313 R-成長を感じる
そして迎えたクリスマス……イブ。
ディナーだケーキだパーティーだは先日たっぷりと楽しんだのだから、その辺りは全て省略とさせて頂いた華花と蜜実。まだイブではあるがしかし、二人にとってはクリスマスそのものよりもイブから当日にかけての性の六時間の方が重要であった。むしろ、これにかこつけてコスチュームプレイに勤しむのが主目的とすら言えるだろうか。
今回もシャンメリーで(気分的な意味で)良い塩梅なほろ酔い加減に。順番にシャワーも浴びて、寝室の温度調整も完璧、薄暗い暖色の明かりで雰囲気も万全、去年もお世話になったミニスカでへそ出しなサンタコスに身を包めばもう準備は万端……の、はずだったのだが。
「――は、華花ちゃぁ~んっ……」
先にベッドの上で待っていた華花の前に現れた蜜実は、何やらちょっと泣きそうな顔で、じもじと身体を隠そうとしていた。
「……どうしたの?大丈夫?」
何か問題でもあったのだろうか、が半分、その恰好で恥ずかしがられるとなんかインモラルだなぁ、が半分といった心持ちで声をかける華花。
ベッドの前に佇んだままの蜜実は、どうやら露わになった腹部を殊更に隠そうとしているようで。その様子から、問うた次の瞬間には何となしに察しが付くものではあったが。
「去年よりキツくなってるぅ……」
どうも、そういうコトらしい。
「……どの辺が?」
「……ぜ、全体的に……」
それはつまり。
「成長したって事じゃないの?」
「そ、それはぁ……」
腹部と言わず、蜜実の全身を舐めるように眺める華花。それだけで、薄暗い部屋の中にあってすら、彼女の身体に魅力的でない部分など存在しないと改めて分かってしまうものなのだが。
蜜実本人にしてみれば、去年サイズぴったりで用意したミニスカへそ出しサンタ衣装が、今年は少々狭苦しく感じてしまうようで。特に気にしているらしいお腹周りを隠そうと身を縮こまらせていた。
「……ていうか、言っちゃなんだけど……今更?」
服がキツイという話なら、毎日着ている制服やら寝間着やらはどうなるのかという話で。見られるのが恥ずかしいというのはそれこそ今更も今更である。そう思い首を傾げる華花に対し、自分事が故の熱量で蜜実が反論。
「違うんだよぉ……!制服とかは成長を見越してゆとりのあるサイズにしてたからぁ!パジャマもゆったり系が多いからぁ!でもこれ、これはぁ……!」
去年はまだ、そこまで体型に負い目を感じてはいなかった。だからこそ躊躇いもなく痴女一歩手前な格好をし、むしろメリハリを見せつけるように、ぴっちりとしたサイズ感のものを進んで選んでいた。
しかし今はどうか。
胸がキツい。腰回りがキツい。お尻の辺りもぱっつんぱっつん――な、気がする。実際のところは、蜜実の身体を知り尽くしている華花ですら(確かに気持ち生地が張ってるかも?)くらいにしか分からない微々たる変化ではあるが……
過去の自分との決定的な差を肌身に感じ、あまつさえその状態を華花に見せるなどと。去年と変わらず、すらりと引き締まった肢体を曝け出す華花の前に立つなどと。
蜜実的には、看過し難い由々しき事態であった。
「んー……」
華花的には、やはり首を傾げざるを得なかったが。
「……とりあえず、おいで?」
「………………うん」
何はともあれ、ベッドへ誘う。
見て理解らないのであれば触ってみるまで、と、そんな意思は当然蜜実にも伝わっており。しかしそれでもその身体は、誘われるように華花の元へ。膝立ちにベッドの上を数歩進めば、獲物を捕らえる触手生物のような身のこなしでもって、膝の上へと捕縛される。
「ちょ、華花ちゃ、この体勢はぁっ……!」
「良いから、良いから」
横抱きに抱え込むように右手で蜜実の肩を抱き、自身の胸元に引き寄せた赤い耳へと、唇を寄せる華花。蜜実が慌てるのは、背中が丸まったこの姿勢では腹部のぷにぷにがより顕著に見えてしまうとの懸念からだが……そんなことは杞憂とばかりに、華花の囁きが彼女の中へ侵入っていく。
