29話!
部屋に入って僕とネピアは一息ついた。他の部屋はセルカが一人でクレブリアとヴェールが一緒。いつもと同じだ。疲れてるだろうから皆と特に約束はせず解散になった。明日の朝、馬車に集合だ。
「エルは疲れてない?」
「うん……じっと座っている時の対処法を知ってるからね」
なんの役にも立たないかと思われたスキルがまさかの利用価値だ。
「ネピアも当然、大丈夫だよね?」
「大丈夫……なんともない」
やっぱりネピアにとって同じ姿勢は特に問題ではなかったらしい。
「ちょっと外に出ようか」
「いかがわしい店?」
「違うから! 普通に何か食べたいなって、せっかくだし」
少しお腹が減ってるのは確かだった。馬車の中で用意されてた食料を食べたけど、やっぱり無くなっちゃいけないし。そう思うとたくさんは食べられなかった。
「キレイなお姉さんつまみ食いたい?」
「だから違うから!」
僕は「もぉ」と言いながら部屋の外に出る。ネピアも続いた。宿屋を出るとさっき到着してから通った道を戻る。しばらくすると賑わいが増えてきた。
「やっぱりこういう所だとテンション上がるのかな、賑わってるね」
普通の街に比べたら、人は少ないけど。
「ネピア、気をつけてね、杖を奪われないようにね」
「わかった」
なんとなく治安も悪そうな気がする。乱雑さがひったくりみたいな犯罪をしやすくしそうだ。
「さぁて、どうしよう」
宿屋を中心に広がってるなら一周全部、こういう感じなのか。ちょっと気になって右手側に向かって僕は歩き出す。そのうち、同じところに戻ってくるはずだ。
「繁華街? みたい」
ネピアがポツリと言った。僕の記憶には繁華街はイメージしかない。行ったことないし。だから疑問系なんだろうな。
「多分もっとすごいよ、本当の繁華街」
ネオンで彩られて夜でも明るいというイメージ。でもここはネオンなんてないし、魔法石で照らされてて少し明るい程度。
「暗いからこそ、いろいろ危なそう」
灯りと灯りの間、店の灯りもない暗がりに人が動くのが見える。僕は目をこらすと見覚えのある服装だった。暗い中、白がよく見える。
「セルカ?」
「どうしたの?」
「セルカがいたような」
「同じ宿街にいるから、いるでしょう」
ネピアに正論を言われて「確かに」と返す。
「何するか言っておいてほしい? 何かするなら一緒が当然? 彼氏面」
「ネピアってたまに棘のあること言うよね」
僕はちょっと心が弱ってる中、暗がりを見ると目が慣れてきてもう一人の存在に気づいた。セルカとフードを目深に被った人物。
「あれは……セレンでも会ってた人」
1回目!




