21話!
「強い個体が一匹現れただけで状況がかなり変わるわ……その一匹が次の一匹を守り育てる、そして二匹になったら、また守り育てる、巨大カミツキウサギが四匹くらいになったら、もう容易に勝てなくなるわね」
「その一匹が討伐できなかったらそうなる可能性があるの?」
「もし巨大化が成長パターンだったらよ? セレン近辺の状況が一変するわ」
クレブリアの言葉に沈黙が広がる。その沈黙を破るようにゴーディルが明るい声で言った。
「クレブリアを連れてきてよかったろ」
「あぁ、そうじゃな」
ヨルセダの言葉を受けて、ゴーディルがクレブリアにウィンクをする。
「とっ、とにかく……巨大カミツキウサギを討伐するのが先決よ」
少し赤くなりながらクレブリアが早口で言った。
「そうじゃな、ゴーディル、巨大カミツキウサギはどれくらい強いのじゃ? 何人必要じゃ?」
「討伐なら俺の隊だけでいいぜぇ」
「ゴーディルは討伐に参加禁止じゃ」
「なっ、どういう事だい?」
ヨルセダが渋い顔をして、ため息をつく。
「……ギルドの役割を超えてしまうじゃろ、ギルド職員が討伐してしまっては」
「……しょうがねぇな」
ゴーディルは明らかに納得していない表情でそう言って、執務室を出て行ってしまった。
「この件はまだ依頼がないのじゃ、依頼を作る所から始めねばならんのじゃ、時間がかかる、そのうちに誰かが倒してしまうかもしれないのぉ」
いろいろしがらみがあるのだろうか。わからないでもないけど。ギルドは自衛組織ではないから。依頼をヨルセダがでっちあげるまで待つしかないらしい。
「誰かが倒してしまうかもしれないわね」
クスリと笑ったクレブリアが「行きましょ」とみんなを促して外に出て行こうとする。そこにヨルセダが思い出したように言う。
「ゴーディル達はしばらく任務はなかったはずじゃ……働きづめじゃったし遊びにでも誘ってやるといいのじゃ」
「そう……ありがとう、もう行くわね」
そうして僕たちは執務室を出る。
「え? どういう?」
「もしかしてですけど、私たちで討伐ですか?」
「まぁそうなるわね」
「えぇ?! そうなの?」
つまり僕たちがボランティアで討伐するという事だ。あまり放っておく訳にいかないし、それしかないのかもしれない。僕たちは急いでゴーディル達を追いかけ、捕まえる。
「ゴーディル!」
「ん? どうしたんだい?」
「協力して私たちで巨大カミツキウサギを討伐するわよ」
1回目!