「私は蜜実の身体、好きだよ?」
中々に爛れた言い方だが、今はこれがベストだと華花には分かっている。納得させられるかどうかというより、今伝えたいことは何かという点で。
同時に、左手をゆっくりと蜜実の腹部へ。隠すように乗せられている両手の上に被さり、指を這わせる。
「あぅ……でもぉ……」
結局のところ今までも、華花が求めるのならとぷにぷにボディを許容してきたわけなのだから。早くも蜜実の心には、だったら良いかなぁ……という思いが僅かばかり芽生え始めていた。
その心の隙をつくように、華花の指がさらに蠢く。
気持ち緩まった蜜実の指と指の間に、潜り込むように。細い触手が、かき分けていくように。
「お腹もすべすべで綺麗だし」
辿り着いた柔肌を、丸い爪の先で優しくなぞる。胎児のようなこの姿勢でも、別に段々腹になるという訳でもなく。本当に気持ち分、スカートのウエスト部分に押されて、ぷっくりと盛り上がっている程度。気に病むどころか、華花にしてみればむしろもっと誇るべき奇跡の丘。楕円に歪むへその穴が、流砂の如く華花の指を誘い込む。
「んっ……うぅっ……」
快感と羞恥と嬉しさで、思わず目を閉じ眉根を寄せる蜜実。
漏れる声もどこか、いつも以上に悩ましげに。
それに気を良くした華花が、一度指を抜き再び蜜実の両手を優しく握り。そのままゆっくりと持ち上げて、胸の前で祈るように組ませる。
そうすることで、元より豊かな双丘はさらにぎゅっと強調されて。視線をやった華花が、ぽつりと。
「確かに、こっちはおっきくなってるかもね」
同時に意識する太ももに乗った臀部の感触も、もっちりと柔らかく心地良い。
見れば見るほど、触れれば触れるほど。このパーフェクトなボディを憂う必要なんてないのだと、声高に伝えたくなる。
けれど、耳元でそんなことをしたら、驚かせてしまうかもしれないから。だから代わりに指で、囁き声で心身に理解らせる。
「んっ、ふぅっ……っ……」
今度は指の腹で、ほんの僅かに押し込むように。そうすれば少しの圧迫感が、蜜実の身体を火照らせていく。耳元で「ふにふに、きもちぃ」と囁くことも忘れない。
そうして完全にガードの緩んだへその下、スカートとの間に人差し指、中指、薬指の第一関節辺りまでを潜り込ませる。
とんとん、くにくに。
緩やかなリズムで刺激を与えていけば、段々と段々と、蜜実の吐息も熱く湿ったものへと。
「……んぅっ……っ、ぉっ……」
深く低い小さな喘ぎが、静かな寝室に響いた。羞恥に縮こまっていた蜜実の両脚はいつの間にかだらりと投げ出され、肌を指に合わせて時折ぶるりと震えるばかり。呼吸に合わせて胸元も大きく上下し、それがまた華花の劣情を視覚から煽る。
「お腹、気持ちいいねぇ……」
普段の蜜実を真似て間延びした口調が、華花の優位をこれ以上なく示していた。耳たぶを食むように寄せられた唇からは、絶えず「ふにふに」「くりくり」「すりすり」とあやし言葉が吹き込まれて。
ただ包み込むような華花の体温と下腹部を愛でる手指の感触だけが、蜜実を覆う世界の全てになっていく。
「とんとんは?好き?ぐるぐるは?」
「ふぅっ……んぉ……ぉぉっ……」
どんどんと低く深くなっていくその声音に、もはや羞恥や悩みといったものは欠片も乗せられておらず。
「もっと、もっと。だよね?」
「ん、ぅ゛ぅ……ん、もっと、ぉっ……」
この日は――いや、この日もまた。
目いっぱい甘やかされて、深みに落ちていく蜜実であった。
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次回更新は1月28日(土)12時を予定しています。
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