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SIDE エイシュリット その1

エイシュリット視点からのアレコレです。

イシュはおバカなので温かく見守ってあげて下さい。



転移魔法でアリウムとフォーデの待つ自室前に降り立った。仮面とカツラを外しながら自室の扉を開けた。


「いよっ!お疲れ様!どうだったよ?上手く姫に会えたか?」


「姿絵くらいの不細工姫だった?」


私の執務室の中で帰りを待っていた、アリウムとフォーデの言葉も頭に入ってこない。フラフラと部屋に入るとソファによろめきながら座った。


「どしたの?エイシュリット?」


自分の名前を呼ばれて顔を上げた。自身の金色の髪がフワリと視界に入った。


「全然違ったんだ…」


アリウムもフォーデも怪訝な顔で此方を見ている。


「アイリエッタ…すごく…すごく可愛かったんだ」


「え?」


「可愛かったんだ…ぁ」


私が頭を抱えながらそう言うと、アリウム、侯爵家の長男は立ち上がった。


「あの姿絵よりも…?」


アリウムが指差す先には後ろ向きに置いてある、アイリエッタ=ガンデンタッテ王女殿下の身の毛もよだつ醜悪な姿絵がある。


「あんな化け物では断じてなかった!栗色の流れるような美しい髪で、美しい翡翠色の潤んだ瞳!白くたおやかな体!可愛い笑顔!あの思わず触りたくなる泣き顔っ!?堪らんかったぁ!」


フォーデ…従弟の公爵家の長男が私の横に座った。


「どういうことだ?」


私は瞼に焼き付いた可憐なアイリエッタの姿を思い出しながら、口を開いた。


「最初あまりに姿絵と別人だったので、手紙を渡すのを躊躇ったんだ。でも、もしかすると外見は兎も角、ものすごーく性格が悪いと言う可能性もあるかと思って…とりあえず手紙を渡してみた」


「どうだったんだ?」


アリウムのキリッとした雰囲気の顔を見詰めた。


「目の前で手紙を読んで…会う前にフラれてしまいましたね…って言われて、泣かれたあああ!ああっ泣き顔ヤバかった!すんげー可愛かった」


「泣かせちゃったの?」


フォーデが驚いたような声を上げた。


「あんなに泣くなんて思わなかったんだ」


「想定外だな…普通の高貴な女性なら婚姻はしてやるけど愛してやんねーよ!よそに愛人作っから!って言われたら怒り狂うと踏んだんだけど…」


アリウムは大きな溜め息をついた。


「おまけに…ごめんなさいって、必ず内密にします。決して殿下と愛する方のお邪魔は致しません、破談にするからって…言われた」


「なにそれ?めっちゃ健気…お前それ言われて引き下がってきたの?」


フォーデに言われて首を横に振った。


「私が名乗る訳にはいかないので、とりあえず待ってくれ…ってお願いしたんだけど…これほど愛し合っているお二人の仲を裂くような真似はしたくありません、て…泣きながら微笑んでいた」


「ああっそれはいい子だね~でもまたなんで、あの不細工な姿絵を送ってきたんだろ?」


フォーデの疑問にアリウムがすぐに答えた。


「こりゃガンデンタッテの国王陛下にしてやられたかな…わざと不細工な姿絵を送りつけて()()()()()()()()来るのを狙ったんじゃないか?」


「!」


「そうか…まず姿絵であんな醜悪なもの見せられたら、大抵の王族は断ってくるよ。普通は逆だよね、実物より美形に盛ってくるのがほとんどなのに、それの逆だなんて斬新で上手いやり方だな…」


おいっフォーデ!何を褒めてるんだ!?何を!?


「で…お前どうするんだよ?もう諦めてくれ~て、お願いの手紙渡しちゃったんだろ?」


「私は諦めない!」


「はぁ?」


私はギリッとアリウムを睨んだ。


「お前…姫の方から諦めてくれるように…なんとしても婚姻を阻止したい…ていうから()()()()()()()()()()を三人で必死で考えたんだろう?何を今更、馬鹿言ってるんだよ」


私は頭を掻きむしった。だから今それで困ってるんじゃないかっ!?


