秘密のヴェール
2話分の分量です!
「はぁ」
アタシは盛大にため息をついた。
「ヴェールはおつかい、嫌?」
ネピアが心配そうにアタシへそう言った。今日は宿屋のおばさんの頼みである料理屋へ手紙を届けるおつかいをしている。しかし。
「おつかいはいい……でもクレ姉とエルとセルカがついてきてるぞ……隠れてるけど」
アタシを子供と思って甘く見ているのかバレバレな尾行をしている。このおつかい自体もあやしいものだ。アタシとネピアの社会勉強のつもりか。
「そう」
ネピアは驚く様子もなく淡々と言った。
「ネピア、杖になって」
コクリと頷いてネピアがアタシに杖を差し出す。それを受け取るとネピアが消えた。あたしにはこの杖は長いけど持って移動するだけなら。
『どうするの?』
「撒くぞ」
アタシはその場から走り去った。
しばらく裏路地を走ったり、通りを走ったりした。すでにみんなの姿は無い。うまく撒いたようだ。
「甘く見てるからこうなるんだぞ」
アタシは少し誇らしい気持ちで言った。実力者三人を撒いたんだ。その分野においてはアタシが一番なんだ。
『撒いた?』
「ついてきてないぞ、一応もう少し動き回るぞ、ネピアはそのままで」
『うん』
アタシは歩き出す。ネピアと二人になるのは初めてかもしれない。どおりであまり会話が弾まない。
「そういえば……前に話してた……魔法が使えなくてもネピアが補助してくれるのか?」
『うん』
「どういう魔法があるんだ?」
『エルが使える物は一応』
少しアタシはウキウキしてきた。この機会に使ってみたい。
「ネピア? あの……」
その時、裏路地の方からくぐもった女性の悲鳴のようなものが聞こえた。
「何か聞こえたぞ」
『聞こえた』
「ちょっと行こう」
アタシは声が聞こえた方に向かっていく。辿り着いた場所には男三人が女の人を囲んでいる現場だった。男の一人が女の人の口を押さえている。
「なっ……助けないと」
『ちょうどいい的』
「的は言いすぎだぞ」
アタシは苦笑してそう言うとさっそく助けに行こうとする。
『待って……杖が使いにくいでしょう』
「そんなことないぞ」
『いえ、使いにくいはず』
よくわからない押しに戸惑いつつ、アタシは「まぁちょっと」と答える。
『じゃあ、杖を高く突き上げて変身と言って』
「えぇ? まぁいいけど」
アタシは杖を突き上げて「変身」と言った。すると杖が光だしアタシの体を包み込む。
『ただいまヴェールが変身中、解説はネピアがする、エルの記憶にあった魔法少女を参考にしている、ついでにヴェールと偶然名前が同じベールからウェディングドレスをベースにした衣装にした、顔にはベールがかかってて誰だかわからないようになっている、変身終わり』
「なんだこれ!」
アタシは自分の格好に驚く。フリフリふわふわだった。右手を見ると杖が指揮棒ぐらいのサイズの可愛らしい感じの杖に変わっていた。
『さぁ早く行く』
「まぁいいや……早くしないと」
『登場の時はこう言って……』
アタシはとりあえずネピアの言う通りにする。男たちに「やめろ!」と言いながら姿を見せる。
「女の子の秘密はアンタ達なんかにめくらせない! このシークレットヴェールが守ってみせる!」
言われた通りの言葉とポーズをやった。これにどんな意味があるんだ。男たちは戸惑っている。
『さぁ魔法を』
「よし、サンダーア……」
『それはいけない』
「あっ……え?」
『可愛い名前に変更……サンダーアローはビリビリ! で』
「じゃあ……ビリビリ!」
杖を女の人の口を押さえている男に向けてそう叫ぶとサンダーアロー……ビリビリが男に直撃して吹っ飛ぶ。
「何すんだてめぇ!」
「アンタ達こそ女の人相手に複数で恥ずかしくないのか!」
「うるせぇ! やるぞ!」
残りの二人の男は頷き合って、こちらに向かってくる。
「遅い」
アタシはジャンプして側面の壁を蹴って男達を飛び越える。そして女の人のそばに降り立った。
「大丈夫?」
「……はい、シークレットヴェール様」
女の人は顔を赤くして惚けたようにアタシを見つめていた。
「ちょっと待ってて、すぐ終わらせるから」
アタシは女の人へ不安にさせないよう、優しくそう言うと男達にビリビリを撃って吹っ飛ばす。
「もう大丈夫」
「はい……シークレットヴェール様」
「もうこんなとこ一人で歩いちゃいけないぞ」
「……はい!」
アタシは女の人の返事に頷くとその場を走り去った。
しばらく走ってもとの姿に戻ると大きい通りにさり気なく戻った。ネピアも姿を現し、自分で杖を持って歩く。
「なんか……気持ちよかったぞ!」
「そう……それは良かった」
「またアレやりたいぞ」
ネピアが珍しく微笑むと小さく頷く。
「まずはおつかい……戻る」
「そうだな! シークレットヴェールはお使いをサボらない」
アタシはニカッと笑ってネピアに言った。




