31話!
昼を少し過ぎた時間だったため、軽い食事を途中で手に入れ、食べながらギルドに向かった。ギルドの前でゴーディルは仲間たちを外に待たせて、僕たちと一緒にギルドに入る。待ち構えて居たかのようにアイマが出迎えてくれて、ヨルセダの執務室へ通される。
「ヨルセダの手のひらの上だったのかねぇ」
ゴーディルが少し面白くなさそうな表情でそう呟いた。
「なんじゃ? ゴーディル」
「なんでもありませんよ、ヨルセダ様」
芝居がかった恭しいお辞儀をしてゴーディルがそう言う。クレブリアがゴーディルの頭を、はたいてそのまま何事もなかったように話を始める。
「とりあえず、巨大カミツキウサギは討伐したわ」
「ほぉう、よかったのじゃ」
嬉しそうに表情を明るくしたヨルセダを見て、クレブリアは少し顔を横に振る。
「次の問題が発生したわ、巨大カミツキウサギは倒されたらサイズがもとに戻ったのよ」
「もとに? つまり自然の神秘やら成長というのはあり得ないという事かの?」
「えぇ、誰かの悪意がもしかしたら潜んでいるかも」
悪意という言葉に部屋の中がピリリとした気がした。ただの魔法の実験であってほしいと僕は思う。
「何とも言えないのが辛いですね、証拠がないですから」
「えぇ、誰かがカミツキウサギを巨大化させた可能性は高いけど、悪意なのか、偶然なのか、どこの誰なのか、情報が無さすぎるのよ」
それを聞いたヨルセダが険しい顔で腕を組んだ。
「対策が取り辛いのぉ……とりあえず、街の者へすぐに避難できるよう、呼びかけておくかの、あとは……騎士団の方に街の巡回を多くするように頼むか」
思案顔でヨルセダが言うとクレブリアが口を開く。
「というかいつも思うけどヨルセダって大丈夫なのかしら?」
「なんじゃ? 大丈夫って」
「街の事、思ってだとは思うけどギルド支部長としての仕事を超えてる気がするわ」
「あぁ、はは」
苦笑いをするヨルセダにクレブリアが言う。
「上から睨まれたりしないのかしら?」
「まぁ、私の身より街の事じゃよ」
そう言ったヨルセダを見て、僕は街がヨルセダのおかげでこんなに発展しているという話に納得する。そこら辺の領主よりよっぽどヨルセダの方がすごいのでは。
「自分勝手な偉い人に何かされたらどうするんですか、ヨルセダさんは自分の身も案じてください、私たちセレンに住む人間はヨルセダさんを慕ってるんですよ」
少し怒った様にセルカが言った。
1回目!