仮面の正体
転移魔法でどこかへ転移させられてきた。魔物理防御障壁を張ろうにも、紫のローブの男に手を握られている為に術を使えない。
しかしこのローブの男の魔質が気持ち悪い…手を振りほどこうとしても、凄い力で押さえられている。
補助、防御、治療魔法系統は簡単に言うと術を発動する時に術者の体に触れていると、その術が接触している者にもかかる…と言う訳だ。このローブの男と同じ障壁の中に入れないし、困った。
この転移して来た建物の中は広いけどすごく閑散としている。人の発する魔力もそんなに感じない。どこなんだろう…
ローブの男に小突かれるように背中を押されて…廊下の奥の、地下へと降りる階段を降りて行く。
ああ…この地下の感覚懐かしいぃ!…て、遊んでる場合じゃないわ。これさ…
やっぱりーー!地下牢だ!場所は違うけど、久しぶりーこんにちはー!
ローブの男に地下牢の中に押し込められた。振り向いてローブの男を見ると…か、仮面被ってる…!
「…異界の娘」
「!」
「勇者の呪いをお前に…」
それだけ言うとフラ~ッといなくなった…何だアレ?勇者の呪い?良く分からん…
まあさ、普通のお姫様ならさ、恐怖で泣き崩れる所だけどぉ…私は地下牢を顧みた。これぞTHE地下牢だ。汚い床…汚物まみれのむき出し便器…汚い石のベッド…すえた下水の匂い…
定番の地下牢きたこれーーー!
「ゲホゴホッ…臭ぁぁ!」
浄化洗浄魔法と消臭魔法を一気にかける。そして『レデスヨジゲンポッケ』の中からピンク色のパーテを取り出した。急いで鉄格子の前に立てかけて、消音魔法と魔物理防御障壁の魔術式の紙を張り付けた。
「またこのグッズ達が日の目を見るとはっ!じゃーん!」
と勢いよくラグをポッケから引っ張り出して床に敷いてから気が付いた。
しまった…牢屋で籠城するのはいいんだけど、エイシュリット達に連絡する手段を一切持ってなかったわ。
「あっアイノゲタバコがあるよ!」
おおっ!アイノゲタバコの存在を忘れそうになってたよ。これで外部と連絡を…と思ったものの自分の居る場所が分からないのに居場所をどう知らせる?いや待てよ?取り敢えず元気だよ!と知らせておこうか。
でも誰に渡せばいいのだろう?ここは無難に頼れるおばーさま、葵様だな。
「よし…書けた。はい送った~」
ラグを出したついでにレイゾウハコとコンロも出した。お茶を飲んでお菓子をかじって籠城しておこうかな。
☆ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ☆ ★
「も、申し訳ありませんっ!」
ギャッデが真っ青になって震えている。フォーデも顔色を失くしている。
「医院の入口まで一緒だったんだな」
「はい、僕…私が一歩先に院内に入ってしまいまして振り向いた時には…妃殿下の姿が…」
アイリエッタが消えた…
こんな一瞬で?どこに行った?何かされていないか…ああ、ああああ!
「アイリエッタァァァ!」
私が絶叫したと同時に先程まで話しをしていた、ルル=クラウティカ大将閣下の孫娘メシルが駆けて来るのが見えた。
「殿下っ今知らせが!アイリエッタ妃殿下からアオイ様に…ご…ご連絡があったそうです!」
「な、なんだってぇぇ!?」
皆で急いでナジャガルの皇宮に駆け込んだ。離宮と呼ばれる皇宮の奥の建物の中でアオイ様は待っておられた。
何でもアイリエッタと普段から文通をしているアイノゲタバコから、驚きの内容の手紙が送られて来たそうで、急いで私達に知らせてくれたそうだ。
そうか!アイリエッタはヨジゲンポッケを所持していた!もしどこかに監禁や軟禁をされていたとしても、相手の隙さえつけばいつでも籠城が出来る!