「そもそもなんだけど、どうしてその手紙をアイリエッタ姫に渡しちゃったの?」


痛い所を突かれた…。まさか捕縛魔法?のようなもので閉じ込められて脅されました…なんて口が裂けても言えない。格好悪すぎる。


私はフォーデのその問いに


「いや何、姫が暗がりに立っていてその可愛いお顔が良く見えなかったからさぁ~」


と言って誤魔化した。我ながら苦しい言い訳だ。


フォーデは呆れたような顔をして更に痛い所を突いてきた。


「だからさぁ言ったじゃん。姿絵だけで判断しないで、ガンデンタッデに潜り込ませているうちの諜報に、アイリエッタ姫の姿形の確認させりゃよかったんだよ」


それもそうか…今更ながらフォーデの言う通りだ。翌日、軍の諜報部にアイリエッタ姫の容姿の詳細を調べるように指示をした。


翌日


諜報部より若い男がやって来た。


「王女殿下のお姿を術にて撮影しようとした所、王女殿下本人に気づかれてしまいましたので、正直にエイシュリット王太子殿下がお姿を拝見したいと申しておりますとお伝え致しました」


「バッ馬鹿!なんでそんな頼み方するんだよ!」


「本当のことで御座いますので」


それはそうだけど…私、めちゃめちゃ格好悪くないか?


「そっ…それはそうだけど…でぇ?アイリエッタ姫はなんて言ってたの?」


諜報部の男は頷いてから魔石を一つ取り出し差し出した。


「少し怪訝な顔をされてはいましたが、素直な方ですね。お可愛らしいお姿を納めさせて頂きました」


「お前の主観はいいんだよっアイリエッタが可愛いのはもう十分はっきり分かっているからさ!」


私は差し出された魔石をひったくると魔力を込めた。これは幻術投影魔法といって、術者の記憶したものを魔石の中に映像をそのままに保存記憶しておけるものだ。


フワッと映像が浮かび上がり明るい日の光の中、淡い桃色の質素なワンピースを着た、それはそれは愛らしい微笑みを浮かべたアイリエッタが佇んでいた。


「ああっアイリエッタが笑っている!」


「これが…アイリエッタ姫?めっちゃ可愛いじゃない!」


「ふあ~これがあの絵姿のねぇ…」


フォーデもアリウムもアイリエッタの姿に感嘆の声をあげている。そうだろうっそうだろう!私のアイリエッタは世界一可愛いのだ!


映像の中のアイリエッタは、小首を傾げながら立ち位置を確認しているようだ。そしてフワッと微笑むと小さく手を振ってくれている!


「アイリエッタ!アイリエッタッ!」


思わず我を忘れて手を振り返したら、フォーデとアリウムにそれはそれは冷たい目で見られた。


その冷たい目に負けずに映像のアイリエッタに手を振っていたら、アイリエッタが驚愕の表情を浮かべた。何故か映像が乱れる。


「ど、どうした!?アイリエッタどうしたんだ?」


「申し訳ございません。私がアイリエッタ姫の映像を撮していたのをレッティエル王太子殿下に気付かれまして…」


画面は赤黒くなって途切れてしまった。私は思わず魔石に頬擦りした。アイリエッタァァ!


「レッティエル王太子殿下に魔石を取り上げられそうになりましたので、急いで私が口内に飲み込みまして隠滅しておきました」


アリウムが諜報部の男を見た。フォーデが無表情で私を見てくる。


「飲み込みまして排出しまして無事に取り出せましたのが、そちらの魔石でございます。無論、洗っておりますが?」


私は頬擦りしていた魔石を諜報部の男に返してから、頬と手に念入りに洗浄魔法をかけた…早く言え。


ああ、可愛いアイリエッタ。あんな愛らしい姿を見たらまた会いたくなって来た。


そして再びアイリエッタ姫に会いに行こうとしたら、ガンデンタッテの警備が厳重になってしまい近付けなくなってしまった。くそぉ…


ああ、アイリエッタ姫…


あれから数週間…国を通して何度もアイリエッタに手紙を出しているのに姫から返事が一切返ってこない。どうなっているんだ…まさか?


「もうあんな浮気者には二度とお会いしたくないわっ!」


とか言って嫁入りを拒否しているのかもしれない!?


「アイリエッタァァ!アイリエッターーッ!」


「うるせーぞ。ほら返事だ」


執務室に入って来たフォーデが一通の手紙を私に差し出した。ガンデンタッテの印…。私は急いで中を開けて見た。


『アイリエッタはそちらに行く準備で忙しい。レッティエル=ガンデンタッテ』


「ちがーーうっ兄の返事が欲しいんじゃね~アイリエッタァァァ…」


早く会いたいよぉ、アイリエッターーッ!



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