3話!
動きやすさ、偵察向き、そういうのを考えるとどうしても忍者の格好を思い出してしまう。
「ヴェールはどういうのがいいの?」
「え? どういうの」
考えるそぶりをして、少しするとヴェールが顔を振った。
「わからない」
「わからなんですか?」
セルカが不思議そうな顔をして続ける。
「白と黒に絞れば選ぶ数は減ります」
「はは、そうだね」
僕は一応返事だけする。ただたぶんそういう事ではない。今まで服装なんていう物を考える余裕がなかったんじゃないかと思う。最初は僕たちが決めて、それからいろいろ自分の好みを知っていけばいいのかな。
「声かけなさいよ」
クレブリアの思考モードが終わったらしく僕たちの所にやってきた。
「ごめんごめん、ヴェールね、どういうのがいいかわからないって」
「あぁ、そっか、そうよね」
少し寂しそうな表情でクレブリアがヴェールの頭を撫でる。ヴェールはよくわかってない表情をしつつ、嬉しそうに笑った。クレブリアも察したようだ。
「動きやすさ重視の服装がいいわね」
「それに偵察なら目立たない色、黒ですよ、アクセントに白を入れて」
「うーん、黒ね」
「夜なんて闇に忍べますよ」
セルカは自信満々に言うとクレブリアが笑った。なんで笑ったんだろう。おかしな事、言っただろうか。
「夜に黒い物着てても、たぶんバレるわよ」
「え! だって!」
僕は驚いて声をあげてしまう。口を押えて声のボリュームを下げ、続きを言った。
「夜は暗いというか黒いから同化して」
「ふふっ、夜に黒い服着てどこかに侵入してみるといいわ、身をもって体験しないとわからないかも」
「えぇ教えてよ!」
「しょうがないわね、夜は完全な黒色じゃないのよ、どうやっても少し明るくなる、だから暗めの紺色を着ないと、黒だと人影が浮かび上がるのよ」
そうなんだ。忍者が黒いの着てるから勝手に解釈してた。ちょっと驚きだ。
「というか、それは良いのよ、色は気にしない、というか色くらいはヴェールの好きなのがいいわ」
いきなり名前があがって、ヴェールは少し驚いた表情をする。
「好きな色……か?」
「何かないかしら? 身につけたい色、見てたい色そういう物よ」
悩みながらヴェールは答える。
「わかん……ない」
「あっじゃあ好きな場所は?」
僕がそう問いかけるとヴェールはハッとしたように答えた。
「それならあるぞ! 最初にみんなで遊んだ所! 川! あとさっきの草原!」
「あっ小川! 草原!」
「そうだ! 川とか草とか、あの場所、好きだぞ!」
1回目!