あまり褒められた方法ではないが…
兎に角、アオイ様から手紙を受け取ると急いで手紙の内容を確認した。
『葵様へ 今居る場所は分からないけどどこかの地下牢に入れられています。でも籠城しているから心配しないで、とエイシュリットに知らせて下さい アイリエッタ』
「こ、これだけ?」
「肝心な場所が分からなければ動きようがないではないですか!」
そう言ってフォーデが怒ったが、兎に角怪我もなさそうだし、連絡はアイノゲタバコで出来るので一安心した。
「上手く籠城出来てるのなら、取り敢えずは命の危険は無いな」
と私が言うとクラバッハの皆は笑顔になったが、事情の分からないナジャガル皇国の皆様は戸惑っていらっしゃるようなので簡単に籠城について説明した。
アオイ様はバカ受けだった。ヒィヒィ言って笑っていた。腰が抜ける~と泣き笑いをしていた。アイリエッタが浚われたと聞いた、レイジ=デッケルハイン中将が大慌てで来てくれたのだが、アイリエッタの地下牢籠城を聞くと
「おもしろーやべぇ!俺も加わりたい!」
とはしゃいでいた。まあ今となっては笑い話だが…でも困ったな~アイリエッタの居場所が分からないと助けにも行けない。
取り敢えずアイリエッタに手紙を書いてみては?とアオイ様に言われたので、急いで返事を書く。
『アイリへ アオイ様から手紙を見せてもらった。怪我は無いのだな?地下牢の場所を特定するものは分からないのか?それとしっかり魔物理防御障壁をかけて籠城を頑張るように エイシュリット』
変な文面になってしまった。横から覗き込んでいたレイジとアオイ様がまた大笑いをしている。
緊張感のない手紙だが、仕方ない。
アオイ様がアイノゲタバコに入れて手紙を送ってくれた。すぐに返事が来た。
『大きな建物で、人があまりいないんだよ。浚っていったローブの男が、勇者の呪いが…とか言ってた。籠城は上手く出来てる。今お菓子食べてるよ』
「菓子を食べてる場合ですかっ!」
フォーデがまた怒っているが、まあ元気そうだからいいじゃないか?
「これまた情報が少ないですね。しかし勇者の呪いって何ですか?」
レイジが首を捻ってアオイ様を見た。アオイ様は侍従に複数人の名前を挙げて呼ぶように指示している。何か解決策があるのだろうか…情けない…アイリエッタの旦那なのに何も出来ないなんて…
そしてアオイ様が呼ばれたと思われる、銀色の髪の…ああルル=クラウティカ大将閣下だ。後ろには先日お会いしたガンドレア共和国軍の大将閣下がおられる。レイジもアオイ様の横に行き、何か話している。ん?アオイ様に手招きされたのでお傍に行った。
「殿下、今からその地下牢に乗り込んでみませんか?」
とレイジが嬉しそうな顔で私を見上げてそう言った。
★ ★ ★ ☆ ★ ★ ★ ☆
葵様にご連絡をして正解だった。すぐにエイシュリットと連絡はついたし、無用な心配もかけないで済むしね。ナジャガル皇国で買ったプーラの口づけという飴を口に放り込んで舐める。
「甘じょっぱくて美味しい。ん?手紙来たな」
アイノゲタバコが手紙を受け取ったとお知らせ点滅が付いている。下駄箱の蓋を開けた。手紙が入っているので開けて読んでみる。
『アイリへ 今からそちらに転移魔法で飛んでみる。地下牢だから狭いと思うのでなるべく端によけていなさい。エイシュリット』
「ええ?ここに飛んで来るの~ヤバい」
急いで立ち上がるとレイゾウハコとコンロ…そしてラグを片付けて、パーテの近くに移動する。
フワッと魔力の気配が漂った。一瞬、光が地下牢いっぱいに広がり…光が納まると、地下牢にエイシュリットとアリウム様、玲ちゃん、そして先日お会いしたガンドレア共和国の大将閣下の4人が居た。
狭いっ!マッチョが地下牢に4人もきついわ!
