好きにならんと言われたよ
新連載スタートです。
長期連載にはならない予定です…一応。
世界観は魔将軍、乙女…シリーズの少し未来ですが同じ世界です。
「エイシュリット=イトラ=クラバッハと申します」
「アイリエッタ=ガンデンタッテと申します」
うわぁ~~姿絵より100万倍かっこいい!めっちゃカッコいいよぉ!?
扇子で口元を隠しつつ…思わずニヤニヤと笑ってしまった。光り輝く王子殿下…一応…一応(仮)旦那になる男の子を私は隅々まで観察した。
湖の深い湖面のような綺麗な群青色の瞳…金糸のような光り輝くプラチナブロンド…まんま王子様だね。いやまぁ~ホンモノの王子だけどさ。
この旦那(仮)のエイシュリット王子殿下と私との関係はちょっと複雑だ。隣国同士で私の国、ガンデンタッテ国は建国3000年を超える…いわゆる老舗の国。
かたやクラバッハ国は前の悪政を敷いていたダバッテイン帝国を倒して樹立した建国100年にも満たない新興国…。
折角新王国樹立したばかりだと言うのに、調子に乗ったのか…クラバッハ国がガンデンタッテにケンカをフッかけて来たのが始まりだった。
クラバッハは数年ごとにガンデンタッテに数万人規模の戦争を仕掛けて来た。その度に私の兄二人が戦地に赴き、なんとか持ち堪えてきた。ハッキリ言ってうちの国は防御に特化した国だ。誰も攻め込めない…。
そう、私が居る限り…
ここの十年くらいの戦地での大規模魔物理防御魔法はすべて私が行ってきた。
私一人で…
どうやら私、異世界チートというものを持っているらしいです。
申し遅れました。元異世界、地球の日本国出身、名前を伊佐美愛理と申します。享年18歳と二ヶ月です…そう私、向こうで亡くなってこっちに転生して来たようです。因みに私の趣味はライトノベルを読むことでした。
やった!その知識が今、生かされるー!…と思ったけど、どうやら私の持っている小説の中の登場人物に生まれ変わった訳ではないみたい。
まるで違う価値観の世界で言葉を覚え新しい家族の中…異世界人の粗相がないように?必死に生活してきたわけよ。
とりあえず15才までは頑張ったね。新しい家族、父母、兄二人、最近出来た双子の弟妹。皆とてもいい人だった。
正直…前の世界で、大人…特に父母に良い印象の無い私としては子供の時から両親に対して非常に懐疑的だった。だけど5才くらいで疑うことをやめた。だって今の親や兄弟は前の親とは違う…すごくいい人だった。なのにね、転生人生も楽じゃなかったよ。
「クラバッハから停戦の申し入れがあった…それと同時に停戦の条件として…アイリエッタとエイシュリット王太子殿下の婚姻を要望する…つまり、戦争やめてやるから嫁いでこい、と言われた」
「父上!?その条件を了承された訳ではありませんよね!?」
「そんなバカな!そんな条件飲めません!」
兄上二人が一斉に抗議してくれる。兄達は私を溺愛してくれている。今は双子がいるから構いたがることは大分軽減されたが、それでも妹ラブなのは間違いない。
でもね、私だってこの世界で15年プラス前の世界で18年生きてきた、りっぱなアラサーなのさ。複雑な大人の事情が絡むことがあることも分かっている。
長引く戦争で国民だって疲れてきている…兵士の死人だってこの数年でゼロではない。争えば誰かが傷つく…
「でしたら、私がその婚姻をうけて…」
そう言いかけた私の言葉に被せるように、長兄のレッティエルが叫んだ。
「そんな婚姻など虐げられるのは目に見えている!」
次兄のクーリエルが同じように叫んだ。
「まさか、兄上…部屋に軟禁されたり…はたまた、牢に入れられたりするのでは?」
「そ、そうだな!?そうだ!事実上の捕虜だっ!牢に繋がれてしまうのだよ!アイリ!?」
そ、そうなの?婚姻は建前で捕虜…つまり牢屋に入れられて、硬い石のベッドでおトイレしかない6畳間でネズミとお友達になっちゃうアレ…の扱いなの?(あくまでイメージです)
そ、そうだ…捕虜になったら…ご飯ちゃんと貰えるのかな?餓死はヤダなぁ…不潔なのも嫌だし…硬いベッドも困るなぁ…ああそうだ、私、冷え症なんだよね、膝掛け欲しいわ…暖房は大丈夫かな?自分の魔法で牢屋の中の室温調節は出来るよね?魔法の練習しておこう…。
ん?…あれ?ちょっと待て待て!?
