は後ろめたさから、若干パーテの影に隠れながらアイドルを見上げた。


「先ほどは王太子殿下に対して不敬な発言を致しまして、申し訳御座いませんでした。ルイナーデを怒らないであげて下さいませ。あ、でも私は怒って頂いても構いませんのよ?」


「!」


エイシュリット王太子殿下はヒュッ…と息を飲むと、鉄格子から急に廊下側に移動すると、壁に手を突き私に背を向けたまま壁に向かって何かブツブツ呟いている。


近衛のお兄様がそんな王太子殿下の背中を摩りながら、困った顔で私の方をチラチラ見ている。何だよどうしたの?あっもしかして、殿下さっき壁に打ち付けた後頭部がまだ痛いのかな?そうだ!


「エイシュリット王太子殿下、まだ頭は痛みますか?もし宜しければ私が治療致しましょうか?」


エイシュリット王太子殿下はものすごい勢いで鉄格子の前に戻って来た。け…結構、動き早いし元気だね?


「是非治療してくれ!ささっ姫…こちらに出て来て…」


エイシュリット王太子殿下はキラキラ笑顔を向けながら私の方へ手を差し出した。


っむ?牢屋を出るのは今は困るわ!もしかしたら近衛のお兄様が私を捕まえようとするかもしれないし?


「私、牢屋から出る訳には参りません…」


私がそうモソモソと答えると、ありゃ?アイドルのご尊顔が怖くなったよ?そしてその鋭い目を私の後ろに立っているルイナーデに向けちゃったよ。どうしてルイナーデを睨むんだよ!


「何故、牢屋に留まろうとされるのですか?やはり…ルイナーデに何か唆されて…」


「ひっ!」


ルイナーデが小さく悲鳴を上げた。こらーっ!アイドルのくせに恫喝とは何事かー!


「牢屋に居るのは私の意思です!ルイナーデに非はありません!」


「姫の…意思?」


エイシュリット王太子殿下に私は愛されない女だからーーっと怒鳴りかけて、ああ…いけないと思い出し、エイシュリット王太子殿下の耳元に顔を近付けた。殿下っせ…背が高いっ…爪先立ちになってしまう。


「殿下…少し屈まれてっ」


「なっ…何だ?」


傍目から見たら妙に親密な仕草に見えるかもしれないけど…私は屈まれたエイシュリット王太子殿下の耳元に顔を近付けた。


「だってエイシュリット王太子殿下の運命の相手の令嬢が私を見て心を痛めていらっしゃるかもしれないではないですか?私は人目に触れないようにひっそりとゆったりと牢屋に隠れていたいのです」


そう…そして牢屋の中からアイドル星人と運命の乙女の恋愛物語をほくそ笑みながら見ていればいいのだ。


そう満足して頷いている私の側でアイドル星人…エイシュリット王太子殿下は膝から崩れ落ちていた。綺麗な金糸の髪がフワリと風になびいている。


ああ、そうだった。


「ルイナーデ、引き留めてごめんなさいね」


私が振り向いて声をかけるとルイナーデは、また小さく悲鳴を上げながら牢の中から出て行った。


「あ…え…はいっ。あのっアイリエッタ王女殿下頂きましたお菓子、後でメイド仲間と頂きます」


と言って腰を落として淑女の礼をしているルイナーデに、エイシュリット王太子殿下がものすごい勢いで立ち上がってにじり寄っている。怯えているだろっ止めて差し上げろ!


「菓子だと?」


ルイナーデは金髪アイドルに至近距離に近付かれて、慌てまくっている。


「はっはぃ…おう…王女殿下がお作りになられた焼き菓子を頂きました…」


エイシュリット王太子殿下がすごい形相で私を見た。イヤ…なんでアイドルに睨まれなきゃいけないの?