「アイリエッタ!」
「イシュ!」
エイシュリットが私の方へ駆け寄って来た。良かった…やっぱり顔を見ると安心した。
「うわっ!本当に地下牢だ」
玲ちゃんがそう言って私の前にピョンと近づいて来た。
「なるほど~障壁を牢内に張って外の干渉を防いでるわけだ~これはまた異界語混じりの障壁かな?」
大将閣下がそう言ってピンクのパーテの魔法陣を見詰めている。
「それにしても、どうやってここの場所が分かったの?」
エイシュリットから体を少し離しながら聞くと、
「勇者の剣だよ」
と言ってパーテの方を見たので大将閣下の足元をよく見ると、あのボブカットの女の子がいてこっちを見てサムズアップをしている。
「アイリの魔質は前会った時に知っていたから、その魔質を追いかけてきたんだよ~」
勇者の剣…確か名前がエフェルカリードだったっけ?すごいな…
「それで敵の目的はなんだろうか?」
リファリールアン=ゾーデ=ナジャガル第三皇子殿下…こと大将閣下は表情を変えると、話しかけていたエイシュリットを制し、次いで私を見た。
「誰か来る!敵の目的を知る為に一旦私達は隠れよう。妃殿下、我々は姿を隠しますが必ずお傍におりますので」
「アイリエッタ、大丈夫だからな」
エイシュリットがそっと頬に口付けてくれて…皆の姿が消えた!もしかしてこれって透過魔法!?噂には聞いたことあるけど姿を隠せるんだよね?わ~凄い、微かに魔力の流れが視えるけど、個人の識別は分からないくらい魔質を隠せてるよ!
コツ…コツ…足音が階段を降りて近づいて来た。急いでパーテをヨジゲンポッケに仕舞うと、自身に魔物理防御障壁を張った。足を開いて踏ん張って立った。よーしっ来い!
「…障壁」
牢の前に歩いて来たのは私を浚った仮面の男だった。
エイシュリットも居てくれるから怖くない!息を大きく吸い込むと仮面の男を睨んだ。
「私を誰か分かっている上での狼藉ですか?」
「異界の乙女だろ…」
「異界の乙女?」
異界の乙女って…確か勇者の剣を召喚する異界(この場合は私が元いた世界)からやって来る乙女のことだよね?葵様や未来様達の事だと思ってたけど、私もそうなの?
「私に何をさせるつもりですか?」
「勇者の呪いを解いてもらう…」
まただ…勇者の呪い?勇者って呪うの?私の知っている勇者の剣の持ち主の方々は、ただのおじーちゃん達でそんな、おどろおどろしいことをしそうな感じじゃなかったけど…
「私は呪いを解くことは出来ません」
「勇者の面の呪いは乙女しか分からない!」
勇者のメン?麺?面…?私は詳しくないので分からないけど…勇者の面ってあるの?
すると…私の後ろからフワッとエフェルカリードが走り込んで来て、私の前に立った。ああ!姿を現しては!?
「あんたっもしかして童子切のことを言ってるのぉ?」
ちょっとちょっと、エフェルちゃん!危ないっ。
私はエフェルカリードの体を庇うようにして腕の中に掻き抱いた。
「…っ!」
仮面の男は逃げ出した。ええっ!鉄格子の中に私を放置して行くの!?
すると透過魔法を解いて皆が姿を現すと
「追うぞ!」
と言ってリファリールアン殿下が鉄格子を蹴り飛ばした。地下牢の鍵が〇イダーキックでぶっ飛んだ。その勢いで皆がなだれ込むように外へ出た。
「行くぞ!」
ちょっと待ってっちょっと待って!ちょっとまてこぉらっ!