確か捕虜って拷問されたり、爪剥がされたり…水かけられたりするんじゃなかったっけ!?
ヤバッ!?うっかりしてたけど、牢屋って鉄格子だよね?なか丸見えじゃん!?どっどうしよう!?焦って考えられないよ〜
「な?恐ろしいだろ?だからこの婚姻はやめような…?」
何かレッティ兄様が呟いているけど、それどころではない。私は牢屋の中でいかに、快適に過ごせるか…のシミュレーションで頭がいっぱいだった。
よしっこうしちゃいられない!今から快適牢屋ライフを送るために色々と準備をしなきゃ!
「兄様!私、牢屋生活を快適に過ごす為の準備がありますので失礼致しますわ!」
「なんだって!?」
「アッ…アイリ!?」
私は急いで廊下に出るとお付きのメイドと近衛のお兄様と一緒に自分の部屋へ戻った。
■ ◇ ■ ◇ ■ ◇
その頃…
部屋に残された国王陛下(父)、長兄レッティエル、次兄クーリエルが頭を抱えていた。
「ちょっと兄上!?アイリが変なヤル気を出しちゃったじゃないか!」
「お前が牢屋だなんだと言い出したからだろ!?」
「やめんか!…しかしアイリが乗り気になってしまったのは誤算だが、もうすでに手は打ってある」
王子二人は父、国王陛下を顧みた。
「クラバッハの王太子には最大限不細工に描かせた、アイリの姿絵を送りつけてある。あれを見れば向こうから断って来ようて」
「父上、セコい!」
「悪どすぎる!」
そう言って親子三人は忍び笑いをしたのだった…。
■ ◇ ■ ◇ ■ ◇
私は自室に戻るとお茶を飲みながら、牢屋快適生活の計画に没頭していた。
「食べ物をどう確保するかは問題だよね〜捕虜なのに出歩いて市場で買い物も出来ないし〜まず出歩くのマズイよね〜通販頼むかぁ…あ、そっか!料理は出来るからコンロと冷蔵庫持ち込んじゃえばいいんだ!」
私は必要なものを紙に書き上げると、机の引出しを開けた。
そこには予約半年待ちで手に入れた『レデスヨジゲンポッケ』の限定品がある。
なんと猫の顔のシルエット型のショルダーバッグだ。
商品名もそうだけど、猫なんてこの世界に存在しない生き物を知っているのは、まず間違いなくこの鞄の発売元のユタカンテ商会の人は…
日本人だ!
この事実に気がついてユタカンテ商会の商品カタログを手に入れて…中を見て大爆笑だった。
『レイゾウハコ』『タクハイハコ』『アイノゲタバゴ』『センタクハコ』等々…大胆すぎる日本語名だった。隠す気ゼロだよ!日本人ですよアピがすごい!