エイシュリット王太子殿下はその後、地下牢に入って来た若い役人の方…かな?に小声で延々とお説教されていた。その役人の方が笑顔で私の居る地下牢に近づいて来た。


「わおっ可愛い!初めまして~フォーデ=エルシォームと申します。エイシュリット王太子殿下の従兄弟で公爵家の者です。ルイナーデはケイトリーナ=バウンテラス公爵令嬢の件で聞き取りがあるから、そこの役人と一緒に行ってちゃんと証言してきてね」


何だか押しの強い銀髪の非常~に格好良い…自称、殿下の従兄弟さんはそう早口で捲し立てて、ルイナーデと役人2人が地下牢からいなくなった後にゆっくりと鉄格子越しに私の目の前に立った。


おおっ…この人も殿下とは系統の違うアイドル星人だ。従兄弟と言っていたから親戚一族は皆、アイドル顔なのかな?


「何だかおかしなことになってるね~この板はアイリエッタ王女殿下が立てかけたものですか?」


「アイリエッタ=ガンデンタッテと申します。フォーデ=エルシォーム公爵子息様、これはユタカンテ商会のパーテという商品です!」


「うん……商品名を聞いているんじゃないけどなぁ~ところでイシュは何をしているのかな?アイリエッタ王女殿下にご説明をしたのかなぁ?」


フォーデ様の横でどんよりと立ち尽くしていたエイシュリット王太子殿下は、何が?とフォーデ様に聞き返していた。


フォーデ様…サラサラ銀髪のアイドル顔なのに、エイシュリット王太子殿下にとんでもない変顔を向けている。フォーデ様はすぐに美形な表情に戻すと咳払いをした。


「まあいいか…それはイシュが自力で何とかしなきゃいけない事だし、まずはアイリエッタ王女殿下がどうして地下牢にいるのかのご説明をして頂こうかな」


あ…え~と、話すのはいいんだけど鉄格子越しっていうのがねぇ…でも私が外に出るのはなぁ…


「では座ってお話されます?牢屋の中で」


フォーデ様はまた、なぁにぃ?みたいな変顔で私の方を見ていた。綺麗な顔が崩れちゃうよ?


私は部屋(牢屋)の中へアイドル星人達を招き入れた。


「あ、殿下もフォーデ様も御履き物はそちらで脱いで下さいませ。土足は禁止ですので」


「え?あ…はい」


牢内に入ってポカンとしていたお2人にそう伝えると、ブーツを脱いでラグに足を乗せる、お育ちの良い方々に床座りをお願いして、お茶と焼き菓子を手早く準備してお出しした。


「……」


金と銀のアイドルはまだポカンとしている。そしてやっとエイシュリット王太子殿下は私の後ろのレイゾウハコを震える指で指差した。


「レイゾウハコ?」


「はい、ユタカンテ商会で購入しました!」


「これさ、牢屋の中だよね?女の子の独り住まいの可愛い部屋みたいになってるんだけど…」


「お褒め頂きありがとうございます、フォーデ様!」


「いや、褒めてねーし…ていうか、何これ?王女殿下がお茶と茶菓子の準備?何これ?ナニコレ?」


私がジッとエイシュリット王太子殿下を見詰めていると、殿下は恐々だけどお茶に口を付けられた。そして表情を変えられると、焼き菓子(紅茶の茶葉入り)を口に入れられた。


「美味しい…」


エイシュリット王太子殿下が笑顔になられた。それを見てフォーデ様も焼き菓子を口に入れられた。


「ナニコレ?ふつーに美味しいね…」


「フフ…ありがとうございます!」


やったー!美味しい?良かったよ~自炊の練習やってて良かった!


褒められて嬉しくてエイシュリット王太子殿下に笑顔を向けると、急に殿下は頭を抱えてローテーブルに突っ伏された!?


え?やだ…もしかして毒がっ!?そんな訳ないぞ…私が1人で作ったクッキーだし…おまけに摘まみ食いもしているから毒見はだいじょう…あっ!打った所が痛むのか!?


「殿下…頭、頭は大丈夫ですか?」


「あーーそーおだねーーイシュは頭がーおバカだもんねーー」


ちょっとフォーデ様?従兄弟とはいえ、いくら何でもその例えは駄目なんじゃね?


