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百合乃婦妻のリアル事情  作者: にゃー
夏 百合乃婦妻の夏休み
58/326

58 R-ある夏の幸せな一日



「……ん……」


 顔の辺りに降り注ぐ何か暖かなものを感じて、華花は緩やかに目を覚ました。

 薄く目を開けてみれば、すぐそばに優しい笑みを浮かべる蜜実の顔が。

 陽の光だと思っていた暖かい何かは、どうやら彼女の視線だったようで。


「おはよぉ」


 華花が自ずと目覚めるまで、一緒に横になりながらその顔をじっと見つめていた蜜実が、いつも通りの間延びした声で朝を告げる。


「ん、おはよ……」


 常であれば、先に目を覚ました華花が(しばらく寝顔を堪能した後に)蜜実をやさしく揺り起こす、というのが二人にとっての一日の始まりになるのだが。


 今日はその逆、珍しく蜜実の方が先に起きていたようで、華花は寝ぼけ眼のまま、


(今日、何かあったっけ……)


 などと考え。


 口を開きながらもますます深まる蜜実の笑みに、昨日のやり取りを即座に思い出した。



「華花ちゃん、誕生日おめでとぉっ」



 小さく、けれども確かに(はず)んだその言葉に、つられて華花も笑みを浮かべる。


「……うん、ありがとう」


 つまり、今日はそういう日であった。




 ◆ ◆ ◆




 まあ、華花の誕生日だからと言って、何か盛大に祝うだとか、どこかに出かけるだとかいうことはないのだが。


「ね、ねぇ……」


「んー?」


 昨日、誕生日に何が欲しいかと聞かれた華花の「蜜実がいればそれでいい」という言葉によって、今日一日もいつも通り、空調の効いた家に籠って二人でだらだら過ごすことは既に決定事項となっていた。


 相も変わらず現代っ子らしくチルドで朝食を手早く済ませ、リビングのソファーで二人寄り添っているのも、いつも通りのこと。


 ただ、強いていつもと違うことを挙げるとすれば。



「これ、結構恥ずかしいんだけど……」


「だいじょうぶだいじょうぶ、すぐ気持ち良くなってくるからー」



 腰かけた蜜実の膝に、華花が頭を乗せて横になっている、という点であろうか。


「うぅ……」


「よしよしー」


 慣れない状況に、少しばかり身体を強張らせる華花の頭をやさしく撫で、静かな声音で愛でる蜜実。その顔には常以上に穏やかな、最早、母性とすら呼べる慈愛の色が浮かんでいる。


 どちらかというといつもは、甘え上手な蜜実が華花に甘える(という(てい)で徐々に甘々攻めにシフトする)ことが多い二人なのだが。蜜実たっての希望で、今日は蜜実が華花を無限に甘やかすデーということになり。

 朝食を終えるや否や華花を膝枕へと誘う蜜実の迅速さ、穏やかながらも有無を言わせぬ行動力は、まさしくSTR・AGI重視プレイヤーの鏡と言えよう。


 まあ、若干顔を赤らめつつも既に蜜実の包容力に()まれつつある華花と、静かながらも上機嫌に膝上の頭を撫で、長髪を梳く蜜実の様子を見れば、結局のところいつも通り、蜜実が主導権を握っていることは明白であった。


「……ん、ぅ……」


 頬に触れる太ももの温かさが、羞恥や緊張を解していくように。髪を梳く指先が、心まで優しく撫でているように。心地良さが華花の心身へと広がっていき、身体の力が抜けていく。それでいて、後頭部に当たる蜜実のお腹の熱と脈動が、じわじわと頭を痺れさせていくような。

 全身が弛緩し、けれども確かに、ぞくぞくとした淡い痺れが背筋を甘く撫で(さす)る。


 少し経った頃には、華花の鋭い目元はとろんと蕩け、その口の端は小さく空いてしまっていた。


「華花ちゃん……」


 囁き声で名を呼びながら蜜実は、髪を撫でていた左手を華花の耳元へと持っていく。


 爪の先で耳朶(じだ)をやさしくなぞれば、一層広がるぞくぞくとした感覚に、華花が僅かに身を震わせて。密着する太ももとへその辺りでその振動を確かに感じ取った蜜実は、ますます指先を躍らせる。