「ドラム式洗濯機まで作っちゃうんだもんなぁ…おまけにこの『エアコーン』どう見てもエアコンじゃん!ユタカンテヤバい!」
私は猫のショルダーバックをたすき掛けに肩にかけると、隣の部屋でお茶の準備をしていた、私付きのメイドのラティに声をかけた。
「ラティ〜お買い物に出るわ」
ラティは部屋の横のミニキッチンから出て来ると
「お買い物ですか?買うもの分かっていらっしゃるのなら、私代わりに買って来ましょうか?」
と、小首を傾げた。
「ううん、見て選びたいの。あ、ハルゲン!転移門の使用許可申請してきて〜カステカート王国まで!」
私が廊下に顔を出して私付きの護衛、近衛所属のハルゲンにそう言うと
「ええ?カステカートへですか!?そんな遠方まで行かなくてもガンデンタッテ支店でよくないですか?あのそれに国王陛下に許可は頂いたのですか?」
と、ハルゲンはオロオロしながらそう聞いてきた。
はぁ…こういう所がお姫様の面倒くさい所なんだよね…一々お伺いを立てて護衛が付いてくるって感じ。でもね、理由は分かってるんだ。私が不用意に出かけて外で攫われたり、怪我したり…そういう事態になった時に責任の所在はお付きの近衛やメイド達が取らされるのよ。
ましてや外国にプラプラ出かけて何か事件に巻き込まれたら国際問題になるんだよね。皆に迷惑はかけれないし…困らせたくない。
すると報告に行っていたハルゲンがクーリエル兄様を連れて戻って来た。
「アイリ…カステカートに行きたいって何か用事かい?」
仕方ない…この際父兄同伴でも構わないか。
「ええ、クラバッハに持って行く魔道具をユタカンテ商会に買いに行きたいの」
「ユタカンテ…なぜ?」
そんなもの決まっている。本店限定商品の化粧品も見たいし、え~と後は日本の懐かしい匂い…というか郷愁を誘うものが欲しい…これだ!
…とは言えないので
「ユタカンテ商会…と言えば本店限定でとても珍しい魔道具が販売されていると聞きます、是非この目で確かめて購入してみたいのです」
ジッ…とクーリエル兄様の瞳を見詰める。濃いエメラルド色の目が微かに泳いでいる、後一押し!
「婚姻したら兄様ともお出かけ出来なくなりますし…最後の思い出に…」
クーリエル兄様は泣き出した。
そして…レッティエル兄とクーリエル兄の二人にがっちりガードされながら無事ユタカンテ商会でお買い物が出来た。
いや~兄様達についてきてもらってマジ助かったわ、自分だけじゃドラム式洗濯機なんて高くて買えなかったもん。家電製品全部買って貰えたし、限定化粧品買えたしお金浮いたね!やった!
そして、着々とクラバッハ行きの準備を進めて後、半月ほどで婚姻…という日の夜…
お風呂で少し温もってから寝室に入ると、外の庭に誰かいる。魔力波形を確認するが妙な濁りはない。敵意も感じない。しかし自分の知りうる限りの誰とも同じ魔力波形でない。
敵意の無い知らない誰かだ。
「そこに誰かいますか?」
思い切って声をかけながら窓を開けた。開けて外に直接出ることが出来るのでそのまま一歩庭に出た。勿論、自分に三重魔物理防御は張ってある。
この私にあらゆる攻撃は効かないよ?さあ、誰かな?
その誰かはゆっくりと庭木の後ろから出て来た。
おお、魔力量の多い人だ。体も大きい…顔半分は仮面を被っているけど口元は見えている。まだ若いな…20代かな?うん、視えていた通り、おかしな魔力波形の人ではないみたい。
「ここは王宮の中ですよ、何か御用でしょうか?」
私がそう聞くと、その仮面の人は少し躊躇った後、口を開いた。
「アイリエッタ王女殿下を、連れて来ては頂けませんでしょうか?」
ん?私?
「私ですが?」
「え?」
仮面の人は動揺しているようだ。私が王女だとは知らなかったようだ…いや、ここ私の部屋の前の庭だし…部外者は入れないよ?あ、この人は入って来ているか…さてどうしようか…この人、曲者ってやつかな?
「本物ですか?」
どういうことだよ?王女だって言ってんのっ。もしかして私の雰囲気が一般人っぽいのかな…それも微妙…。
「私がアイリエッタですが…何かご用でしょうか?」
この仮面の人が俄かに怪しく感じてきて(元々怪しいけど)ちょっと後ずさった。
「あ!お、お待ち下さいっあの…本当に本物のアイリエッタ王女殿下でしょうか?」
なんだこの聞き方?ちょっとムカついたので、この仮面の人を私の自慢の魔檻の中に閉じ込めてやることにした。無詠唱で術式を展開する。スルスルスル…と仮面の人の足元から魔力が立ち上る。
「な…!?これ何だ?」
クリスタルの材質に似て見えるけど私が作り出した世界に一つしかない構成の石の檻が完成した。一瞬で仮面の人が檻の中に閉じ込められている。
ふふ~ん慌てている、慌てている。しかしこの檻はちょっとやそっとでは壊せないよ?