私は突っ伏したままのエイシュリット王太子殿下の後頭部の魔質を視た。先ほど壁で頭を打った所が魔流の巡りが若干悪いね…


「殿下、失礼致します。治療致しますね…」


私はエイシュリット王太子殿下の頭にソッ…と手を置いて治療魔法をかけた。ふぁ~殿下の金髪、柔らかぁ!


「治療魔法!アイリエッタ王女殿下は治療術師で有られるのですか?」


フォーデ様が驚いた声を上げた。そうか~治療術師って素質が無いと全然使えない術で、魔術師全体の中でも希少な存在だ。


「はい、攻撃系は全く素質無しですが、治療と防御系はかなり術を使えますよ」


治療が完了してエイシュリット王太子殿下の頭から手をのけた。


エイシュリット王太子殿下は顔を赤らめながら小さな声で、ありがとう…とお礼を言った。ふぁ~可愛い!


「さて…」


フォーデ様が綺麗なルビー色の瞳を私に向けてきた。何となく背筋を伸ばした。


「アイリエッタ王女殿下…牢屋でお過ごしの理由を教えて下さいますね?」


私は仕方なく、快適籠城生活の話をフォーデ様とエイシュリット王太子殿下に話した。



……


「捕虜!?」


私が兄に捕虜として嫁ぐことになる…と聞かされたと言うと、アイドル達は声を裏返しながら叫んだ。


「何でまた…」


エイシュリット王太子殿下は舌打ちをした。


「ガンデンタッテの王太子殿下め、余計な入れ知恵を…」


「入れ知恵!?た、確かにお兄様達はそう言ってましたが…その、でも私って捕虜なんですよね?生爪剥がされるのですよね?お水をかけられるのですよね?」


「誰が?」


「私が…」


エイシュリット王太子殿下とフォーデ様は大きな…とてつもなく大きな溜め息をつかれた。フォーデ様は眉間の間を指でモミモミしている。


「全くっ全然っそのようなことは起こり得ません!いいですか?そもそも、私共クラバッハは正式な書簡にてエイシュリット王太子殿下とアイリエッタ王女殿下の婚姻の打診を致しました。その打診に際して王女殿下を捕虜として扱うなんてまったく記しておりませんし、アイリエッタ王女殿下には正式に堂々とエイシュリット王太子殿下の正妃としてお迎えさせて頂きたくお願いしていたはずなのです。だから何をもってそのような湾曲された解釈で婚姻の打診が捕虜を要求しているかのような(おぞ)ましい比喩として伝えられたのか…全くもって理解出来ませんっ!」


フォーデ様…噛みもしないで、息継ぎなしで言い切った。え~と簡単に言うと


ごるぁ~ふっざけんな!


だろうか?つまりはお兄様達の暴走で私が勘違いさせられた?のか、こんな牢屋で籠城状態になっちゃってたということだね?うん…オーケー分かった。


チラッとエイシュリット王太子殿下を見る。殿下は困ったような顔で私を見ていた。


うん…困らせていますよね、ごめんなさい。でもね…その捕虜とかのアレコレはこちらの勘違い&暴走なのだけど…エイシュリット王太子殿下と運命の相手のご令嬢の件はまた別問題だと思うんだ。


私が牢屋で籠城をやめたところで、王太子妃に居座ったらその令嬢が良い気分じゃないんじゃないかな?私がやっぱり邪魔だとか…殿下に毛虫みたいに嫌われたりするのは惨めだし避けたいんだけど…


「あの…やっぱりこのまま牢屋にいちゃダメ?」


「駄目だ!」


「駄目!」


すげー金と銀のアイドルが息もぴったりダメ出しをしてきた。いや、感動するとこじゃないわコレ…


このまま牢屋に居座ろうと何とか踏ん張ったけど、大柄な金と銀のアイドルに力技で家魔商品を強引に片づけられて…最後は温水便座を人質?に取られて…捨てられたいのか!とフォーデ様に脅されて、止む無く牢屋を片付けて地上に戻った。


こうして私の牢屋籠城計画はたったの半日で終わりを告げた…


いやさ…でもね。問題というか、新しく私の部屋になった王太子妃の部屋で、金のアイドルと2人っきりにさせられてちょー気まずいんですけど?どうしてこうなった?