「私を置いて行くな!」
結局エイシュリットが私を姫抱っこしてくれた。恥ずかしいけどこの際仕方ない。
「こっちだ!」
だってさ~リファリールアン殿下も玲ちゃんもアリウム様もエイシュリットまでもが皆、超俊足なんだもん。一般人はついていけないよ。ああ、鈍足仲間のフォーデ様が懐かしい…ここにいたのなら一緒にのんびり移動するのに…
「ここかっ!」
エフェルカリードがリファリールアン殿下の肩に乗り、廊下を右に曲がれ、左に曲がれ…と指示を出して、豪奢な扉の前に辿り着いた。リファリールアン殿下はまた扉を蹴り上げた。器物損壊です…
豪奢な扉の中は、カーテンが閉じられてて薄暗かった。室内に人が3人いる。その3人共が嫌な魔質の持ち主だ。
1人は大きめのソファに座っている。残りはさっきの仮面の男と…もう1人はそのソファの側に立っていた。
「良くない魔質の持ち主だな…」
リファリールアン殿下の呟きに私も頷く。エイシュリットとも目が合い、頷いて見せるとエイシュリットも頷き返した。
「何者だ…」
ソファに座っている人が声を出した。おじいちゃんだ…すごい声がしゃがれてるから、ものすごいおじいちゃんだと思われる。
「父上っあそこに居るのが異界の乙女で…」
仮面の男がソファのおじいさんを父上と呼んだね…私達は無言のまま相手の出方を見ていた。
ソファのおじいさんが腕を伸ばしながらこちらを見た。ひえぇっこのおじーちゃんも仮面被ってる…手がシワシワの木の枝みたいだよ。相当のお年じゃないのかな?
「私の…この身の宿る、呪いを早く解けぇぇ…」
ぎゃああ…呪いよりおじーちゃんの方が怖いよ。でもホント呪いって何だ?
「呪いとは何のことだ!」
リファリールアン殿下がそう声を張り上げると、そのおじーちゃんは、手をカクカクさせながら指差してきた。
「お…お前、ナジャガル皇国の…おのれぇ、わしに呪いをかけよってぇ…」
え?呪いかけたのリファリールアン殿下なの?皆の視線がリファリールアン殿下に向かう。殿下は慌てて首を横に振っている。
「ええ?知らない知らない!呪いなんて知らないよ~ナジャガルの親戚の誰かと間違えてるのかな?!」
するとリファリールアン殿下の肩に座っていたエフェルカリードが、大きな声で叫んだ。
「あんたの呪いは童子切の鬼の面を被ったことによるものだ!童子切が許さない限りは解けない呪いだ!」
皆がボブカットの可愛い女の子の顔を凝視した。今、何と?
「そこに居るのは、シーダ=ナンシレータだよね?自分でお面被ったくせに呪われたってバカじゃないのか?」
エフェルカリードの言葉に私は首を捻っていたけど、リファリールアン殿下は何か気が付いたみたい。
「ドウジギリ…ルル=クラウティカ閣下の勇者の剣ですね。じゃあ、あの不思議な仮面を…」
「ばかなぁ…ばかなっ…ヒュ…ゲハッ!これは呪いだ…!お前達が私にかけた呪いだぁぁ…」
枯れ枝おじーちゃん…シーダジジイが、仮面を脱ぎ捨てた。私達はその顔を直視した。
ドロドロに爛れて目鼻口は原型を留めていない。目が顔から落ちそうなほど…眼球そのものが見えていた。
「んぎゃああああ!」
「ぎゃあ!」
「わあっ!?」
悲鳴を上げただけでよく気絶しなかったものだと、自分を褒めてあげたい。ちょっとちびりそうだった…内緒だけど…
「顔が…そうか、勇者の剣の拒絶か。でもそれは呪いじゃないよ、神力から反発を食らったんだ」
とエフェルカリードはシーダ爺にそう叫んだ。
シーダ爺と息子?の2人は絶叫している。もしかしてあの怪我って子供達にも遺伝しているのかな…子供に罪は無いと言いたいところだけど、私を浚っているんだもんね。魔質も良くない質の人達だから、この親にしてこの子あり…ってところだと思う。
「リファリ帰ろう、ここに居たって無駄だ」
エフェルカリードがリファリールアン殿下にそう言うと、エフェルカリードは私の方を見た。
「アイリがカデと同じような神力を持っていても…勇者の剣の神力とは別物だから」
何だかよく分からないけど、用事?が済んだんなら帰ろうかな…
エイシュリットが私の腰を支えた。私もエイシュリットの腰に手を回した。
「帰ろうか」
一瞬で転移魔法が作動した。あの枯れ枝のおじーちゃん、シーダ爺は追いかけては来なかった。まあ、あんなじーちゃんじゃ素早く動くのは無理だろうけど…
ナジャガル皇国に戻って、葵様とヒルデ様、ルル=クラウティカ大将閣下、ナッシュルアン様…皆様からジーダ=ナンシレータの呪いと騒ぐ理由を教えてもらった。
ルルおじ様の勇者の剣のお面を顔に被ってしまったとのこと。拒絶されて反発、つまりはお面から攻撃されたとのこと。それからの後の状態は分からないが、剣から反発を受けると普通の治療魔法は効かないということだった。
ルルおじ様に噂のお面、童子切を見せ貰った。
こえぇぇ…ちょっと年季の入った煤けた鬼のお面じゃん。めっちゃ呪われそう、これは呪うね、うん。
でも変身したら格好いいのよ~!と葵様がおっしゃるので、腰が痛いと言いながらも、ルルおじ様は変身してくれた。薄霧の中、変身したルルおじ様は…甲冑姿の二次元アイドルみたいでめちゃめちゃ格好良かった!