「私の魔力を籠めた特製の檻です。あなた何用ですか?近衛を呼びますよ?」
仮面の人は檻の中で叫んだ。
「ま、待ってくれ!私はクラバッハの…エイシュリット王太子殿下の…え~と使いの者だ!」
「クラバッハ…!?」
仮面の人は王家の紋様入りの指輪を手に取り私の方へ見せて来た。
「エイシュリット王太子殿下から手紙をアイリエッタ王女殿下にお渡しするように…託されております」
エイシュリット王太子殿下っ!
父から見せてもらった姿絵を思い浮かべる。ものすごーくものすごーくイケメン王子様だった…。
仮面の人が懐から手紙らしきものを取り出して檻の中から差し出した。私は意を決して庭の中央にいる仮面の人の傍まで近づいた。
「う…そだ」
仮面の人は何か…ゴニョゴニョ呟いているけどかんけーないね。私はその差し出した手紙を受け取ろうと手を伸ばした…が、仮面の人がその手紙を引っ込めてしまった。
「あ…のこれは…その…」
「何ですか?私宛の手紙でしょう?渡して下さい」
ジッと仮面の人を見詰めていると仮面の人はう~とかあ~とか言いながら頭を抱えている。
「近衛を呼びますよ?」
そう言うと仮面の人は諦めたのか渋々手紙を差し出したので、勢いよく手紙を引っ手繰った。間違いない、クラバッハ王家の印が押されている。うん?良く見ると更に封印の魔法がかけてある。
「あなたが本物の王女殿下であると判明しない限りは…その封印は解きませんよ?」
私はボソボソと喋る仮面の人をチラリと見てから、解術をした、時間にして3秒ほど。
「私にかかれば只の蜜蝋で封された手紙と変わりないわね」
「そ、そんな!すご…」
私は手紙を開いて、手紙を読んだ。
『アイリエッタ=ガンデンタッテ王女殿下殿
突然のお手紙失礼致します。婚姻の前にどうしてもお伝えしたいことがあり、筆を執りました。この手紙の内容は御内密にして頂きたくお願い致します。
実は私にはお慕いしている女性がいます。彼女は私の運命の相手だとお互いに確信しております。彼女と一緒にいると心安らかになれるのです。
彼女は長く美しい髪を持ち、透き通るような肌…大きな瞳…心根は穏やかで優しくとても素晴らしい女性です。そんな素晴らしい彼女と添い遂げる事を信じて生きて参りましたが、この度の姫との婚姻が国王陛下より告げられ…私は失意のどん底に陥りました。なんとか気持ちを抑えようとしましたが、彼女を想う気持ちに抗えず私の中から彼女を愛する気持ちを消すことは出来ませんでした。
それ故にあなたを愛することは出来ません。私のこの気持ちを分かって頂きたい。この婚姻で双方の国の争いが終わり両国に安寧が訪れることでしょう。その為の婚姻だということを、あなたを愛することは無いということをご理解頂きたくお願い致します。
エイシュリット=イトラ=クラバッハ』
読んでいる途中から涙が止まらなかった。
私を愛することはない…。頭を何かで殴られたみたいだった。ああ、バカみたいだ…あの綺麗な王太子殿下には愛する人がいる。
ほんの少し…本当に少しだけ婚姻に…結婚に夢を見ていた。私だって誰かと幸せな婚姻ができるなんて夢を見ていた。捕虜だとしても牢に入れられても、もしかしたら牢屋の中で見初められて王子様に愛されるかもなんて思ってた。馬鹿だな、わたしぃ…
ふと、気が付くと檻の中に入った仮面の人は何かを一生懸命に叫んでいた。
「…姫!?姫、大丈夫ですか!?それは…その違いますからねっ!?その…決してあなたを悲しませる為に書いたものでは…」
ああ、私悲しいのか…だから涙が止まらないのか。
「っぐす…ごめんなさい」
「あなたは何も悪くない!悪いのは私だ!」
「私?」
仮面の人…何だか変なことばかり言ってるな、慌ててるのかな?
