物販で手に入れました
アイリエッタが暴走しています。
浦も暴走しています。
今日は星が綺麗だから、天体観測したい!と言ったらエイシュリットに星とは宇宙とは…と聞かれて上手く答えることが出来なかった。ほらね?私ふつーの高校生だから馬鹿なんだよ?
でも、エイシュリットは少し聞いただけで満足したのかそれ以上は聞いてこなかった。何だか、ゴメンね。
夜、中庭の開けた所にラグを敷いてエイシュリットと寝転んで星空を見た。
「実はこの敷物の上で寝転がっているアイリエッタが羨ましかったんだ。私もしてみたかった」
「あら~じゃあどう?寝転んでみて?」
そう言って横で寝ているエイシュリットの顔を見た。満足そうな微笑みを浮かべている。
「今度は昼間にも寝転んでみたい」
「あははっ」
エイシュリットの方へ体を寄せるとすぐに手を握ってくれて体を寄せてくれる。
空を見上げると満天の星だ。あっちの世界と違って輝きが明るい星が多い気がする。自力で光っているのは恒星だったかな?知識が無い…ああ、もっと勉強しておくんだったな。
180度開けた視界の中、これほどの星が輝いている空間で空を見ていると、空がググッと近付いて来ているみたいな目の錯覚を覚える。
怖いな…綺麗な反面、1人で見ていたら星空の圧?みたいなので息が苦しくなって辛いかも。フト…手の温もりを感じて隣の人の気配に意識を向ける。
1人じゃないね…暗闇の中、星空の中で溶けそうな時もエイシュリットが居てくれる。ソッ…と目を動かすと、私を見ている優しい眼差しと目が合った。
「星空は見ないの?」
「星を見るよりアイリの方が綺麗だからな」
こらーっ!これだから金のアイドルはっ!囁きボイスCDでも発売しちゃうかな?ああん、どうだぁ?
色気駄々洩れの声を耳元で特別に囁きボイスでたっぷり聴かせてくれる金のアイドル。
「チュッ…」
しかも耳にキス音の効果音付き!夜で良かった…きっと照れて顔が真っ赤になっていると思う。
恥ずかしいけど、エイシュリットに更ににじり寄って、彼の肩口に顔を近付けた。相変わらず何だか良い匂いのするアイドル様。アイドルとは良い香りを自力芳香出来るのが必修条件…なのかもしれない。思えば体力はアメーバ並みで、プライドはスフィンクス級のフォーデ様もスパイシーな良い香りを放ってますね。
金と銀のアイドルと同じ匂いを持っちゃおう。限定フレグランス発売!きたこれーーー!売れば儲かるかな?
エイシュリットの肩口をクンカクンカと匂う変態の私の後頭部に、何度もキスをしてくれるアイドル。顔を上げると今度は顔全体にキスをしてくれる。
気持ちいい…うっとりしていると口づけが深くなってきたので、ちょっとはしたないくらい、リップ音を庭に響かせてしまった。
護衛の皆とかメイドが側に控えていると思うと……おぃ!何やってんだバカップル!…と自分自身で殴り飛ばしたいくらいだ。
「ジュッ…ん、部屋に戻るか?」
「…ん…ぅ」
はっきり言って足に力が入らないので、またも姫抱っこをして室内に連れて行ってくれるエイシュリット。
ベッドに2人で入って、イチャイチャした後…いつもは疲れて眠くなるのだけど、何とか目を開けて気怠い美しさを放つアイドルの疲れ顔を見詰めていた。
「イシュ…綺麗だね」
「ん~…アイリの方がもっと綺麗だよ」
囁きボイスCD第二弾ですかね~?でも私も心地良くてちょっと気分が乗っているので負けじと私も囁きボイスCD攻撃をしてみた。
ゆっくりとエイシュリットの耳元に口を近付ける。
「イシュ…大好き。アッ…ウム」
耳を噛みながら舐めてあげた。エイシュリットは目を真ん丸にして私を見ている。あ、段々真っ赤になってきた。
「あ…あ…。アイリエッタァァァアアア…」
イシュにガバッと抱き付かれた。
「イシュゥ…大好き~」
「……」
エイシュリットは無言でまさぐり始めた。おふぅ…また始めますか?