「きゃああ!真田〇村ぁぁ!伊達〇宗ぇぇぇ!!やばーーい!」
私はルルおじ様に思わず走り寄ってしまった。うわーーーっこれが変身!?
「やばっ!これはいいわ!」
私が散々褒めちぎっていると、ルルおじ様は嬉しそうな笑みを浮かべていた。でも勇者の剣って剣だけ手元にあるかと思ったけど、変身グッズがいるんだね?とエフェルカリードに聞くと代わりにヒルデ様が答えてくれた。
剣を召喚する時に勇者の剣をあげたい人のイメージに合う剣をあげた結果がグッズになったのだと…因みに玲ちゃんのお父さんも勇者の剣の所持者で…玲ちゃんが教えてくれた。
「俺が『妖狐の剣』がいい!って言っちゃったから、お父さんキュービに変身しちゃうんだ」
ちょ……ちょっと待てーー!今、妖狐の剣と言ったか!?キュービと言ったか!?
「そ、それってもしかして『モノノケ戦隊 ケモレンジャー』のこと?」
玲ちゃんがパッと笑顔になった。
「え~~!アイリちゃん知ってるの!?俺が子供の時に放送してた戦隊ものでさ~九尾の狐の物の怪にとり憑かれて変身するキュービが大好きでさ。勇者の剣を父さんと母さんが召喚するかもって時に、キュービに変身して!って俺が言っちゃったから…それになっちゃったんだ」
うおおおおっ!なんだとーーー!?実写?本物?キュービがこのナジャガル皇国にいるってか!?
「いや、ちょっと玲ちゃんが子供の時って私、高校生だったのか…ってそれは置いておいて!やばっ私ケモレンジャーオタなのよぉぉ~!ヤタガラス好きなんだよぉお!」
玲ちゃんは益々笑顔になった。
「うわっ!ここでケモレンジャーの話が出来ると思わなかったなあ!うんうん、八咫烏カッコイイよね。てか、アイリちゃん…俺が幼稚園児の時に高校生だったの?」
私は玲ちゃんににじり寄った。
「玲ちゃんっ玲ちゃん!?年齢の話はいいからさっ!さっきのルルおじ様みたいに玲ちゃんパパも『変身』するんだよね!?玲ちゃんパパも…まさか、ハァ…ハァ…」
思わず興奮で息が荒くなる。玲ちゃんは大きく頷いてくれた。
「そーだよぉ。父さん、ケモ耳のモフモフの九尾のふさふさになるんだよ!」
ああああっ!神様ーーー!ありがとうっきっとナジャガル皇国のアイドル、玲ちゃんのパパなら絶対美形だ!美形おじ様にケモ耳…モフモフ…モフモフ。
「フフフ…アーハハハハ!」
私が高笑いしながら興奮MAXになっている間、周りはドン引きしていたらしい。
玲ちゃんに玲ちゃんパパの変身イベントを生で見せて欲しいと、お願いしてからクラバッハに帰った。
エイシュリットは私1人が盛り上がっていたので、拗ねていた。変身ヒーローとは…を説明してあげたけど、それでもずっと拗ねてた。
夜、一緒にお風呂入ったら機嫌は直ってたけどね。
ああ〜早く玲ちゃんパパの変身ヒーローショー見たいわ〜