29話!
「おう、ずるいねぇ、先にはじめちまうなんて」
声がした方を向くとゴーディルがくつくつと笑いながらやって来ていた。
「クレブリアは下がってなぁ、あぶねぇぜ」
「……そうね」
クレブリアは僕たちより後ろに下がっていく。そのそばにヴェールもついている。
「クレ姉は私が守るぞ」
自信満々にヴェールが言った。これでもしもの時もクレブリアは安全だ。
「魔法陣展開、サモンズスペル《アンデット・スケルトンナイト》」
スケルトンナイトソードを構えたゴーディルがニヤリと笑う。
「二人ともうまくやつの動きを止めてくれるかい」
「え?」
呟かれたゴーディルの言葉の真意を聞けず、巨大カミツキウサギが襲いかかってくる。とにかく動きを止めよう。ゴーディルに考えがあるらしい。セルカに目配せし合うと、僕たちは巨大カミツキウサギに接近する。
「逃げられました!」
「動きを止めるって難しい」
近づいた僕たちから飛び跳ねて距離を取った巨大カミツキウサギは走って突進してきた。僕はそれを避ける。僕に避けられた巨大カミツキウサギは今度はそのままセルカに突進した。
「こっちきたです」
セルカはオーラを杖にのせて横薙ぎする。それに反応して巨大カミツキウサギが大きく飛び上がった。僕はすぐさま着地点に向かって、サンダーアローを撃ち出す。着地の方が早く巨大カミツキウサギが動き出して後ろ脚にサンダーアローが当たっただけだった。巨大カミツキウサギは怒って僕の方に突進してきて、口を大きく開けた。カミツキ攻撃。攻撃力は高いだろうけど体当たりより少し速度が落ちる。僕は避けようとした。その時。
「エルさん! 受けてください!」
セルカの言葉にハッとして、すぐに体勢を戻し、シールドをはった。巨大カミツキウサギの牙がシールドにぶつかる。僕はそのまま踏ん張って、その場に押し留めた。
「よくやったぜぇ、エル!」
ゴーディルのその言葉とともに巨大カミツキウサギの足元からスケルトンが数体、現れてまとわりつくように動きを止めた。これが狙いだったようだ。
「さぁってこっからは早いもん勝ちだぜぇ」
ゴーディルがそう言うとスケルトンナイトソードに黒いドロッとした魔力がまとわりついて膨れ上がった。それを見た周りのゴーディルの仲間たちが巻き沿いを受けない様に走って行く。このままだと僕も巻き込まれる。早い者勝ちに参加している場合じゃなかった。僕は走り出す。
「ハハッ、巻き込まれるなよ!」
1回目!