■ ■ ■ □ ■ ■ ■ □
そして月が替わった。
カステカート王国で開催される『世界会議』の開催日が近付いていた。今年は私とエイシュリットの王太子殿下と妃殿下コンビで出席だ。
事前に渡された会議資料で議題の中に、次代の勇者選定の題目があった。実は内々に葵様とナッシュルアン様に勇者の剣の召喚をしてみないか?と打診はされている。
異界の乙女のおばーさま達に聞き取り調査をしてみたけれど、喚ぶ私達の方は特に何もしなくていいらしい。ただ勇者、私の場合はエイシュリットだけど…に渡したい剣を想像?イメージかな?を明確にしておけばいいらしい。
剣ね~私個人の好みとしては、ケモレンジャーのヤタガラスの黒羽がカッコイイと思うんだけど、エイシュリットに渡すとなると『黒』はイメージカラーじゃないんだよね。
エイシュリットはもっとキラキラしてて、カッコイイ王子様!じゃないとだめだと思っている。勝手に思っている。
そんなことを悶々と考えている間に『世界会議』が始まってしまった。
一日目は各国首脳を迎えてのレセプション。
次の日から本会議が始まる。
本会議中にエイシュリットから最近起こった魔石から魔素垂れ流し事件の概要と危険性…また被害が出ないように注意喚起が行われていた。
朝の光の中、朗々と報告を行ううちの旦那、美しい~つい…ニマニマしながら見てします。はぁ…やっぱりエイシュリットが一番格好いい…私の金のアイドルだね。皆のアイドルでもあるけれど…
その時、私の頭にゴンッ…と何かが当たった。
「イッテッ!」
喋っていたエイシュリットも会議中の各国の王族や軍のお偉方の皆様が一斉に私を見る。
「し…失礼しまし…しました」
ペコペコと頭を下げながら、私の頭に当たって、今は私の足元の絨毯の床の上に転がって落ちているモノを拾った。
いってぇな、何だよもう………………ペンライトだ。しかも金色の装飾の派手なペンラだ。この手にしっくりとくるグリップ部分。よく見るとケモレンジャーのイベントに参加した時に会場の物販で売っていた価格2000円のペンライトに似ている。更によく見ると、光る部分が星の形だ。因みにケモレンジャーライトは八咫烏バージョンは光る部分はカラスの横顔だ。
思わず会議場の天井を見た。天井からペンライト降ってくるの?
もう一度手の中に握られているペンライトを見る。あ、よく見るとグリップの下に飾り紐みたいなのがついてるね…え~と何か書いてるね?何々…カタカナと英語だ。
『エイシュリット♡LOVE♡』
どういうことだ?私が手の中のペンライトを見て茫然としていると、私の横に座っておられたナジャガル皇国のライヴェールアン国王陛下…リファリールアン殿下のお兄様だね!が突然…
「それペンライトじゃない?」
と聞いてきた。
会議場の中が陛下の言葉を受けて再度、静まり返った。ライヴェールアン陛下は更に追い打ちをかける。
「父上と母上に連れて行ってもらったコンサートという会場で、歌い手が歌を歌う時…それを振って応援するんだよね?」
ひえええ!そう言えばライヴェールアン陛下のお父様はあのナッシュルアン様だしお母様は葵様だ!当然異世界の文化に触れていてもおかしくはない…けど、ライヴェールアン陛下の所謂ハーフ顔を見詰める。
こんな時にこの空間に異世界人は私だけじゃないかっ!純日本人?の他の方は…チラチラと会場を見ても玲ちゃんもいないし…
その時、殿下の後ろに眼鏡をかけて立っていた女性が私に少し顔を寄せた。目が合った時に気が付いたアーモンド色の瞳…少し白髪交じりになっているけど…もとは黒い髪で、見たことある眼差し。
「アイリエッタ妃殿下、後で皆様にご説明いたしましょうね。陛下お話は後ほどで…」
に…日本人のおばさまだー!こんなところに日本人!わーん良かった!