と言うかね…何故だかエイシュリット王太子殿下が半端なく緊張してるんですよぉ!?何この魔質?高魔力保持者のエイシュリット王太子殿下の魔質が、不安や動揺…まあ兎に角、負の魔質って言うのかね?それが部屋中に垂れ流されていて、とんでもなく気分が悪くなる。


まあ私は全然平気だけど、多分魔力量の低い方は殿下の魔力で『魔力あたり』を食らっちゃうんじゃないかな?


垂れ流しヤメロ!


今日から私付けになったメイドのカリアが段々顔色を悪くしているのが気になる。何度も言うが


垂れ流しヤメロ!


これもう言ってやろうかな?とか考えているとドアがノックされて、目つきの鋭いこれまた系統の違うワイルドアイドルが入って来た。


おおっ!所謂やんちゃ系アイドルだね!


「アリウム=サクラーデ侯爵家の者です。以後お見知りおきを」


そう言ってアリウム様は騎士の礼をされた。このやんちゃ系は騎士様なの?私も淑女の礼をしてご挨拶を返した。


「エイシュリット殿下、魔力が垂れ流されてますよ?侍従とメイド達から苦情を入れられました」


「す、すまん」


エイシュリット王太子殿下は素直に謝罪されている。ご自分でも垂れ流しに気付いてたんだね。


だったらヤメロ!


「それは兎も角、メイドのルイナーデの件ですが…実家の方に人をやりまして、暫くバウンテラス令嬢の間者が接触しないように監視をすることに致しました。ルイナーデの家族にもその旨説明しております。ルイナーデとメイド長には口頭で、この件は王太子殿下預かりになったので心配しないように伝えています」


「うん、それで頼む。で…ケイトリーサ=バウンテラス公爵令嬢の方はどうだ?」


アリウム様は少しだけ怖い顔になった。オラついてますかね?


「王太子殿下の名で呼び出しをかけてます。素直に来るかは分かりません」


「えぇ?じゃあ私が応対するのか?苦手なんだよな、あの令嬢…」


へぇ…エイシュリット王太子殿下が苦手なんだ~。まあ悪代官みたいなことをしてくる悪役令嬢だもんね。こっわい性格なのは会わなくても分かるわ。


エイシュリット王太子殿下はチラッと私の方を見た。


縋るような目だった…。ちょっと待てよ。私まだ16才なんだよ?エイシュリット王太子殿下は21才じゃなかったっけ?私より5才も上のお兄ちゃんだよ?


チラッ…チラッ…チラッ…


「……」


「エイシュリット…俺も同席するから、アイリエッタ王女殿下に助けを求めるな…」


堪りかねてアリウム様がそう申し出てくれた。


エイシュリット王太子殿下は、雨に打たれた子犬みたいな目で私とアリウム様を見てきた。


子犬攻撃はヤメロ!


「それほど怖い人なのですか?ケイトリーサ=バウンテラス公爵令嬢って…」


アリウム様は、あ…と言ってからエイシュリット王太子殿下を見てから私を見た。


「怖いというより、ねちっこいな。モンドリアントベアみたいな令嬢だ」


何だそれ?不思議に思っているとエイシュリット王太子殿下が『新装版★超超危険!世界の魔獣害獣大図鑑Ⅱ』という図鑑を見せてくれた。その図鑑によると


モンドリアントベアというのは口から猛毒を吐く、巨大害獣だった。図鑑に載っている絵姿を見ると


巨大な蜘蛛だった。どデカイ、タランチュラだ…こりゃ気持ち悪いねぇ。え~と何々?体長は6シーマル?ほぼ6mのデカさじゃないか!それで口から毒吐くの?気持ち悪っ…


しかし


よくよく考えれば…この魔獣に例えられるケイトリーサ=バウンテラス公爵令嬢って何気に凄くね?


次回、悪役令嬢登場!

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