 耳の後ろを優しくくすぐり、そのままゆっくりと首筋へと。細く白く軟らかい喉元を、人差し指と中指で撫ぜながら、一方で右の手も華花の右肩辺りにそっと添えて。

 喉に優しく食いつくような左手が、少しずつ少しずつ、顎の下へと上っていき、それに連動するように、右手は右腕を下っていく。


「ん、ん、ぁぁ……」


 二か所に増えた痺れの発生源に、小さな喘ぎが漏れ出してしまう華花。

 くすぐられる顎の下はされるがままに、けれども五指の這う右腕の方は、自分から求めるようにしてもぞもぞと身じろぎさせ、両方の手で蜜実の右手を包み込んだ。


 もはや力もほとんど抜けていて、それでもまるで縋るようにして自身の右手に絡みつく華花の両の指に、蜜実もまた、甘い悦びで心をくすぐられながら。


「はーなーかーちゃーん……」


 その心地良さを循環させるべく、熱を帯び始めた吐息と声音を、華花の耳元へと近付ける。

 左の指先は既に、唇のすぐ下にまで迫っており、触れ合うその瞬間を今か今かと待ちわびている華花のそこは、赤く熱く濡れていた。


 触れるか触れないかの絶妙な力加減で、唇の輪郭をなぞり愛でる蜜実の指先。その小さな意地悪にもどかしさを覚えながらも、華花は決して、自分からその指に食いつくことはしない。

 主導権を握っているのは蜜実であり。彼女にいいように翻弄されるのは、華花にとってはもどかしさすらも心地良い至高のひと時なのだから。


 耳朶をくすぐる吐息に背筋を震わせながら、あくまでも従順に、口元を愛でる指先に身を任せる華花。代わりにその両手指だけは、蜜実の右手に深く深く絡ませて。


「……準備いい……?」


 やがて。

 例によって、している側が我慢出来なくなってしまった蜜実が、小さくそう呟き。


「ぅ、ん」


 待ちわびていた華花が、呼応するように身を震わせる。


「いくよー……?」


 その指先を受け入れようと、唇を小さく開いて。



「――はぁむっ」



 その油断しきった右耳を、蜜実がぱくりと咥え込んだ。


「ふあぁっ、ぁぁぁぁ――っんむぅ……!」


 全く予期していなかった未知の感覚に、思わず情けない声を上げてしまい……その大きく開いた口を、今度こそ二本の指先で塞がれる。


 ぬるりと熱く湿った舌先が、耳たぶを、耳の溝を、時には耳の裏側までをも濡らしていく。

 軟体生物が這い回っているかのような、けれどもそれが蜜実の舌であると分かっていると、弛緩しきった喘ぎ声が止まらなくなってしまうな、軟らかく粘着質な快感。


 今までに感じたことのない快楽に耐えるようにして華花は、口内に侵入してきた蜜実の人差し指と中指に吸い付く。

 しかしその指先たちも、爪の先の硬さと指の腹の柔らかさを巧みに使い分けながら、口腔(こうくう)を、舌先を、味蕾を撫で愛でていくものだから、もはや快感の逃げ道は、蜜実の右手を握る両手くらいしか残されていなかった。


 けれどもそれは、ある意味喘ぎ声などよりもよっぽど、「気持ちいい」と正直に言ってしまっているようなもので。

 力の入らない指先を、それでも離れないようにと必死に絡ませ包み込むその様子から、華花がどれほどの刺激に身を苛まれているのを感じ取った蜜実は、その攻め手をさらに強めていく。


「ん、れろ……はっ、あはぁっ……」


 濡れそぼり尖った舌は耳の穴にまで侵入し、耳孔の内壁をなぞり火照らせていって。

 脳にまで届いているのではないかと錯覚するような舌先の熱とくちゅくちゅという音が、華花の内側で反響し、全身へと広がっていき。同時に、荒く上気した吐息が、耳全体をさらにふやかせる。


「ふぁ、ぁぁっ、ぁ、ぁ、ぁ……!」


 閉じることの許されない華花の口の端から、喘ぎ声と共に唾液までもが垂れ落ち、蜜実の太ももを濡らしていく。


 強烈でありながら、心身共に(とろ)かせられ力が抜けていくような快楽を享受して、油断しきっていた華花の身体は早急に限界へと押し上げられつつあった。触れ合った肌からそれを敏感に感知した、蜜実が、スパートをかける。


 指先は舌を愛で、舌先は脳まで(ねぶ)り。


 どちらからもぐちゅぐちゅと水音が響くような激しい攻勢でありながらも、とどめの一撃は、どこまでも優しく。



「ん、ちゅっ、華花ちゃん……っ、……だいすきっ♡」


「ぁ、ぁっ――!」



 こうして火照り切った華花の身体は、舌で溶かされ言葉で絶頂する、ということを覚えさせられた。

 蜜実渾身の、誕生日プレゼントであった。



 ……その後も今日一日は、おおむねそんな感じで過ぎていった。

 要するにここ最近のいつも通り、夏の日の(ただ)れに爛れた一日であった。


 次回更新は5月2日(土)18時を予定しています。

 よろしければ是非また読みに来てください。

 あと、感想、ブクマ、評価、誤字脱字報告などなど頂けるととても嬉しいです。

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