「おおそうか、すまんな。続けてくれ!」
ライヴェールアン陛下の言葉に会議が再び進行された。私はペンライトを隠すようにドレスのドレープの中に押し込んだ。
何だこれ?どうしたらいいんだ?
「大丈夫か?」
報告が終わったエイシュリットが顔を覗き込んで来る。何とか頷いてみせたが、内心パニック状態だ。
全体の会議が終わり、議長であるカステカート王国の国王陛下が
「さて…先ほど会議場内で、奇妙な物が落下してきたようだが…」
と言葉を切り出してきたので、また各国首脳の注目を浴びる。おいっまたかよ!
私が緊張で中々声が出せないのを見て、ライヴェールアン陛下が代わりに答えてくれた。
「どうやらあれは異世界の…なんて説明したらいいのかな?」
と、後ろに立っていた日本人のご婦人に尋ねている陛下。ご婦人は頷いた。
「危険性はありません。美術鑑賞をする時に大声を上げないように静かに応援する為の道具ですので」
うん、間違ってないけどけむに巻くような言い回しだ。簡単言うと、細かいとこにツッコむな!だろうか?
「うん?危険性はないのだな?どうだ?」
カステカート国王陛下の横にいる、物凄い迫力のある玲ちゃんの従兄弟のお兄様が静かに頷いている。
あんな大きいブスッとした人がゲイトヘイムさん17才とマイトヘイム君13才のお兄さんなんだよね。同じDNAだと思えないわ。可愛い成分を下の弟達に全部吸い取られたと見た!
じゃあ危険性無いならいいんじゃね?という感じで会議は終了した。
しかし私は今、ライヴェールアン陛下とエイシュリットと日本人のマダムに取り囲まれている。私の後ろにはその玲ちゃんの従兄弟のお兄様と…良かった!玲ちゃんとリファリールアン殿下も来てくれている!
「アイリちゃん、ペンライト握り締めてどうしたの?」
玲ちゃんッ!あんただけは分かってくれると思ったよ!
「こっこれね…上からスコーンと落ちてきて…ケッ…ケモレンジャーの物販で買ったのに似てて…」
「はいはいは~い!ちょっとお待ち下さいよ。何です?どういうこと?」
玲ちゃんが手で制して私を見て、更に首を捻っているエイシュリットを見た後、日本人のマダムを見た。
「ケモレンジャー?ケモレンジャーってあんたが子供の時に見てた戦隊シリーズよね?」
とマダムが言い放った言葉で、マダムの正体が分かった。
「玲ちゃんのママ!」
マダムはにっこりと微笑んだ。
「初めまして雲井 桜と申します。うちの子達がお世話になっております」
日本式お辞儀をされたので、私も慌てて返した。お辞儀大事。
「上から急に落ちてきたみたいなのよ、そのペンライト」
玲ちゃんママが私が持っているペンライトを見た。という訳で、ペンライトの使用方法とかを説明したがやっぱり皆、首を捻っていた。そして…玲ちゃんが大きな声でこう言った。
「やっぱりそれ、勇者の剣じゃね?」
「……」
皆無言になっているけど、やっぱりそうだよね?私も薄っすらとそうじゃないかと思うんだけど…正直に言っていいかな?
「こんなふざけたアイテムが許されるの?」
玲ちゃんと桜ママが大きく頷いている。だよね、どうもおふざけグッズにしか見えないわ。
「じゃあ取り敢えずエイシュリット殿下に渡して剣に変化するか試してみては?」
ライヴェールアン陛下の提案に、恐る恐るエイシュリットにペンライトを渡した。
ピカーと光ったりとか、キラキラとか輝いたりはしなかった。何も起こらない…どういうこと?
エイシュリットも怪訝な顔をしてペンライトを見ている。
「え~これが勇者の剣だと思ったのになぁ」
という玲ちゃんの声に私も頷いた。
空から降ってきた異形の物…正体は只のペンライト…謎だ…
「取り敢えず今日は様子を見ては?調子が悪いのかもしれませんし…」
ペンライトに調子が悪い?とかあるのか謎だけど、桜ママの言葉に皆は従うことにした。
エイシュリットはペンライトをブンブンと振っている。
「振っていると剣に変わるのかな?」
「いやぁ…そういうものでもないような気がしますが…」
私は首を捻った。何が違うんだろうか?
