25話!
「ヨルセダだってクレブリアに向かっていつも話をするじゃん?」
自分で言ってて僕は悲しくなる。けど自分にはリーダーの素質はないと思う。残念ながら。
「さぁ出発の号令を」
「じゃあ……出発!」
戸惑いながらクレブリアは右手を天高く突き上げて号令を発した。全員がぞろぞろと歩き始める。
「まだ森の中にいるといいが」
心配そうにゴーディルが呟く。一晩あったから、移動している可能性はあり得る。どれくらいかわからないけどゴーディル達の前にも誰かに追い回されているだろうし。そろそろ嫌になって移動しているとか。
「野生のモンスターの動きはさすがに推測できないわね」
「祈るしかないんだね」
「そうね……周辺の村を襲撃していないといいけど」
そういう可能性もあるのかと僕はハッとする。普通のカミツキウサギでも一般の人には危険なのに巨大なカミツキウサギなんて、かなり危険だ。
「これ以上放っておいたら周辺の村は確実にやばいわ、巨大化したら食べる量も増える、森の食料だけでは足らなくなるタイミングが訪れるわ、実際、村の農作物が被害に遭ってる訳だし」
こういう形でも討伐を急いだのはそういう理由があってなんだ。
「いそがなくちゃならないねぇ」
真面目そうにそう呟いたゴーディルの足が心なしか早足になった気がした。
「じゃあ、いそいで討伐するために一つ頼まれてくれないかしら」
「なんだい?」
「森を囲むように仲間を配置してほしいのよ」
「囲むように?」
「囲んで進んでいくのよ、囲んだ円を少しづつ小さくしていくの」
そうやって行けば逃がしてしまう確率はグッと減る。
「……囲んで進むだけかい?」
「いえ進む時は前と左右を確認するの、人と人の間をすり抜けられない様に」
ゴーディルもちゃんとイメージできたようで「わかったぜ」と仲間たちを集める声をかける。話がまとまったのかゴーディルを含めたみんなが「姐さん行ってくるぜ」と息巻いて走っていった。
「姐さん?」
「気にしない」
僕が疑問を投げかけるとクレブリアは無感情な表情でそう言った。冷たい空気を感じて僕はそれ以上言うのをやめる。
「でもヴェールが見つけたら、みんなが囲む意味無くなっちゃわない?」
「大丈夫よ、見つけてすぐに討伐できるとは思えないから、逃げられるの前提よ」
「そっか、逃げたら人の壁に阻まれる訳だね」
「そういう事よ、さぁ私たちも急ぐわよ」
1回目!