「いや、その…え〜と殿下に…殿下に伝えます!あんなひどいこと書いて姫を泣かせたって…」
ん?あれ?この仮面の人、手紙の内容知ってるのかな?
「あなたはこの手紙の内容知っているの?」
私がそう聞くと仮面の人は益々慌てて出した。
「う…あ…はい、必死に考…」
「必死にかん?」
何?
「必死に…必死に感動した内容でしたぁ…あう…」
なんだか支離滅裂っていうのかな。あ、檻に入ってるから怖いのかしら。
「内容をご存知なのですね。恥ずかしい所をお見せしてしまいましたね。フフ…私、お会いする前にフラれてしまったみたい」
話しながらまた涙が溢れてくる。仮面の人は、ああ!と絶叫しながら檻の中で突っ伏した。どうしたんだろう?やっぱり気分が悪いのかな…
私は仮面の人の周りの檻の障壁を解いた。
「閉じ込めてしまってごめんなさい。王太子殿下にお伝え下さい。このことは必ず内密にします。決して殿下と愛する方のお邪魔は致しません。国王陛下にお願いして破談に…」
「それはダメだ!!…って…いや…あの、待って下さい。殿下に…殿下にもう一度考え直すように伝えますから!」
やっぱりこの仮面の人…支離滅裂だ。
「これほど愛し合っているお二人の仲を裂くような真似は、したくありません」
そうだよ、こういうのって…正に悪役令嬢の立ち位置じゃないか。それでなくても愛しません、と言われてるのに更に嫌われるのなんて堪えるわ。あんなTHE王子様みたいな人に嫌われるなんて。
仮面の人は私の数歩手前まで近付いてきた。
「姫っ…ああ可愛い!違うっ…えっと大丈夫です!どうかしばらくお待ち下さい!いいですか、どうか早まらないで下さい、必ず必ず姫を幸せにしますから!」
「はあ…」
仮面の人、完全に取り乱してる。
「姫!必ず姫を幸せにしますから!」
怖っ…自分の防御がすごいからって無用心過ぎたかな。私は急いで部屋の中に戻ると窓越しに
「お気をつけてお帰り下さいね」
と、仮面の人に声をかけた。まだ仮面の人は外で叫んでいたけれど、流石に怖いので魔物理防御をしっかりかけ直してベッドに入った。
しばらく庭に仮面の人の気配はあったけど、やがていなくなって、辺りに静けさが訪れる。
しかし愛し合う二人か…私ってば完全に邪魔者だな、しかもこれラノベでよくあるパターンじゃん。悪役令嬢…私は悪役王女になるのか?が二人に嫉妬して邪魔して嫌がらせして、王太子殿下に毛虫みたいに嫌われて…反逆罪なんかで捕まって、処刑されて…
あれ?それは最初から牢に入っちゃえば捕まらないか?でも処刑だけは絶対に嫌だから牢の中で籠城、オヤジギャグみたいだ。とにかく籠城しちゃえばいいよね。
数年くらいは籠城しても大丈夫なように備えておこう。
そして布団の中で体の向きを変えた時に、チラリとそれを見てしまった。部屋の隅にはお父様に無理を言って頂いたエイシュリット王太子殿下の姿絵がある。
ここ数日、かっこいいな~とニヨニヨして眺めていた私は大馬鹿野郎だ。あんなかっこいい人がフリーな訳ないんだ。あんなかっこいい人は別の星の人で、アイドル星のアイドル星人なんだ。そもそも私とじゃ宇宙が違う、次元が違う、遺伝子レベルで違う。
また泣きそうになった。泣いたって仕方ない。どうせ最初から牢屋に入れられて捕虜になるのだ。何をショックを受けることがあるんだ。あの人は別宇宙のアイドル…しかも人のモノなんだから。
そうだ、別宇宙のアイドルだと思えばいいんじゃないか。
遠く牢屋の中から愛でる…これでいい。イケメンアイドルだと思えばいいんだ。そうすれば例え、人のモノでも愛でる分には問題ない。
これからは牢屋の中から見て楽しんでおこう。
「おやすみ、アイドル…」
私はゆっくりと目を閉じた。
ギャグなのでイチャラブは先の先…になる予定です。