私達の後ろには雲井 玲司さんと近衛のウカノウラさんとグレビューさんが居る。護衛のお兄様達は玲ちゃんと年が近いとかでイシュも含めて仲良くなったみたい。
「そう言えば玲ちゃんのパパはどんなものでキュービに変わるの?」
「え?ケモレンジャーの御札だよ」
「ええっ!本物の九尾の守り札なの!?いいなぁケモナーとしては本物見たい」
「本物って言ってもな~あれって神が作った模造品だよ…てヒルデ様が言ってたけど」
「え?」
「だって、九尾だって八咫烏だって娯楽作品…作ったものだって分かっているだろう?グッズはグッズだ。クラウティカ閣下の童子切やガレッシュ様の銘国光だって本物は異世界にあるし本物は国宝だよ」
ああ…そうか。二次元のものなのに…神の力で具現化?みたいな感じにしているのか。似ているようで偽物か。
「だからそのペンライトも本物のようで本物じゃないよ」
エイシュリットが困った顔で私にペンライトを返してきた。偽物か…何だか盛り上がっていた気持ちが沈んでいく。
受け取ったペンライトの星の部分を触って質感を確かめてしまう。このプラスチックっぽいのも偽物か~上手く出来てるよな…と思っている時に星の部分がグルンと回転して、カチッと音がしてペンライトが金色に眩しく輝いた。ペンラ点灯かっ!いや違うっ何これ!?
「きゃあ!」
「わあっ!」
光が収縮すると私が手に持っていたペンライトは消えて、代わりにヤタガラスコスの衣装を着用したエイシュリットが立っていた。これも本物のヤタガラスコスだと真っ黒色の衣裳だけど、エイシュリットは金色が混じった豪華な色目だ。しかしどう見ても基本デザインは八咫烏様だった。
「えええっ!ヤタガラス!?ああっ!『黒羽』持っている!金色だけどーー!?」
「ちょおおいっ!マジで!ヤタガラスじゃん!すげぇすげぇ!」
興奮した私と、どこに隠し持っていたのかスマホを取り出して、ヤタガラスコスのエイシュリットの写メを撮り始めた雲井 玲司、23才。
カステカート王国城の廊下で臨時のコスプレ撮影会だった。被写体は茫然としているエイシュリット殿下。(八咫烏様)そのヤタガラスな殿下の周りを興奮してうろつく16才と23才。
こうなりゃ玲ちゃんパパと並んでケモレンジャーを見せてみろや!と玲ちゃんにすごんでみたら、エイシュリットから恥ずかしいからもう勘弁してくれ!と言われた。
ちょっと何が恥ずかしいの?尊きケモレンジャーのヤタガラス様のコスプレだよ?黒羽を持たせてもらってるんだから有難く思ってもらわなきゃいけないくらいだよ?
「全身の羽、毟り取ってやろうかぁごるぁ?」
とエイシュリットを威嚇しながら睨みつけると、エイシュリットはウカノウラさんの背後に隠れてメソメソ泣いていた。
次の日
エイシュリットが非常に簡単に勇者の剣の所持者になってしまったので、おじさん達(各国首脳)は浮かれていた。そしてとんだとばっちりで、現在未婚で魔力量が膨大な男達…特に名指しされたのが…
レージ=デッケルハイン中将閣下23才、リファリールアン第三皇子殿下24才、エクゼヘイム=デッケルハイン少将閣下(玲ちゃんより年下だった衝撃の21才)この3人だった。この3人に異界の乙女を召喚しては?と、各国の偉いおじさん達が詰め寄っていた。
何だかお見合いゴリ押ししている田舎の親戚みたいだよな~前の世界で見たことあるもん。私の従姉のお姉ちゃんが実家に正月帰って来てた時に、毎年言われてた。あんたもいい年なんだから!とか、良い人いないの?とか、早く落ち着いて子供作りなさい!とか…。辛っ!
実際の戦隊ヒーローショーの物販でペンラは販売していないと思います、念のため^^;